「大丈夫、大丈夫だから・・・ね?」
大きな腕、大きな体、ふくよかな胸。
ゆっくりゆっくりと、抱きしめられた。
何故だろう?
自分の方が、大きいのに
自分の方が、力があるのに。
何でここまで、大きくて。
何でここまで、優しくて。
何でここまで、・・・・。
ここまで、愛おしいのだろう・・・。
今年の梅雨はあまりムシムシもせず、かと言って無駄に暑くもない、
比較的すごしやすい陽気だ。
さしあたって、何をやっていても清々しく作業が出来るはずなのだが・・・。
「やばい、死ねる・・・・。」
そう呟く、農家の若旦那、神田 周平はぼやいた。
Tシャツ短パン、そして麦藁帽子と言う、
どこかの海賊王に類似している出で立ちで、籠のようなものを片手にビニールハウスの中で、うねの管理をしているようだが・・・。
「・・・・誰だよ、今日は過ごしやすい陽気って言ったの・・・・?」
お日様が予想の範疇を軽く超えて、ぎんぎらぎんに光っていらっしゃるせいで、ハウスの中がサウナのような暑さのため、軽く死にそうになっている。
どうしてこうなった・・・。
確かさっき、PFメーター(土の中の水分の値をはかる装置)が24(普通は21を超えたら、イチゴは枯れる)とか、ありえない数値をたたき出したがため
仕方なく、灌水したのだが・・・。
その時出した水がこの暑さで、蒸発したのだろう・・・・。
そのため、ハウスの中は暑さと湿度で、脳みそまで溶解しそうだった。
(やばい・・・そろそろ水分とらないと・・・)
流石に体力のある、彼でも、きつい事は目に見えていた。
(・・・でもなぁ・・・)
ざっと見回す。そこには、赤々と実のつけたイチゴたちが、太陽の光を全身で浴びて、艶めいていた。
これを、ある程度収穫して、そのあとに農協に出荷に行かねばならないのだ
が・・・。
(・・・いかんせん、この暑さでは作業に支障をきしてるわけだから、ぜんぜん進んでない・・・。)
さらに、このハウスだけならまだしも、他のハウスもやらなければならんから・・・。
(・・・おっ・・・終わらねぇ・・・)
ちょっと絶望を感じていた・・・。
右頬に冷たい物があたった。
「うぉおう!!!」
勢いあまって、振り返ると。美しい姿した女性が、お揃いの麦藁帽子をかぶって、これまた、Tシャツ短パンとと言う格好で、缶コーヒーを両手にもっていにながら、立っていた。
「なっなんだよ、土代かぁ・・・脅かすなよ!!」
「脅かしてない・・・気付くのが、遅いだけ・・・」
仏頂面を崩さず、淡々と話す彼女は、土色の肌をして、頭や胸に草を模した、飾りがついている。
彼女は、ノームと呼ばれる、魔精霊の一種である。
もともと精霊に実態は、無いが。魔力と結びつくとこの魔精霊になるのだそうだ。
まあ、今の時代、魔精霊の力を借りて、農家は回っているので、特に珍しいことではない。
ノームがいる農家では、かなりの確率でいい野菜が取るので、かなりの数の農家が、ノームを雇ったり、はたまた、嫁に迎え入れたりしている。
うちの場合は後者なので、いつも尻にしかれているが・・・。
「・・・まだ・・・作業が・・・終わってない・・・」
「いや、その、暑かったんで・・・」
そういって、汗でびっしょりになったTシャツを見せて、抗議する。
それをいつも道理の無表情で一瞥すると。
「・・・へたれ・・・」
と一言。なんか、グサッときた。
「いやいや、土代さん!!!、無理だよ!!!、こんな状態じゃ!!!
まず暑いし!!!」
「・・・このぐらいの暑さ、農家なら我慢する・・・」
「水分補給は!!!」
「・・・勇気で乗り切る・・・」
どこぞの勇者王かおまえは・・・。
ああ、なんか騒いだら、余計暑くなった・・・。
「しょうがないから、水分補給してきて・・・終わったら出荷お願い」
「・・・あの・・・休憩は・・・」
「もちろん・・・なし。」
鬼嫁め・・・。だが逆らえないので、渋々とビニールハウスを出て、水道にむかった。
「あ、コーヒーは・・・」
「ははは!!、相変わらずの鬼嫁ぶりだな土代ちゃん!!!」
「ですよね・・・」
出荷に向かった農協の予冷庫(冷蔵庫のことだが、農家の場合、農作物を貯蔵するのでそう呼ぶ)の前でばったりであった市村 幸太に、さっきあったことを喋ると、あたりまえの反応をされた。
「でもさ、精霊がいっしょに、それもお嫁さんとして農業やってくれるんだからさ、同じ農家とするとうらやましいかぎりだよ」
「まぁ・・・、それはそうですが・・・。」
いくら、精霊でもあんな鬼嫁じゃなぁ・・・。
「あとさっ!!、土の力を使えば、作物の管理ぐらい容易いんじゃ・・・・」
「あぁ・・・、えっと、まぁそうなんですけど・・・・。」
魔精霊を嫁にしたものは、交わることで、その精霊のつかさどる元素の
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