つかの間の休息

 賊の襲撃を回避してから数刻後、目的の村に着くことが出来た。到着してから行ったことは情報収集だ。敵を知らなければ、勝てるものも勝てなかったりするものだ。村の住人から仕入れることができたのは、次のようなものだった。
 なんでも賊の殆どが、本当の戦争や紛争などを体験した戦闘プロフェッショナルだということ。中央教会の紋章が入った旗を見た者がいるということ。全身火だるまの人間に襲われたという情報。
 ざっとこのようなものだった。





 俺達は今、宿にてミーティングをしている。現状の状況を整理し、明日の作戦を練るためだ。ちなみに脳筋という理由で、三兄弟&レオルナさんには席を外してもらっている。酷いと思われるかもしれないが、作戦立案の際にはあの人達は引っ掻き回してばかりなので、この方が都合がいいのだ。

「だいたいはこっちが入手した情報と一致していますね」

 リエンの言う通り、中央教会とのコネクションがあることや、戦闘のプロフェッショナルだらけと言うのはこちらも掴んでいた。当面の問題は、

「火だるまに・・・襲われる・・・か・・・」

 あまり喋らないバルニさんがその口を開いた。ここに来てから新たに入手した情報、火だるま人間についてだった。

「普通なら有り得ないことですわね」
「ですが、私は村人達が嘘を言っているとも思えませんが・・・」
「ですね、俺もそう思います」

 討論は堂々巡りで上手く進まなかった。
 そんな折、突然部屋のドアが乱暴に開け放たれた。
「レック!本部の方から伝令役が来たぜっ!」

 そこから現れたのは悩みとは無縁そうな、満面の笑みを浮かべたミノタウロス。先程まで食事をしていたのだろうか?口元にケチャップらしき赤いものがこびりついている。

「・・・分かりました。すぐ行きます」

 隊のみんなに少し席を外す旨を伝え、俺は伝令役の者が来ているという宿の入口へと向かった。





「冗談・・・ですか・・・」
「残念ながら冗談じゃない。シーリアが幹部と思わしき奴から聞き出した情報だから信憑性は高いんじゃないか?」

 伝令役として遣わされたブラックハーピーから伝えられたのは明日、賊達がこの村を活動拠点とするため総攻撃を仕掛けるとのことだった。
 彼女の言ったシーリアというのは、不穏分子から情報を吐き出させる役目を持ったサキュバスだ。
 本部の方でその、あまり口にすることじゃない方法で情報を吐き出させたのだろう。情報だけ吐き出させたとは到底思えないが。

「出来れば戦力を増やして村の防衛と賊の撃退をさせたいらしいが、奴らの攻撃開始は昼前らしいからな。応援部隊が到着する前に攻撃が始まってしまうだろうから、そちら側に最終的な判断は任せるとのことだ」
「お、俺ですか!」
「他に誰がいる?」

 呆れたような顔を向けられる。

「本当はお前達のところの隊長が担当すれば確実だろうがな。今回は外せない用事とやら連絡が取れんからな。お前に頑張ってもらしかない」

 頼りないがな、と最後に付け加える。

「では、私は本部に戻る。せいぜい上手くやるんだな」
「ま、待ってくださいよ!」

 彼女は俺の答えを聞くことなく、飛び去って行ってしまった。後には途方に暮れた、未熟者が一人取り残されていただけだった。





「で、どうするんですか?」

 部屋に戻り、伝えられたことを彼らにも伝えると、リエンが明日のことについて尋ねてきた。

「えと、それは・・・」

 正直、俺は自分が考えていることに自信が持てない。みんなは大切な仲間だし、誰ひとり欠けてほしくない。この人数で総攻撃を対処するのは酷なことだ。たとえ防衛出来たとして、全員無事でいられるとも思えない。

「一度戻って・・・、体勢を立て直すべきだ・・・」
「しかし、それでは村に被害が出る。私達だけでも防衛に当たるべきだ」
「そうです!民を守るのが私達の役目のはず。ならば民の安全を最優先するべきです!」
「ですが防衛しきれるのでしょうか?」
「死んだら・・・元も子もない・・・?」
「出来るか、ではない。やるんだ」
「レック殿。勿論残りますよね?」

 議論がヒートアップして口を出せないでいると、不意にリエンに話を振られた。

「そうでs」
「待ってください。ここはもっと慎重に考えてください」

 肯定しようとしたところをシェイラさんに止められる。意見が真っ二つの状態では、どちらにするべきか強く決められず、俺は言葉に詰まってしまう。

「どうするんだ・・・?」
「最終的な判断は任せますけど、私は残るべきだと思います」

 忘れていたが今回の任務の隊長役は、俺の役目だったのだ。だから俺が決断をしなければならないのだった。

「すいません。少し時間ください」
「そんな事を言っている場合か!猶
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