ずりずりずり。
蛇体を引きずりながら戦士団駐屯所の中を進む。すれ違う戦士が私を見て、ぎょっとした顔をして目をそらす。今の私はそんなに酷い形相をしているのだろうか。まあ、構いはしない。頭の蛇達もざわめいている。事実、私もかなり苛立っている。
階段を次々這い登り、屋上へ続く扉を少々乱暴に開ける。案の定、目的の人物はそこにいた。
何時ものようにベンチに胡座をかき、傍らに身の丈程もある大剣を置いてぼうっと空を眺める真っ白い髪が特徴的な男。
「シュバルツ!あんたまた任務抜け出してきたでしょ」
「ちっ!またてめーかよ」
私を見るなり舌打ちをして露骨に視線を外す。
「『またてめーかよ』ですって?」
このやりとりももう何回目なのだろう。任務を抜け出したり、独断で行動したりしては問題を起こす。そのたび私がシュバルツに抗議をしにいく。
「あんたねぇ!いつもいつも勝手なことばっかして!!」
「ふん、てめーには関係ねーだろ」
「関係ないわけないでしょうが!」
尤も、全く彼が応えてないのは周知のことだ。
「あ、いたいた。ヴィオレ」
「ディレル隊長」
とても爽やかな笑みを浮かべて、私が入ってきた入り口から姿を現す男がいた。年若くして隊長職を任される程の能力を持つ、私やシュバルツが所属する部隊の隊長、ディレル・スプライトだ。
今日は大量発生・異常成長した害虫の駆除任務に行っていたはずだけど。
「すいません隊長、またシュバルツが勝手なことを・・・」
「いいよいいよ。粗方片付いてたから」
今に始まったことじゃないしねぇ、と手をひらひらさせて能天気に笑う。
「っていうか隊長もビシッと言って下さいよ。私が言っても全く聞き分けないんですから」
「またまたあ。僕が言ったとしても、聞き入れてくれないだろ?」
あっはっはっ。
いや笑いながら言うことじゃないでしょう。
「ふん、よく分かってるじゃねーか」
上司を前にして敬語も敬意もない態度。当然と言えば当然だけど、こんな奴だから彼には敵が多い。主に他部隊の隊長職の者や、特殊階級の者だ。
でも、どれだけの目にあっても決してぶれないその精神だけは本物、だと思う。
「じゃあな」
短く話を打ち切り、すっくと立つ。
「ちょっと!まだ話は終わってないわよ!」
「付き合う義理はねー。もう帰って寝る」
大剣を背中に挿すと隊員制服のコートを翻して屋上のフェンスに手を掛けて、屋上から飛び下りた。
「ちょっ!シュバルツッ!?」
ここは駐屯所は五階建ての建物だ。当然かなりの高さがある。にも関わらずシュバルツは何の躊躇いもなく飛び下りていったのだ。
ズダッ!
少々大きな音を当たりに響かせ、地面に着地成功。そのまま何事も無かったかのようにコートに両手を突っ込んで歩いていった。
「っはあ・・・、本っ当に非常識なんだから、アイツは」
「はは、元気があって何よりだ」
「だからそうやって黙認してるから、アイツだって付け上がるんです!」
「うーん、でもシュバルツは仕事はしっかりやるしねぇ」
う、と言葉に詰まる。
確かにアイツは仕事が出来る。防衛任務では対象の防衛どころか攻撃を加えてくる分隊を壊滅させるほどの戦果を挙げている。害獣や害虫の駆除任務は一番の駆除数を挙げてくるし、小隊を率いての大きな任務の際にはまず配属される。
大体、私と殆ど変わらない歳(私は二十二)で私は戦士階級が下から二番目のブルーランドクラス(最下級はグリーンランドクラス)、通称BLクラスなのに対して、アイツはレッドオーシャンクラスのROクラス、最上級のスカイクラス目前と言えば、シュバルツはどれだけ優秀な戦士なのか分かってくれるんじゃないだろうか。問題は素行が悪いことだけど。
「さっさと帰っちゃう時だって、任務が大体片付いてからだし、独断行動がマイナスに働いたことはないしね」
「でもっ!」
「じゃ、今度の任務はヴィオレにも参加して貰おうかな」
「え?」
「何か不備があるならその時に言ってやればいい。隣で一々言ってやれば、幾らか良くなるんじゃないかな?」
それは、悪くないかもしれない。
いつも事後に言うことになるから、アイツだって事の重要度を理解していないのかもしれないし。
うん、常に同伴は良いかもしれない。私は不本意だが。
「分かりました。今度の任務はご同伴させていただきます。宜しくお願いします」
「ん、こちらこそよろしくね」
「何でてめーがいるんだよ」
「隊長には許可は取ってあるわ」
「ふん」
戦士団駐屯所敷地内に幾つかある、隊員集合スペース。私はシュバルツと並んで集まっていた。見るからに不快そうな態度だが、知ったことではない。
今回はシュバルツの監視が私の役目なのだ。下心とか持っているわけじゃないし、責任者には話が既に通っている。大義名分を持って彼を見張れるのだ。頭の蛇達も得
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