終幕

 あのあと彼らは洞窟の前に戻ってきていた。

「その・・・ありがとな・・・助けてくれて」

 はにかみながらもしっかりと礼を述べる。青年に心を開いてくれたことゆえの変化だろうか。

「死ぬのは誰だって嫌だよね?苦しむのもさ」

 似たようなことを少し前に言われた気がする。
 その時自分は死にたいと答えたんだっけ。でも、今はそうは思ってはいなかった。

「うん、そうだな」

 自然と笑顔が浮かんでしまう。
 もう卑屈になりつづけるのは辞めにしよう。そのほうが明日を生きていきやすいから。

「じゃ、さよなら」
「ま、待ってくれ!」

 咄嗟に口を突いて出た引き止めの言葉。

「な、なんかアタシに出来ることないかな?ほらアタシ、アンタに酷いことした上に助けてもらってばっかりだからさ。なんかお礼できないかな?」

 彼と出会ったばかりの自分では全く予想出来ない発言だ。あれほど人につらく当たっていた自分が、他人に恩返しをしたいと思うなど、以前の自分から比べるともの凄い変化だ。

「・・・特にないかな」
「なんでも言ってくれよ!アタシが出来ることならなんでもするからさ!」

 内心馬鹿みたいだと、彼女は自嘲する。
 なんでこんなことに必死になるのか自分でも分からなかった。

「じゃあさ、君さえ良ければだけど、僕の旅に付き合ってくれないかな?」
「え?」

 旅に付き合う?何を言い出すのだろう。
 困惑していると、恥ずかしいそうに笑いながら青年は話す。

「僕、ずっと一人で旅をしてきたんだ。だいたい三年くらいになるね。一人旅自体は慣れたけど、やっぱちょっと寂しくてさ。無理強いはしないし、嫌なら断ってくれて構わない」

 何言ってんだろな僕、と顔を背けて頬をかく。
 普通に考えれば、家族なり恋人などが躊躇する原因になって答えに困るところだ。
 だが。

「そんなんでいいなら何処までだって付き合うよ」
「いいの?」
「ああ」

 だが彼女を縛り付けるものは存在してはいない。それら全てに、拒絶されたから。

「だから、よろしくな!えっと・・・」

 青年へ手を差し出したところで言葉に詰まる。そういえば名前を全く知らない。

「僕はクロード。クロード・アバントス」
「アタシはミイル。呼び捨てでいい」
「よろしく、ミイル」
「こっちこそよろしく、クロード」

 遥か上空で、太陽が彼らを見守っていた。
10/02/27 11:40更新 / Joker!
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