真夏のある日。彼女と二人、俺の家にいた。
……もっとも彼女と言っても人ではなく魔物娘なのだが。
今現在、魔物娘と人のカップルは少なくはない。町に出てもかなり見かけるようになった。
「あぁ、あっちいな」
彼女が椅子に座り、手で顔を仰ぎながら呟いている。
仕草だけ見ると人間なのだが、容姿が人間とは違いすぎる。
全身灰色で、所々に黒い物が張り付いていて、背中からウニョウニョと触手の生えている。そして一番の特徴は綺麗な赤い一つ目だ。魔物娘を見かけるようになったと言ったが彼女の様な、ゲイザーと言う魔物はほぼ見たことがない。
出会いは話すと長くなるが簡潔に言えば、綺麗で飲まれるような目に文字通り『一目』惚れしたのだ。そこからは色々な手をつかいアプローチをかけたといったところだ。
その努力も実って今現在ここに一緒に居る。
「ああ、ホントだな」
俺は床に寝て扇風機の風を浴びながら呟きに答える。
ジトッとした目でこちらを見てくる彼女。一つ目だからか表情が非常にわかりやすい。
「……ホントにそう思うならその扇風機の首を振ってくれても良いんじゃないか?」
口調からもわかるとおり彼女は発言にしろ行動にしろ少し男っぽいところがある。一緒にいて気を使うことなく、苦にならないのはそういう要因もあるのだろう。
「……できるだけ涼しい状態で居たい、だから風に当たらない時間作りたくない。」
んだよそれ。と呆れたように彼女は言った。
少し間が空き、突然なにか思いついたように歯を見せてニヤリと笑いながらこちらを向く。明らかにろくな事を考えていない様子だ。
「じゃーさ、オマエ服脱いだらどうだ?」
「……もっと暑くなることする気だろ」
今度はこちらがジトッと睨みつける
考えがバレたからかしどろもどろになりながら彼女は答える。
「う、ほ、ほら汗かいた方が楽だぞ?」
はぁっと俺はワザらしくとに溜め息を付き、数日前の事を思い出しながら話す。
「こんな昼間からやってみろ。へとへとになって身動きとれなくなったらどうするんだ。暗示を使って20時間近くヤられた次の日は大変だったんだぞ……」
思い出すのは彼女はずっと俺に次から次へと暗示を掛け、朝から晩まで犯され続けて頭がおかしくなった記憶。そしてなによりも朝起きた衝撃。体はバキバキ、頭もぼーっとして体も重い。そんなぼろぼろになるなんて思いもしなかった。
「そ、そうなったら看病してやるから」
「看病ってなんだよ……第一、お前の作った炭か料理かわからない物を食べるぐらいなら自分で自分を看病した方がましだ」
そう言うと彼女は少し目を伏せる。
「う、炭って……そんなに言わなくても良いだろ……アタシだって少しは気にしてるんだから……」
目に見えて彼女が落ち込んで見えた。こうやって急に女の子になることがある、まぁそれも可愛いのだが……
少し言い過ぎたか、一瞬そう思ったが心配する必要はなさそうだった。
「ならゲームでもどうだ?」
さっきに比べてましなアイデア、涼しくはならないが暑さを忘れることは出来るかもしれない……が……いや待てよ。
「……ツイスターゲームならやらないぞ」
「う……」
どうやら図星だったらしい。
一週間前、物置の整理をしたときに見つけて、彼女が興味を示していたことを思い出して正解だったようだ。
「なんで熱いのに体を寄せ付けて遊ばなきゃ行けないんだよ。」
腕を組みまたうーんと考え出す彼女。
「じゃあさー普通にどっか涼しいところに遊びに行こうぜー」
まともなアイデアではあるが、あまり乗り気にはならない。
俺はこの扇風機の前という最強のポジションから動きたくない。
「だるいな、行くまでが暑いじゃないか」
「なんだよー、だるいとか暑いとかアタシと一緒に居て楽しくないのかよー」
手足を子供のようにバタバタさせる彼女。俺は少し意地悪してやろうと、からかうように答える。
「楽しいに決まってるだろ、余計なこと言わせて体力使わせるな」
言った自分も恥ずかしいが顔に出てしまっては言った意味が無いので耐える……正直本心だが。
彼女は目を見開いてこちらを見たあと段々と顔が赤くなって、
「……バカ……アタシも実はオマエと、こやってグダグダするのなんだかんだ好きだぞ。」
と、目を反らして言った。
……その照れ顔はずるいだろ、可愛すぎる。意地悪をしたのに倍返しされた気分だ。このままでは何か癪に障る。
俺はさらにイタズラをしてみることにした。
「あ――オマエ暗示かけたな」
もちろん嘘だ、かけられた覚えはない。俺は最強のポジションから立ち上がり彼女に近づく。
「え、かけてないぞ?」
彼女は不思議そうに首を横に振っている。
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