決戦-後編

 そこからの流れはこちら側へと流れた。クレアさんが引き付けている間に俺が魔法を永唱、永唱終了と共にクレアさんが身を引き俺の魔法をヒットさせる。ダメージが入ったことで09がターゲットを俺に定めるが、クレアさんがそれを許さない。
 惜しむらくは俺が魔法は得意ではなかったことによる威力不足だろうか。それでも、09は着実に弱っていった。目に見えて纏う炎は勢いを失い、スピードも最初より鈍くなっている。このままいけば勝てる。
 だが、一つ忘れていたことがあったのだった。

「エクスプロード」
「うあっ!」
「くあっ!」

 突如俺とクレアさんの足元に爆発が起こり、俺達は吹っ飛ばされた。
 失念していた。
 敵は09だけではなかったのだ。仮面のような笑顔を張り付ける、この男がまだいたのだった。

「なかなか鋭いね。私の作品の特性を見抜くとは。たいしたものだ」

 嬉しそうにしているのは、この状況を楽しんでいるからだろうか。

「だがね、折角の研究結果を無にされたくないのだよ」

 その時男の顔が始めて歪んだ。いや、その顔から笑顔が消えたのだ。今や奴の顔は無表情。それも寒気のするような冷たい眼差しをしていた。
 フッ、と男の姿が視界から消えると次の瞬間には、09の傍らへと移動していた。恐らくは転移魔法だろう。

「パスコード555913発動許可」

 男がそう唱えると09に反応があった。機械のように両手を前に構え、動きを止めた。さっきまでは獣のように荒々しい戦い方をしていた故に、その様子に違和感を感じずにいられなかった。
 そしてその予感はすぐに確信へと変わる。周囲に漂っているであろう魔力が09の元へと集中していく。魔力に疎い俺が感じられるほどだから、相当の魔力が凝縮しれていることは容易に想像できた。

「実戦データもとれた。お礼に君達にはここでの永遠の安らぎをプレゼントしよう」

 09の前には先程まで戦っていた時に使っていた炎魔法とは、段違いの魔力の込められた炎の塊が発生していた。真っ黒に燃え続ける炎は、炎を焦がしたようにも思える程激しく燃え上がり、獲物を消し炭に変えんとしている。

「クレアさん!」

 その矛先はクレアさんの方へと向いていた。いつもならば自らにターゲットが定めきられる前に射程範囲外に回避するなり、逆に一気に距離を詰めて攻撃を潰すだろうが、今の彼女は苦しそうに顔をしかめて倒れた状態から起き上がれないでいた。
 よく見ると彼女は後ろ脚から軽傷とは言い難い負傷をしていた。先程の爆発魔法で吹き飛ばされたときに、傷を負ってしまったのだろう。このままではあの炎を正面からまともに食らってしまう。

「まずはそちら側から消えて頂こうか」

 無情にも炎はクレアさん目掛けて撃ち出された。それを確認するか否か、俺は彼女のもとへと走り出していた。

「あぐうあああ!」
「レックー!」

 熱い。
 熱い。
 熱い。
 シールドエッジを構えて彼女の前へ立ち塞がった。地獄の炎が俺の身を焼いていく。後ろからクレアさんの声が聞けているということは、彼女を炎から守ることが出来たということだろうか。そして、まだ自分が焼き尽くされきっていないことでもあるだろう。
 凄まじい勢いの炎が俺を襲い続ける。何度も気を失いそうになるが、その度に歯が砕けそうなくらい強く歯を食いしばり、必死で意識を保っていた。

「何をしている、戦えない兵士などさっさと切り捨てろ!何時だってその覚悟は出来ている!戦えない兵士の為にまだ戦える兵士が身を犠牲にするんじゃない!」

 後ろからクレアさんの怒号が飛び交う。彼女の言うことは最もだ。戦場においてはそれが一般的な選択だ。賢い軍師ならば10人が10人それを選択するだろう。
 だが、俺は軍師じゃない。彼女らと肩を並べて戦う「兵士」の一人なのだから。

「悪いけど、聞けないっす!俺はっ!皆にっ!誰一人欠けてほしくないんです!たとえ愚かだって言われても!ぐぅ!俺が守れるかもしれないものなら!それを全部!はあっ!全部守りたいんです!」

 俺の正直な気持ち。クレアさんもバルニさんもリエンもシェイラさんもその他の人達も、この地方に住まう人々も。全てを守りたい。
 強欲だと言われるかもしれない。
 身の程知らずだと笑われるかもしれない。
 独りよがりの正義だと思われるかもしれない。
 だがそれだけは胸を張って言える。戦士団に入ったのもそんなことを思っているからだ。

「どういうことだ!この炎に耐えきるだと?」

 俺からすれば何時間にも感じる(実際には数十秒というあたりか)地獄の時間。俺を襲い続けていた炎は勢いを弱め、やがて消えた。

「三倍にしてっ!お返ししてやるよっ!」

 防御に使っていたシールドエッジをボールを投げるようにして前へとおも
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