昼間でも日光が差すことがない洞窟内部
内部は常に湿り気が感じられるため、どこかで湧き水でも湧いているのだろうか
養分や魔分が豊富な洞窟などにしか生えない貴重なキノコが採れることで有名なその洞窟はそこのギルドの仲間内ではちょっとした穴場である
確かに穴場ではあるもの普通の人間が行くようなところでもなく、ギルドのハンター達はそこらへんの狩りに出たほうが報酬は高い
よってここはそこのギルドに入ったばかりの新米が経験と手持ちの武器の強化に必要な資金稼ぎのために当てられる
それと同時にこの先ギルドで仕事をしていけるかどうかを試すための登竜門でもある
ハンターには実力や勘、充実した武具も必要だが、それでもどうにもならない時がある
それを左右するのが運だ
この洞窟は仮にも貴重なキノコが取れる洞窟
ごくたま〜にメドューサやラミアが笑顔で手招きしてたり、羽を休めたワーバットの群れに遭遇するのも稀ではない
そして歓迎されるのは経験や勘の浅い新米ハンター
しかもその殆どは魔力への抵抗もほとんど無いような安い武具で身を包んでおり、魔族の前では全く訳に立たないだろう
向こうはせいぜい少し固めの服を着込んでいる程度にしか考えていない
そこで彼女たちに出会ってしまうだけでも相当運が悪いのだが、それでも運によっては全力で逃げれば逃げ切れ無いこともない
このようにしてギルドは新米ハンターを試すのだ
さてさてつい先日、このギルドに一人の若者が入ってきた
と言ったものの、ハンターになってからまだ日が浅く、パーティーも持っていない新米ハンターに与えられるような仕事は少ない
なんとか自分ひとりでも出来るようなクエストは無いものか、と毎日張り紙を眺めている若者に受付嬢が声をかけた
「はぁい、そこの新米ハンターさん」
「えっ?あ、僕ですか?」
「そうそう、クエストをお探しかしら?」
「ええ、まぁ
ですが、僕にも出来るようなクエストがなかなか無くて・・・」
「それならいいクエストがあるんだけど、挑戦してみない?」
「本当ですか!?」
「ええ、ここのプロハンターはみんな、貴方のような可愛い坊やだったころにこのクエストをクリアしているって」
「へぇ〜、それってどんなクエストなんですか?
まさか、ここにあるようなドラゴンの討伐・・・とかじゃないですよね?」
「大丈夫、ただの採取クエストだから
詳しくはこの張り紙を見てね」
クエスト内容
ヒヨケタンタケの採取
報酬
5000G
ランク
誰でも
そこまで読んで声を上げる
「ご、5000G!?」
5000Gと言うと、今の自分の全身の装備を2段階ずつ強化してもお釣りがくるくらいだ
「な、このキノコ、なんに使われるんですか?」
「ん〜、そうね、お姉さんが坊やを誘惑する為の薬とかかなぁ」
「からかわないでくださいよ」
「本当よ?
マジックショップなんかに置いてある惚れ薬なんかの原料ね」
「はぁ・・・では支度をして行ってきます」
「気をつけてね?
あ、お姉さんがいいこと教えてあげる」
「はい?」
「魔族に遭遇したらすぐに逃げること
そんな装備じゃあっという間に剥がされちゃうわ
あとね、自分の勘を素直に信じなさい」
「と、言うと?」
「何かを察知したらその勘に従うことね
ヤバイと思ったらすぐさまに逃げなさい
気配を感じたら下手な行動は取らないこと
いいわね?」
「ええ、はぁ・・・では行ってきます」
しばらく笑顔で手を振っていた彼女だが、ふと手を止めてため息をついた
「はぁ・・・
あの子、きっともう帰って来れないだろうなぁ
ちょっと可愛かったのに、残念」
長年G級の狩り場を駆けていた彼女の勘はそう伝えていた
そのことにあの新米ハンターが気づいているのか、いないのか・・・
彼はまだ、暗闇での怖さが分かっていない
某洞窟の前まで来て新米ハンターは一息ついた
モンスターこそいなかったが、思った以上に険しかったのだ
しかし、クエストはまだ始まってすらいない
「ふぅ・・・さて、行くか!」
そして彼は初めてダンジョンに潜って行く
洞窟の中は暗いため、松明の明かりだけが内部の様子を照らし出す
見渡しても狭い範囲しか眺めることは出来ない
そこで新米ハンターに不安が過ぎった
『もし、自分が見えてない場所に魔物がいたら・・・
いや、すでに見られているのかもしれない
・・・後ろ!?いや、右、左か!?』
意識してしまうと視線を四方八方から感じてしまう
一歩ふみだして足元の石がずれて、カコン、と響く
『っ!?』
その音にも驚き、気づけば抜刀してしまっていた
『い、今の音で魔族に気づかれたかもしれない!
ど、どこだ!?
どこに潜んでいる!?』
そこに立ち止まること数分、彼の心は完全に暗闇に囚われてしまった
しばらくして再び歩き出すが、その顔は強張り神経は切
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