『お父様
私は今日、命により地上へと降ります
一人でも多くの人を救って見せます
ですので、どうかご加護を・・・』
一人の天使は天界の門をくぐり、地上へ堕ちていった・・・
俺はトアル村に向かうという商人の馬車に乗せてもらっていた
隣ではフードを深く被った少女が小さな寝息を立てている
フードを深く被った外見からは判断しにくいが、実はその少女の頭上に光輪があり、背中には翼が付いていた
そう、この少女は天使なのだ
この天使は自らの翼に包まって気持ちよさそうに寝ている
このまま何事も無ければ、明日の朝にはトアル村につけるはず
そこで俺はこの少女とともに使命を果たさなければならない
だが明日の朝まで何事もない、ということは無いだろう
馬車のほろから覗く月はほぼ完全な円を描いている
明日か明後日には満月だろう
魔族たちは満月の夜に近づくにつれて活発になる
まだピークでないにしろ、こんな夜にこんな山道を進むのは自ら襲ってください、と言わんばかりなのだ
特にここの山道は・・・
と、突然少女が目を覚まして外に聞こえないように小さな声で言った
「た、大変ですっ!!
凄い数の魔族の気配が近寄ってきています!」
「やはり来たか・・・」
俺は馬車の前方に移動し、手綱を握っている商人の隣に座ってあたりを観察した
何も言わずにあたりを伺っている俺に嫌な予感を感じたのか、恐る恐る声をかけてきた
「あの・・・どうしました?」
「・・・」
「まさか・・・この近くに魔族でも・・・」
「・・・」
周りに集中して何にも反応しない俺の変わりにフードを被った少女が馬車から顔だけ出して答える
「この周辺に魔族がいると思われます
あ、ここで馬車を止めてください」
「え?」
ガッ!!
少女がそういった瞬間、前方にある木が揺らいだと思ったら道をふさぐ様にして倒れてきたのだ
馬が驚き、馬車は停車してしまう
「魔族とか・・・う、嘘だろ!?」
分かりきっていたとはいえ、ため息が出る
「ハァ・・・残念ながら、本当だ」
クスクスクス・・・
どこからとも無く笑い声が聞こえる
右の草むらが揺れたかと思うと、左の木の上で何か大きなものが動いた
すでに気配は商人でも感じられるほどに近く、強くなっている
向こうはこちらの様子を伺っているのか、いきなり襲ってくることは無い
不用意に来る様子が無いのを見る限り、向こうも場数を踏んでいるようだ
それに対し、この商人はまだ若い上にこういった修羅場も初めてなんだろう
完全に取り乱しており、完全に向こうの思う壺だった
「あ、アンタ達、あの時に絶対に大丈夫っていったよな!?
どうしてくれんだよ!?
早く何とかしろよ!!」
「いちいち喚くな
黙って見てろ」
取り乱している商人を言葉で切り捨てて俺は馬車を降りる
「そ・・・そんな・・・」
絶望に浸る若き商人に対し、少女は優しく微笑みかける
「大丈夫ですよ
彼、口は悪いですけど約束は破りません
ですが、危険ですので事が済むまで馬車の中へ」
そういって、少女はローブを脱いだ
光輪が輝き辺りを照らし、体を覆うように丸まっていた翼が広がり羽が舞う
「あ、貴方は・・・天使、様!?」
「えぇ」
にっこりと微笑むその天使の姿はまさに聖女だった
「ということは、あの男は・・・聖騎士!?」
俺も戦闘のためローブを脱ぎ捨てる
天使の光輪が放つ光によって周囲が照らされる
俺の身に着けている防具に刻まれた、十字架の紋章
それこそ、主神に愛でられし教会における力の代行者、聖騎士の証である
その瞬間、さっきまでの笑い声が一斉に止んだ
「こいつらが最近噂の・・・」
最近になってこの周辺に出没し、見境無く襲っているオークの群れだった
近隣の町では討伐指令も出ているが、数が多く非常に厄介なため手を出そうとするものはいない
この状況では俺がやるしかないようだ
馬車のなかではあの商人がまだ喚いているようだ
「だ、だけどあんな大軍どうやって追い払うんだよ!?
こっちは聖騎士といえど一人だ!
勝ち目なんてあるのか!?」
天使は外の様子を眺めながら静かに言った
「オークという魔物は数人で馬車を持ち上げてしまうほどの怪力を持つので、あまり正面突破は考えないほうがいいですね
ですが、突破方法はあります」
「どうやって!?」
「おそらく、どこかに群れのリーダーがいるはず・・・
ボスを討てば、オークの性質から群れを無力化できるはずです」
さて、俺もそろそろ前に出なくては、向こうもそう長く待ってはくれないだろう
「リズ、馬車周辺に結界を張ってボスを索敵しろ!
それまで俺が時間を稼ぐ」
「はい!
Werden Sie.. Licht.. umgeben Sie mit einer Mauer und sch
amp;#252;tzen Sie uns vor der
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