「ふむ、今日必要な資材はこんなものだな」
きまじめそうに腕組みをする褐色の肌の美女は、罠一つ当たりに消費する資材の料を計算したパピルスと買い物を見比べて頷く。
砂漠を横断するため、きらびやかな衣装の上にゆったりした外套を纏っているものの、さらさらとした黒髪から突き出す真っ黒な耳が彼女がアヌビスということを雄弁に語っていた。
「パトラ、お前も荷物を持つのを手伝え」
がしりと爪の生えた腕で頭を掴まれたスフィンクスが盛大に嘆く。
「にゃあ、ケセルはともかく私のか弱い細腕には重すぎるにゃ」
「いつ他人と接触するかわからない街中に下働きのマミーは連れてこれない。文句を言うな」
ため息をつきつつ二人で荷物を分担、もちろん壊れやすいもの、高価なものはケセルの担当だ。気まぐれで飽き性の猫娘には割れもの厳禁である。
「ケセル!ケセル!新しい洋服屋さんがあるにゃ!見に行くにゃ!」
叱りつけようと振り向くと、既に荷物を詰めた麻袋だけが地面に鎮座していた。言わんこっちゃない。
ビッキィィとケセルの額に青筋が走る。
しかし、あくまであの猫の逃亡および捕獲は計算の範囲内だ、問題ない。気を取り直した彼女は大股にパトラが逃げ込んだであろう真新しい店に足を運んだ。
「やあ、いらっしゃい。服の見立てかな?」
「いや、連れをほかk…呼び戻しに来ただけだが…」
少し警戒をした様子でケセルは相手を観察する。
「変わった格好に変わった気配だな?失礼ながら、店員どのは魔物か?」
匂いは魔物のようだがその雰囲気は人間に近い店員は、ベルトや見かけない金具が多用された衣装を着こなし穏やかに微笑んでいる。
「ボクはれっきとした魔物。名前はロアイカ。種族はダンピールだよ。ここはちょっと変わった服を扱っていてね。旅の路銀を稼ぐついでにマネキン兼雇われ店長をしているんだ。」
例えばボクの服は『ごすぱんく』寄りの『ぱんくろっく』で、こっちは『もりがーる』だよ。と何やら古代呪文のような名称を唱えて、自称雇われ店長は次々に衣装を披露して見せた。
「残念ながら、衣装に関しては自前で十分間に合っているし、その服は機能的には見えない」
「じゃあ、こっちはどうかな『いけないおんなきょうし』にインスパイアされた一品で教育や管理職の知的労働が得意な魔物にお勧めってオーナー談」
「管理職…」
確かに遺跡やマミーを管理している自分は管理職の知的労働者ではないだろうか。
自分にあつらえたような商品だと考えてケセルは少し興味を示した。
色よい反応に得たりとばかりロアイカが衣装を渡す。
「確かにこのスカートの両脇のスリットは足の付け根まで入っていて動きやすいな。白いシャツも胸元が大きく開いているうえ透けて涼しげだ」
「オプションとして、この黒いレースの下着一式と教鞭、眼鏡とハイヒールもお勧めだよ」
試着室に入るとロアイカに手伝ってもらいながら、魔術で脚を人間風に変えて着用してみる。
「悪くはないな…」
白いシャツは褐色の肌を程良く透かせて強調し、黒いレースの胸あて(背中で止めるのに苦労したため、前で留めるものを選んでもらった)が胸元をさらに意識させる。
靴の類は始めて履いたが背が高く見えて威厳が出るのは確かに管理職に相応しいだろう、細い銀縁の眼鏡もアクセサリーとして知的さを強調している。
薄い靴下はずり落ちないかと思ったが、腰に装着するレースのベルトから細いリボンで吊り下げているので動く邪魔にはならないだろう。
「ただ、この靴下は薄すぎやしないか?」
「なんだかよくわからないけど、夫にビリビリに破ってもらうために薄いらしいよ。以前左右一体型の「ぱんてぃすとっきんぐ」を購入したワイトのお客さんは、旦那さんが破くのに興奮するからって毎日10組はお買い上げしてくれてる」
「使い捨てなのか」
「どうだろうね?着たままつま先をしゃぶらせる方が喜ぶってお客さんもいたけど」
とりあえず件のワイト夫妻は上得意のようである。
そして後者はダークエルフ夫妻だろう。なんとなくそう確信が持てた。
「下穿きは、色は黒にするとしてこの紐みたいなタイプと小窓付きのタイプが売れ筋かな」
小窓と聞いて一瞬首をひねったが、ロアイカの白く細い指が飾りのリボンを引き、股間に当たる部分にもぐりこんだことで納得した。
「実に機能的な下着だな」
これは購入を検討しても良いかもしれない。売れ筋というのも納得である。
「もちろん後ろ部分には尻尾が通りやすいようにハート型に穴を空けているよ」
尻尾がある種族でもオークのお客さんはこっちのT型の下着を選ぶ人が多いけど、お客さんの尻尾だとお勧めしないな。とアドバイスも忘れない。
良い店長である。
「細い尻尾とはいえ穴がある方が便利ではないか?」
「うーん、オークのお客って肉
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