現在時刻午前7時30分。調合室で俺は薬の様子を確認していた。昨日やってしまった
配達ミスでシーナさんに渡す予定だった薬が無くなったので現在進行形で
薬の再調合を行っている。
「よぉ〜し、うまい具合に染み渡ったな。これで今晩中には薬が出来上がるな」
漬け込んでおいた薬草の状態が良好であることを確認できたのでようやく休憩できる。
あらかじめ作っておいた緑茶を水差しから注いで一服してから台所へ向かい、朝餉を作る。
あの事件の後どうなったかと言うと、俺達は休憩所で撒き散らした母乳の始末をしてから
ミザリー用に服を買い、2人で所長に警備をサボった事を謝罪しに行ったんだ。
魔物娘達にとって職場での恋愛は当たり前の事だし、サボったところで特に被害が
あったわけじゃなかったのであっさり許されてしまった。
ただ、結婚までしたなら寮を離れて同棲して、寮に新たな魔女が受け入れられるようにしてくれと言われたので、俺の家にミザリーが住むことになった。
元々ミザリーはおしゃれにあまり興味がなかったので化粧品やアクセサリーの類は全く無かったし、服も着られなくなった物を売り払ったら鞄2つで事足りるぐらいの荷物しかなかったので
あっさりと引越しは終わってしまった。
余談だが所長が結婚祝いだから一週間は仕事を休んでいい。との通達を出したので、ミザリーは今も朝寝の真っ最中だ。枕にちょっぴり涎を垂らしながらぐっすり寝ている姿は可愛らしいのでついちょっかいを出したくなるのだが、今まで寝不足だったのだから今日は心行くまで
眠らせておこうと思う。
いつもならば和食にしたいところなのだが、この時間に米を炊いていたら
開店時間に間に合わない。
冷蔵庫を覗いて何かすぐに出来そうなものを考えてみた。
「炒飯と豚肉の生姜焼きに決定だな・・・」
早速下ごしらえをし、料理を始める。ミザリーが起きてきたら何を作ってあげようか
考えている内にどちらもおいしそうに出来上がった。
「ほぉ、朝から肉料理とは豪勢じゃのぉ」
料理を黙々と食べていると背後から声が聞こえた。
振り返ると一人のバフォメットがじっとこちらを見ている。
「エルキリヒ、まだ営業時間前だぞ」
「そんなことは分かっておる。今日はおぬしに頼みたいことがあるからじゃ」
「以前みたいにジパングの料理を作ってくれとか言うんじゃないだろうな?」
「いや、今回は仕事の依頼じゃ。ところでこれを一切れくれんかの?」
そういいながら既に焼いた肉を口に放り込んでいる。
「おい、まだ俺は食っていいとは言ってないぞ」
「たった今言ったからいいんじゃ。それよりもうちょっと醤油を多めに使った方がいいのぉ」
「文句があるなら食べるな。俺の食う分が減る」
「別に一枚くらい構わんじゃろう? それで可愛いわらわの笑顔を見られるのじゃからな」
そういいながらニヤリと笑った。認めたくないが本当に可愛い笑顔をしている
このバフォメットは、信じがたいがこの町の魔術部隊の所長なのだ。
俺のお得意さまでもあり、魔王軍への関わりを作るきっかけを作ってくれた相手なので俺は
こいつには逆らえない。
「笑顔で空腹を満たせたら文句はねぇよ・・・で、仕事の内容は?」
「うむ。ミストポーション、麻酔玉、催淫玉、催眠玉を全部軍用仕様で
2ダースづつ作ってくれんかの?」
「どれも殺傷力の無いものだな・・・生贄の捕獲あたりか?」
「まぁ、そんなところだの。もっとも、捕まえるのは教団の連中じゃ。
最近のあやつらの狼藉は目に余る。
ここらでちぃっとばかり懲らしめてやろうと思ってな」
「あぁ・・・先日砂漠地方支部であった黒ミサ妨害事件のことか?」
「そうじゃ。あやつらのせいで向こうでやってきた今までの布教努力が水の泡になってしもうた。
この償いはきっちりしてもらわねば気が治まらんぞい」
眉間にしわをよせ、吐き捨てるように喋っている。どうやら相当頭にきているようだ。
まぁ無理も無い。砂漠地方では遺跡の宝探しで商人や冒険者はよく集まるが、
一般人はあまり訪れないため魔女達は勧誘に苦労している。
そんな環境で集めた信者候補を怖がらせる結果になったのだ。
今後の活動に悪い影響が出るのは避けられないだろう。
「で、報復をするために道具を作って欲しいという訳か・・・お前らなら魔法で
眠らせたりすることぐらい楽勝なはずだろ? 何故俺にこんなものを頼むんだ?」
「それはそうなんじゃが、我々が襲撃したと気づかせないようにせんと
報復をしに来るかもしれんからの。だから魔法は使わないようにしたいんじゃ」
「なるほど。で、捕まえた奴らはどうするつもりだ?」
「言うまでも無い。我々の魅力を骨の髄までたっっっぷりと叩き込むに決まっておろう」
「やっぱりそうな
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