「おっちゃん!もう一杯酒くれ!」
酒場でジョッキをカウンターに叩きつけているのは第1部隊隊員のフィル。種族はオーガ。
「相変わらずよく飲むなあ、お前さんは……」
呆れながらもジョッキに酒を注ぐのはこの店のマスター。
「いいじゃねえか。久々にこの町に戻ってきたんだ!思いっきり飲みてーんだよ!」
「べつにかまわねーがなあ……あんまり飲みすぎると仕事に差し支えるんじゃねえのかい?」
「だーい丈夫だって!……っはー!うまいっ!」
グビグビと酒を飲みほし、気持ちよさそうな声を上げる。その様子を見て、マスターは困ったような声で続ける。
「お前さんが飲むこと自体はどうだっていいんだがな、仕事に支障が出るとお前のところの隊長に注意されちまうんだよ。」
「だから大丈夫だって!明日は休み!こーゆーときに飲まないでいつ呑めというのか!だいたい隊長はまじめすぎンだ!」
カウンターをバンバン叩きながらフィルは不満を漏らす。
「久々に帰ってきて、明日は休み!目の前にはうまい酒!これが飲まずにいられるかってんだ!」
「休みねぇ……。そういや、ほか艦隊員さんたちはどうしたんだ?」
「マールはお見合いだとさ。アネットの姉さんに準備してもらったんだと。セラは、何やってんだろうな……?隊長は隊長で、向こうで見っけた子関連でいろいろ忙しいみたいでなあ」
「おっと、あの堅物さんにも夢中になれる相手が見つかったか?」
「いんや、どっちかっつーと……弟?」
「なんだそりゃ」
第一部隊隊員マール。
ややおっさん臭い性格だが、それがよかったのか男性隊員との仲が非常に良い。
不真面目なところもあるものの、人望が非常に厚い。
二人がそんなたわいもない話をしている頃。
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「は、はじめまして。今日は宜しく」
「いえいえ、こちらこそ。第一部隊隊員のマールです」
お見合い真っ最中のマール。種族はアマゾネス。
第一部隊の隊員であり、冷静沈着、文武両道、オリビアが頼りにすることも多く、第一部隊で一番の常識人とさえ言われている。
しかし、彼女にはある欠点があった。
「ところで、マールさん。特技がお料理と聞いたんですが……」
「ええ、大の得意です。なんならお見せしましょう」
「え?いいんですか?」
「ぜひ見ていただきたいので……」
にこやかに料理の準備を進めるマール。
「何を作るのですか?」
「そうですね、今日は野菜スープでも作ろうかと思っ」
和気あいあいとした雰囲気から一変。
マールは包丁を握った途端にぴたりと口を閉じてしまった。
「野菜スープですか?おいしいですよね。いやあ、楽しみだなあ!」
「……」
「それにすごいなあ、仕事もできて、料理もできるなんて!」
「……」
「あの、マールさん?」
「……クヒッ」
「!?」
にこやか、というよりも邪悪な笑みを浮かべながら、マールは包丁を振り上げる。
ひきつったような不気味な笑い声をあげながら体をカタカタと震わせていた。
「クヒヒッ……ククククク……まず、食材を、まな板の、まな板の上に獲物を置いてええ……」
「ちょ、ちょっと、マールさ……」
「ぶった切る!たたっ斬る!切り刻んで!バラバラに!バラバラにする!!」
「ひええ……」
野菜を刻み終わると、先ほどと同じように黙り込んだ。
「……次に、フライパンに油を引いて、温めます。」
「あ、はい。(さっきのは……気のせいかな)」
「次に、ベーコンを……ベー、コンを」
「べ、ベーコンを……?」
「野菜と同じようにィィィィ、細かく!細かく!!細かく!!!肉をバラバラに!バラバラに!!バラバラにぃぃぃぃ!!!」
「う、うわああああ!バラ肉、じゃなくてベーコンが!!」
「……します。あ、ちなみにバラ肉のバラはアバラのバラなんですよ」
ベーコンを切り刻み終えると、再びいつもの静かな口調に戻った。
しかし、相手は完全におびえて萎縮してしまっていた。
「あ、そ、そう、なんですか……」
「あと、ついでにサラダでも作りましょう。」
「サ、サラダ……」
「野菜を……」
「野菜を……!?」
「バラバラにぶった斬るゥゥゥゥーーーーーッ!ウシャアアッハァァァァァー!!」
「ぎゃああああああーーーー!!」
「……ふぅ、さあ、できましたよ。……あれっ?」
マールが料理を終えた頃には、目の前にいたはずの男性はきれいさっぱり居なくなっていた。
第一部隊隊員マール。
普段は冷静沈着、非常に優秀な隊員であるが、刃物を持つと性格が豹変することで有名である。
その性格のせいか、非常に美人であるものの、
いまだに良い相手が見つからない。
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