アホ魔女大地に立つ!

「う〜〜トイレトイレ」

今トイレを求めて全力疾走している僕は、高校に通うごく一般的な男の子。
強いて違うところを上げるとすれば、眼鏡の知的な年上美女に興味があるってとこかナー。
名前は道下正行。

そんなわけで、帰り道にある公園のトイレにやってきたのだ。
ふと見ると、ベンチに一人の幼女が座っていた。

「なんだ……幼女か」

そう舌打ちをすると、突然その幼女は僕の見ている前で怪しい杖を構え始めたのだ!

「やらないか」「ごめん、小便漏れそうだから他の人に遊んでもらいなさい」

昨今はうっかり挨拶をするだけでロリコンやら犯罪者予備軍の汚名が着せられるという厳しいご時世なのだ。
幼女よ、遊びたいなら大人しく同級生とポ○モンでもやってなさい。

トイレから出てくると、やっぱり幼女はそこに立っていた。
かわいそうに、よっぽど友達に恵まれていないと見える。
しかし、期待に満ちた幼女の眼を華麗にスルーして家路に急ぐ俺。
追いかける幼女。
変な疑いを掛けられてはたまらんと走って逃げる俺。
派手に転倒する幼女。
しかし、これは罠である。うっかり大丈夫かなんて駆け寄ろうものなら、泣いている幼女と彼女いない歴=年齢の男の組み合わせで、警察官が特殊召喚される。
世知辛い世の中だ。

「なあ、なんか顔からこけたみたいだけど大丈夫か?」

そこで逃げ切れずにほいほい声を掛けてしまう自分が悲しい。
人には親切にしなさいと教えてくれた初恋の幼稚園の先生、今は悲しい時代ですね。
想えばあのころから自分は年上好きだったなあと感慨にふけりながら、幼女を抱え起こす。

「うう……死ぬほど痛いけど大丈夫です……」「そうか、良かったな。もう二度と会うこともないだろうが元気でな!」

触らぬ幼女に前科なし。さっさとその場から立ち去ろうとする俺にがっちりと抱きつく細っこい腕。
恐る恐る振り返ると、幼女が鼻血を流しながらしがみついていた。

「つかぬことをお聞きしますが!」「さっさと離してくれるならなんでもいい!答える!何だ!」

「本郷猛さんのお宅はどこでしょうか!判らないなら行きつけの喫茶店でもいいのですが!」

へえ〜仮面ライダー一号と同姓同名さんっていたんだなあ。親がファンだったんだろうか。
いくら好きでも子供にキャラクターの名前つけちゃだめだよね。
ほら、作文で自分の名前の意味とか描かされたりするじゃん。それを授業参観で読みあげられたりさせられてね。恥ずかしいのは子供だと思うんだよな。

「一文字隼人さんでもいいんですけど!御存じありませんか!?」

わあ、技の二号まで同姓同名さんがぐうぜーん
「って!んなわけあるかああっ!御嬢ちゃん!渋いチョイスは認めるが、現実と空想の区別はつけなさい!大人になった時に黒歴史になるから!」

「あ!大丈夫です。私、魔王軍第二十八師団所属研究部隊のヘンルーダと申す者でして。決してショッカーと内通するような悪人ではございません。」
というわけで。とヘンルーダと名乗った幼女は咳払いをした。

「私にはこっそり教えてくれてもいいんですよ?」

色仕掛けのつもりか、体をすりよせてつつつと指で胸板をなぞって上目づかいにウィンク。
余りに流暢な日本語に気付いてなかったが、この子はどう見ても外国人だ。
そうかそうか、オタクな外国人の親に変な英才教育を受けて育ってしまった悲しい少女なわけだな。

「二人とも今はチベットの奥地で戦っているから、日本には帰って来ないんだよ。残念だったね。」

それらしいことを言っておけばごまかせるだろ。
そう思って少女の目線に合わせてかがみこんだ俺の頬を、湿った生温かい物が這った。

「この味は嘘をついている味ですね!」

ズッギャアアアンとポーズを決めながら俺をにらむ幼女。
え?いま、幼女に頬舐められたの?俺の頬は黒いガーターストッキングが似合う年上のお姉さんに「もう、イケナイ子ね」ってキスされるためにとってあったのに!
「悪いですが、無理やり聞きださせてもらいます!咎人を縛り上げたまえ!鍛冶神ヘパイトスの鎖!」
「お、おおおお?!」
鎖と言うにはなんかいびつな赤い光が蛇のように俺の腕に巻きつく。
え?何これ最新防犯グッズ?
NASAの技術で出来てたりするの?NASAすげえ。

「というわけで、お兄さんの家に勝手に上がり込ませてもらいますよ!」
「なにそれこわい」

ふんっ。と鼻を鳴らした幼女はなんだかところどころボロボロな鎖でぐるぐる巻きの俺を引きずって歩きだした。
なんかちょっと頑張れば俺でも鎖が砕けそうな気がする。
そう思ってためしに思いっきり力を入れてみたが無駄だった。草食系男子のか弱さ舐めんな。
解放されることは諦めて、俺は道案内に徹することにした。
だって相手はNASAの防犯グッズだし。NASAすげえ
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