魔王様が本気で世界を救うようです

 西暦2012年某日某所にて──

「この場にお集まりの諸君、既に連絡は届いていると思うが改めて説明させてもらおう」
 重苦しい口調で一人の青年が壇上で口を開いた。
「3月14日・・・ホワイトデーが近づいているのは誰もが知っている事だ。
 そしてそれにあわせて不穏な動きが国内で目立ち始めている」
 青年は背後のスクリーンを指差した。

「全国各地で非リア充によるカップル襲撃、および種族を問わない無差別テロ・・・
 人間として嘆かわしい振る舞いが罪の無い者達に被害をもたらしている。
 本来ならばこのような輩は断罪されて当然なのだ。
 だが今回君達を召集したのはもっと罪の重い輩を始末するためだ」
 青年は辺りを見渡した。

 辺りには真剣な表情のまま立ち尽くす女性・・・否、魔物娘達が勢ぞろいしていた。
それもスライムのような下っ端からリリムに至る大物までが青年の顔を見据えて。

「きたるホワイトデーにおいてリア充に対する無差別攻撃の予告が
 先日ネット上で公開された。発信元は『RDA』(リア充撲滅連合)総本部からだ。
 おそらく新たに生まれるカップル達に強襲を仕掛けるつもりなのだろう」
 魔物娘達の間に動揺が広がった。
 しかし青年が再び口を開くとすぐに意識を青年へと向けなおした。

「今回君達にやってもらうのは『全国のカップル達の護衛』
 及び『RDAによる恋愛妨害工作の阻止』だ。
 無用な被害を出す事は許されない。総力を挙げて挑んでもらう」
 スクリーンの映像が変わり、文字の羅列が映し出された。

「本作戦において我らからは勇者部隊及び魔術部隊を
 総動員して対処に当たることを決定した。
 残る騎士団は全国の治安維持に努めるが、教団との対立ゆえ
 ジパング地方への派兵はできない。
 そのため君達はジパングの妖怪を中心に本作戦を遂行してもらう事になった」
 再びスクリーンの映像が切り替わった。

「本作戦を遂行するに当たってジパングからは航空自衛隊及びSAT(の支援を、
 刑部狸の同盟からは資金を、クノイチ達からは現地の案内や援護の協力を取り付けている。
 作戦執行中に限りあらゆる支援を無償で行うそうだ」
 どよめきが魔物娘達の間で起こった。無理も無い。
ここまで大規模な作戦は史上初だからだ。

「阻止の手段は現場の諸君に任せる。捕まえた人間と結婚するもよし。
 連れ去って手土産にするもよし。好きにしてくれたまえ」
 魔物娘達の歓喜の声が響き渡った。

「説明は以上だ。くれぐれも気をつけてくれたまえ」
 青年・・・魔王の夫はこう言葉を締めくくったのであった。









 3月14日午前0時0分東京都某所──


「死ね、死ね、リア充どもなぞ死んじまえ〜! ビッチな魔物をやっつけろ〜!」
「寝取られ心を汚してしまえ!! 死ね、死ね、死ね死ね〜!!」
「リア充どもなぞ目障りだ!!」
「サバトとイケメンぶっ潰せ!! 死ね死ね死ね!!」
「世界の地図から消しちまえ!! 死ね!」

 どこから集まってきたのやら、リア充撲滅連合の組員が大声で叫びながら
町の中を行進していた。ヒステリックに暴れまわり無差別にカップルを
襲撃してホワイトデーの雰囲気をぶち壊して歩み続ける彼らに
気配を消して忍び寄る影が多数。戦いの火蓋は切って落とされた。

「これより攻撃を開始する。全員散開!!」
 何所からか響く女性の声。同時に周囲の明かりが一斉に輝きを失った。

「なん、なんだぁ?」
 周囲の変化に戸惑い、行進していた男達は行進を止めた。
「誰か明かりは──うわらばッ!」
「どうした──ひでぶっ!」
「あべし!」
 暗闇から次々と響き渡る悲鳴。辺りから甘ったるい匂いが漂い始めた。
この匂いは──

「敵襲だァーーーーーー!! 魔物に待ち伏せされてるぞ!」
 誰かの絶叫が夜の街に響き渡る。
同時にあらゆる方向から足音と雄たけびが沸きあがった。

「ヒャッハーーーー!! レッツパーティーー!!」
「ようこそ愛の巣へ!! たっぷり『歓迎』してやんよ!」
 ノリノリの口調で待ち伏せしていた魔物娘の集団が突撃し、
哀れな童貞たちを(性的な意味で)喰らいつくしに向かった。

「ヒイィッ! どこからくる!?」
「俺の側に近寄るなァーーー!」
 一転して童貞たちの悲鳴が町中に木霊し始めた。
星明りすら見えない都会の空の下では明るさに慣れた目は役に立たず、
空から地上まで婿に飢える性欲の権化達に逃げ道を絶たれた。
一方的な狩りが今始まる。

「さぁ、お楽しみの始まりよぉ〜♪」
 近くの建物から顔を出したサキュバスが集団の真上に何かを放り投げた。
空中でそれは弾け飛び、鉄のような匂いを漂わせながら童貞たちに降り注いだ。

「GAAAAAAAAAAAAAA!!」
 突如
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