ある秋。
まだ緑の部分もあるが山が黄色、赤に変わりだし、今年も秋になったなと思った。
この季節になると、別になにがあるわけでもないが、この景色を見たくなってここに来る。そして山が様々な色になることはアタシにとって好都合だった。
アタシはゲイザーという魔物らしい。性別はメス? 女? 年齢はどれくらいなんだろうなぁ。そんなにいってないと思うけどな。わからん。
ゲイザーの特徴といえば、肌は灰色と黒、鋭くとがった歯、フワフワ浮けるし背中には目のついた触手、そし赤く光る大きな一つ目。
……どっからどう見ても人間とは違う形の生物。
この姿だと、普段隠れて景色を見ることがができない。だが、山が様々な色に染まっているのおかげで木の上にいる今は見つかりにくくなってるだろう。まぁもし見つかっても木の上ならカラスかなんかと見間違えるさ。
この山に人が入ってくることは滅多にない。
一応、山には町同士を繋ぐ一本の道があるがそれも谷と山に挟まれている、魔物から言わせてもらっても危ない道だ。その道にはたまにバスが通るのだが別に誰が降りてくるわけでもない。
「……ここは毎年かわんねぇなぁ」
アタシは独り言をつぶやいた。
普段人を驚かせてばかりいるが正直…寂しいところがないといったら嘘になる、怖がらせに行ってる時はまだ良いが、何もしてないのに驚かれる、怖がられる、それは少し悲しい。暗示を目からかけることもできるが、そうしたところでアタシを直接見てるわけではない。
その様々な気持ちを少し和らげるためにこの時期はここに来て、誰とも関わらず景色を見るのだ。
太陽の光が山に当たり、山はキレイな色に染まっている。
その中、1日に数台しか通らないバスが危ない細い道を通っていった。
……景色に見とれているうちに、日はだいぶのぼっていた。
(あぁ、もうだいぶ時間がたったな。今日はなにしようかなぁ……もうちょいと景色見て考えるとするかな)
そのときだった。
足音と変な歌が近づいてきた。
(人間か?)
予想通り人間だった。
その人間は歌いながら細い道を歩いている、誰もいないと思っているのだろう、かなり大声で歌っている。
「……チッ」
こっちは景色見て和んでいたというのに変な歌で全部パーになったきがする。とても不愉快だ。
今日の予定は決まった。……一日中寝てやる。やる気もなにもかも削がれた。
そして家とは名ばかりの洞窟には入り、その人間にいらいらしながら、がっつりと寝た。
目が覚めたのは夜だった。外は真っ暗、バスの通る音で起きた。
(夜か……)
アタシはゆっくり外にでた。
外で少し伸びをしてから少し移動し道が見えてくる少し前。……また足音がした。
木の陰から覗いてみると朝の奴のようだった。
(なんだぁ? アイツ)
朝とはうってかわってとぼとぼ歩いている。まるで別人のようだ。
(なにがあったんだ、変な奴……だいたいバスにのればいいのにな、バカだな)
そんなこと考えているうちにそいつは通り過ぎた。
(ほんとになにしてたんだアイツ)
考えてもわからない。もやもやする。
(いちいち歩いてこの道通るなよ、こっちも落ち着けねぇ)
……またイライラしてきた、ほんとに不愉快だ。
(もういい。なにも考えたくないからまた寝てやる)
そう思いまた寝床についた。
――翌日以降、ソイツは何日後も何日後も歩いて道を通った。
二週間後。
今日は雨、最近天気よかったが、ガッカリだ。
アタシは雨は嫌いだ。
なぜかって? まず一つはただ単純に濡れるのが嫌だからだ。もう一つは、、次晴れたとき水溜まりが鏡になるから……自分の姿が見えてしまうからだ。
……まぁ一つ目は解決してる。
昔驚いた人間が逃げ出した時、おいていったカサ?という物があるからだ。
これはとても便利だ。濡れなくて済むし、晴れの日しまっておけば場所も取らない。
いつものバスは雨の中進んでいく。
その後、今日もアイツはその中歩いてきた。ぴちゃぴちゃとアタシと同じくカサをさしながら。
(雨の日ぐらいバス乗れよバカ、理由はしらないけど、ちょっと乗る努力しろよ)
雨はアイツの歌をかき消すほど降っていた。
その日の夜、雨もまだ止んでいない。
だが、またバスの後に足音がした。
(帰りも歩きか、なにを考えてるんだよ……
)
目をあいつに向けたときすぐに朝との違いに気づいた。
(ん?……カサは?)
そう、カサをささずベチョベチョになりながら歩いていたのだ。
なぜささないのかと思いよく見ていると、それ以前にカサは持っていないことに気づいた。
(……なるほど無くしたのか、筋金入りのバカだな。ここまでくる
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