妹の主治医に緊急の用事で呼ばれ、俺は深夜の病院に駆け込んだ
今病室の妹はスヤスヤと眠っているが、俺が来る前は酷い発作を起こしていたらしい
妹の様子を見てから主治医の部屋に来るように言われた
しかし、その表情はかなり厳しいものだった
おそらく、妹に残された時間はそんなに長くはないんだろう
しばらく妹の寝顔を眺めてから、重い足を上げて主治医の部屋へと赴く
「・・・ミーアさんの容態ですが」
「ミーアの寿命はそんなに長くは無いのは分かっています
では、ミーアはあとどれだけ生きることが出来るんですか?
正直に言ってもらっても構いません、覚悟は出来てます」
「最悪、あと3日・・・長くても一週間でしょう」
「っ!?あと・・・3日」
あと3日、長くても1週間だと・・・!?
あまりに非情な現実
妹の容態がそこまで来ているとは、俺は思いもしていなかった
「し、しかし!
緊急の発作はこれまでにも数え切れないくらいにあったハズです!
こ、今回もまた・・・!!」
「度重なってきた強引な治療で、彼女の体も限界を迎えているのです
それどころか、ここまで持った事自体が奇跡に近いんですよ」
「そ・・・そんな」
「・・・彼女に今投与しているのは痛み止めだけです」
「え・・・何故だッ!?」
その言葉を聞いて主治医に掴み掛かり、言葉を荒げる
そんなことをしても現状は悪くなる一方だと言うのに・・・
「彼女が望んだんです!」
「ミーアが・・・そんなバカなことを望むわけッ!!!」
「彼女はね、すでに悟っていたんですよ・・・
自分の体に限界が来ていて、既にあと数日も持たないって事を!!」
「ッ!?」
主治医の頬に一筋の水滴が流れる
嗚咽でろくに回らない口を開き、言葉を紡いでいく
「自分の体のことですから、よく分かるんでしょうね・・・
これまで診てきた人や魔物の数は数え切れません
もちろん、貴方の妹さんのような方もいれば、もっと酷い病に侵された方も診てきました・・・
そんな方々はね、みんな自分の死期が近づくと分かるみたいなんです
そして私に聞くんです
先生、私の寿命ってあと○○日だよね?って
・・・そんな彼らに、私は何もしてやることが出来ないんですよ!?
そんな彼らに、私は・・・なんて無力なんだ!!」
そういってついに感情を抑えきれなくなり、泣き崩れた
命を救う立場である医者として、酷くなる病気に対し、成すすべが全く無いというのはどれだけ辛いだろうか
「俺は・・・何をすればいいのでしょうか?」
「彼女は、いつも貴方のことを私たちに話してくれました
彼女は貴方が大好きなんでしょうね
ですから・・・せめて彼女のそばにいてあげて下さい
それが彼女にとって、一番の幸せでしょう」
・・・・
「失礼しました」
そう言ってドアを閉める
ドアの向こうから、机を思いっきり叩く音、泣く声が聞こえてくる
主治医もこれまで辛かったに違いない
病気を直すことが出来ず、症状を抑えることしか出来ない
この病気の治療方法はまだ見つかっていない
主治医もさまざまな薬を試したが、現存の薬では治療には至らなかったらしい
外を見ると既に夜が明けようとしている
日が昇るのにはまだ早い
しかし、刻一刻と過ぎていく時間を恨んでも仕方の無いことだった
そして一旦病院を後にする
俺は今、自警団の団長の部屋に来ている
まさかこんな時間に起きてはいないだろう
しかし、俺は部屋をノックする
「入れ」
否、団長は起きていた
「確か今日お前は非番だったはずだが、こんな時間にどうした?」
「明日から一週間、深夜間の警備、見回りを休ませていただきたいのです」
「珍しいな、これまでこの仕事についてから休んだことが無いお前が、一週間休みを取りたいと?」
「実は、妹の容態が悪化して・・・」
「それ以上は言わなくていい
しっかり妹さんの面倒を見てやれ
お前の代理は俺が用意しといてやる」
「ありがとうございます、では失礼します」
団長には前々から妹の事を話している
最近、急に容態が悪化してきていること
何度も発作を起こしていること
きっと団長も感づいて、気を使ってくれたんだろう
しかし、その気遣いすらも今の俺にとっては厳しかった
俺は大分前から生活費と妹の医療費を払うために、自警団に入団して深夜間の見回りなどをしている
年齢の制限が緩く、かつ高給料だからだ
昼間に比べて非常に高い給料が設定されているが、万年人不足に悩まされている
それもそのはず、危険の度合いが全く異なるのである
その主な原因は魔族の存在
ここ最近は人気のない場所からこっそり街に魔族が侵入してくることが多く、深夜に見回りをしている自警団が襲われることも少なくない
俺も過去に何度か襲われたことがことがあった
数年前、初めて遭遇したとき、俺はど
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