翌日、集合場所に行くと隊員のほとんどは既に集まっていた。男性4人、女性1人に魔物はミノタウロスとケンタウロスがそれぞれ1人ずつ。
まだ、集合時刻までは時間が余っているので皆、仲のいい隊員達と雑談などをして時間潰しをしていたようだった。
「やあ、調子は良さそうかい?」
能天気な声がした方に顔を向けるとそこには、件の任務丸投げ隊長が邪気のない笑みを浮かべて立っていた。今日は俺に任務を任せて自分は休みなので、何時もの紺色の制服ではなく、お洒落な私服姿だった。
「やっぱ俺不安っすよ・・・。隊長来てくれないっすか・・・」
「そうしてやりたい気持ちもあるけど、今日はどうしても外せない用事があるからね」
無駄だとは思いつつも再度先輩に助け舟を求めるが、見事にスルーされてしまった。
「そういえばその用事ってなんなんすか?別に今日定例会議とかないはずっすよね?」
ふと、昨日から気になっていたことを聞いてみた。先輩は隊長や町の有力者が集まる定例会議がない限り、任務を休んだりしない。だからそれがないのに休みを取るなんて、先輩にしてはけっこう珍しいのだ。
「え?聞きたいの?聞きたいのかぁ〜」
先輩の爽やかな笑顔が、心なしかいやらしい笑みに変わったような気がした。なんか・・・、聞くの辞めたほうがいい気がする。
「あ・・・、やっぱいいっす」
「仕方ないなあ。じゃあレックにだけは教えてあげよう」
聞けよ人の話。
「実は先日、僕にも彼女が出来ちゃってさあ。その子が可愛いのなんのって。それで今日はその子との初デートなんだよね」
聞かなきゃよかったと凄まじく後悔した。っていうか仕事休む理由が彼女とのデートかよ!職務放棄だろこれ!
「デートって・・・、仕事とデートどっちを優先すべきか分かってるんすか!」
「分かってるよ。当たり前だろ」
よかった。ちゃんとその辺は弁えてるみたいだ。
「だから今日はデート行ってくるね」
「そっち優先なんっすか!?」
ちょっとでも安心感を抱いた俺が愚かだった。先輩は型破りなところがあるけど、それはこんなところにもあったみたいだ。
「っと、そろそろ行かなきゃ。じゃ、あとよろしくなレック」
「・・・はい・・・」
そうこうしている内に隊員達も集まってきて、先輩も時間がきたみたいだ。
なんだかんだあったけれども仕事はしっかり熟さなきゃいけない。
「あ、そうだ。レック」
「なんすか・・・?」
「自分をあまり卑下するなよ」
「はあ・・・」
先輩はそう言い残すと軽やかな足どりで去っていった。例えるなら嵐のような人だよなあ、先輩って。
「さてと・・・」
まあ、それとこれとは別の問題だ。今は任務に集中しなくちゃ。
そうして気を引き締めて俺は隊長代理という役目を果たすため、ミーティングを始めることにした。
今回の任務に参加しているのは俺を含め、9人。人間は6人で魔物は3人だ。
ゴルドさん、シルバさん、ブロンさんのアイアン三兄弟・剣士のバルニさんに回復魔法が得意なシェイラさん。それにミノタウロスのレオルナさんにケンタウロスのクレアさん、時間ギリギリにやってきたリザードマン、リエン。
人と魔物は相容れぬものというのがこの国一帯の教会の教えとして伝わっている。それが何故共に任務をするような関係にあるのかというと、この辺を治めている領主様が異端だからだ。領主、アラン・ギャラントル卿が掲げる理念は「力こそ全て」。これだけを聞くと危険人物・気性の荒い暴君といったイメージを抱かされるが、実際の領主様は実に思慮深い方だ。
異国のとある君主は、戦争で自らの命を奪おうとした射手の罪を打ち消す代わりに、自分の軍の兵士として取り込んだ。後にその王は天下統一を成し遂げた。
自らに立ち向かう者にはとことん非情だが、その一方で自らに敵意がない者に対しては絶対の信頼を置く、それが傭兵・平民どころか魔物に至るまでそのスタンスを貫くのがギャラントル卿のやり方なのだ。
そんな卿の在り方に感銘を受けて直属の戦士団に入ってくる者は少なくない。 故に中央教会の聖騎士団といえど迂闊に手を出すことが出来ないのが此処、グランバートル地方である。
閑話休題。
今回の任務は、中心街の外れに位置する村周辺で賊が出没するとの情報があったため、その真偽の調査と発見の際の捕縛が主な内容だ。だが、それだけならばこれほどの人数を派遣したりしない。実はこの情報には続きがあった。
今回の標的としている賊が中央教会と繋がっているという情報が入ってきたのだ。賊だけならば3〜4人位で殲滅することが可能だが、教会の手の者がいるならばその人数では辛いということも十二分に有り得ることだ。そのことを踏まえて、この人数での任務となったのだっ
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