「まあなんつーかさ、俺は独身貴族でいたいって感じなんだよ」
女でしかも妖狐の私に言うことなのかな、それは。
(……そう思うけど、私は渚(なぎさ)の言葉にただ頭についた両耳を傾ける)
「お前だって嫌だろ? 元から悪友って感じで中学校から付き合ってきてさぁー、今さら恋人なんて」
まあ、そうだけどね。
渚とは中学校の頃からの付き合いだけど、一度も好きとか思ったことないし。
「それに俺なんかよりもっといい男がいるって。顔は……どう?」
普通じゃない?
間違いなく不細工ってことはないと思うけど。
「まあだけど格好いいって訳じゃねーし。運動不足で勉強も中の下だしなー」
それ私もねー。
「あー、空が青いぜ。んー、次の授業なんだっけか」
次の授業……英語だったような気がする、単位大丈夫なの?
「モーマンタイ。お前は?」
渚と違って単位は余裕だから。
「こいつめ……」
授業サボるからいけないんでしょ。
(数年後)
「どーよ神社は?」
稲荷の子ばっかりだけど、逆にやりやすいかな。
「そいつぁよかった」
私の心配はいいけど、渚はどうなの?
「俺か? まー、みんな寿退社で市役所三年続けられてんの俺だけだわ! 笑えるだろ」
……笑うとこなの、そこ?
「ここで笑わないと先で笑えないぜお前〜……」
あはは、それもそっか。
渚、本当に中学から変わんなくて安心する。
「お前も綺麗になったこと以外変わんね……」
…………。
「…………っあ! 俺、用事思い出しから帰るわ!」
え!?
あ、ああ、うん!
それじゃあね!
「おう!」
(また数年後)
「とまあ、なんつーか、こいつとは中学校の頃からの付き合いで。つってもこいつね、妖狐の癖に奥手で俺に手を出せずイテッ」
余計なこと言わないで……恥ずかしい。
「横腹殴るなよな……。っと。それでですねー、まあ今じゃ毎日セックスセックスイテッ。すいません」
(結婚式場にどっと笑いが起こる。呆れて私はとりあえず出されたお刺身と油揚げを食べる、おいしい)
「とまあ、一本の尾が五本にもなって。俺らにゃもうこれしかないっていうか、結婚しました! あ、まだ子供はできてないんですよねー、毎日セックスしてるし、こいつも俺の仕事考えず自分からイテッ!!」
余計なこと言わないでって言ったでしょ!?
「あんだとお前!?」
(立ち上がったもののここで友達に「よっ!鴛鴦夫婦!」とか言われたので、私と渚は座る)
「鴛鴦夫婦? こいつ狐ですよー? はいはい、大喜利はこんぐらいにして。んで、これから皆さんには……両親らにも迷惑かけるかもしれませんが、結婚する俺ら夫婦を宜しくお願い致します」
宜しくお願い致します。
(雷みたいに拍手が響いて、私と渚は座って、その後は料理を食べながら私の両親が編集したらしい幼少期の頃からのスライドショーを見ていたんだけど、渚が突然肩を叩いてきた……と、振り向いたら指がほっぺに)
「引っ掛かってやんの」
何小学生みたいなことやってんの……。
「いいじゃねーか別に。あー、ところでさ」
ん?
「本当に俺なんかでよかったのかよ? いや、五尾にしといて今更なんだけど」
逆、逆だって。
私ぐらいしか渚の貰い手いなかったでしょ?
「うるせーな。……いや、事実かこんちくしょー……」
まあ、私の貰い手も渚くらいしかいなかったし。
お互い身の丈に合ってるでしょ?
「……だな。あ、あれ俺とお前の初デートん時のじゃん」
……あああ!!?
ちょ、ちょー!
「髪ボサボサだったなー、たはは」
笑ってないで止めに行くから手伝うのー!
早く!
「はいはい」
(急いでスライドショーを止める。でも、その前に)
渚。
「あん?」
――私と、結婚してくれてありがとう。
「いや、俺こそだっての」
……えへへ。
私と、渚。
これから先はよくわからない。
けど、明るい未来があることを信じて。
〜おしまい〜
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