欲望に身を任せて《グリフォン》

俺の名前はマルーン・カラージェイ
カラージェイ家という代々冒険者の家系に生まれた男だ。俺には何人もの兄弟がいるが俺は十七男だ。ちなみに歳は20。

冒険者の家系に生まれた俺だが職業はトレジャーハンター!
まあ冒険者と何が違うんだって話だがそこは気分の問題。冒険者は色んな場所へ冒険に行く者だがトレジャーハンターは色んな場所にお宝を探しに行く者なのだ。
俺の夢は今まで誰も見た事がないようなスンバラシイお宝を見つける事。金銀財宝ざっくざく!お宝ちゃんが俺を呼んでいるのだ。

……とはいえそう俺が納得出来るようなお宝は現在まだ見つかっていない。
金、銀、クリスタル。
ルビー、サファイア、エメラルド。
ダイヤモンド、パール、プラチナ。
ハートゴールドソウルシルb……
…………………とにかく、俺は今まで冒険で色んな宝石を手にいれてきた。だがどれもこれも俺の宝欲を完全に満たす事は出来ていないのである。
いつか俺にふさわしい完璧なお宝ちゃんに会える日は来るのだろうか?
そもそもお宝の情報を手に入れる事だって難しいんだ。
ここ三ヶ月ほど、お宝の情報を求めてあちこち出回っているのだが、有益な情報は中々見つからない。

そんなある日、俺が酒場に行った時の事だった。

「おーう。おめえ、あのカラージェイ家の人間か〜?」

酒を飲んでいると見知らぬ酔っ払いの男に絡まれてしまった。
カラージェイ家は一応そこそこ有名な家系なので俺みたいに他人に顔を知られている兄弟もいたりする。
酔っ払い男は片手に酒を持ったまま俺の隣にどかっと座った。

「確かおめえは……マルーン・カラージェイだな。トレジャーハンターの!」

俺は「ああ」とだけ言って注文した料理が来るのを待つ。
……酔っ払いの相手とか勘弁してくれよ……めんどくさい……と、思っていた俺だったがここで予想外の情報を入手する事になる。

「おう知ってるか?砂漠の奥の遺跡に宝物が隠されてるって話。」

なん…だと?
宝物?砂漠の奥にある遺跡の事は知っている。
崩れかけのボロ遺跡だから誰も近づかないような遺跡だ。
そんな遺跡に宝物?

「お?知らねえ、なんだよそれ?」

俺は高鳴る心臓を押さえて恐る恐る酔っ払い男にたずねてみた。

「なんかな、砂漠の奥にでっかい遺跡があるんだとよ、その遺跡の奥には一生遊んで暮らせるだけの財宝が眠っているらしいぜ。」
「まじかよお前!ただの噂じゃないのか?」
「いや、なんかマジの話らしい。今度この話が新聞に乗るんだってよ。だからあんまりベラベラ喋れないんだけどな。」
「めっちゃ喋ってんじゃねえか!」

ツッコミを入れつつも俺の心臓は高鳴っていた。
まだ新聞にも乗ってない最新情報をこの男は酔った勢いでべらべら喋ってくれる。
聞いてみるとこの男、新聞社の者らしい。
遺跡には宝物があるが、それを守る危険な魔物もいるらしい。
だから遺跡を危険区域にする事が決まったらしい。明日の新聞に乗るんだって。
くくく、だが魔物ごときに怯えるマルーン・カラージェイ様ではないぞ?
俺は気配を消して行動する事が得意なのだ。魔物なんかに見つかるヘマはしないぜ。
俺はこの男から搾り取れるだけの情報を搾り取るとすぐに遺跡に向かって出発したのだった。
遺跡が危険区域になる前に、俺がお宝ちゃんをいただいてやるのだぜ!






――――――――





『遺跡の最深部に私の秘宝を封印した。お前には私の宝を守る仕事をくれてやる。』

数百年前に下された命令。
それこそが私の全て、グリフォンの生きる意味である。
砂漠の奥地にあるこの遺跡こそが私の家であり守るべき物なのだ。そこで私は宝の番をしている。何年も何百年も……
ずっとずっと、主の秘宝を守っている……

「…………誰か来た……?」

遺跡の中に侵入する“欲望”。
私は人の”欲望“に対して非常に敏感な魔物だ。
神殿の中に入ってきた者の欲望を私は全て察知出来る。
そして今宝を求める強い欲望を持つ何者かが神殿の中へと侵入してきたのを感じとった。

「主の宝を狙う不届きな侵入者め……この地にやって来た事を後悔させてやる……」

私は翼を広げて広い神殿内を高速飛行する。
目指すは主の宝を狙う不届き者。返り討ちにしてくれる。
私は欲望の発信源へと急ぐ。それにしてもこれほど強い欲望を持つ者は久しく見ていないな。一体どんな面をした侵入者なのか……

「主の宝を狙う下賎な侵入者め……これより先へは進ませない。」
「ん?うおっ!?魔物!やべえ見つかった!?気配を消していたのに何故だ!?」
「…………」

私は遺跡の入り口中央に立っている石柱の上に立ち、侵入者の姿を見下ろした。

ドクン……

「男……か……」

遺跡への侵入者はマルーン色の髪をした人間の男だった。
この遺跡への侵入者
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