「いやー、それにしても随分楽に捕まりましたね」
「野生の勘じゃないか?ほら、こっちにはこんなデケェ奴がいるんだしな」
「さすがは獣ですねぇ」
「「ハハハハハハハハ!!」」
実に耳障りな奴らだ。
こっちにはそんな気は到底無いってのに。自惚れってのは怖い。
心から嫌悪感が湧き出るが、これで自分の願いが叶うとするならば安いものだと、この場は辛抱する。
(やっと・・・やっと死ねる・・・)
安堵感。
この世から確実に消え去れる。長かった。
彼女は喜んでいた。
「それにしても中々の上玉ですねぇ」
「手を出すなよ。傷物にしたら娼館に高く売り付けられねぇからな」
聞き捨てならない言葉を聞いた気がした。
「待ってくれ。私を殺すんじゃないのか?」
「は?大事な商品をなんで潰さなきゃならねぇんだよ」
迂闊だった。魔物を付け狙う者達は教会の関係者だけではなかったのだ。
彼らのように魔物を捕まえては、娼館へ売り飛ばすような輩も存在しているのだ。
「お願いだ!いっそのこと殺してくれ!」
「黙れよ」
雇い主の男が、ドスのきいた声で食らいつく。
「お前何人間様にお願いしてんだ?お前に権利なんてあるはずないだろ?お前らはこの世に存在するだけで悪なんだよ。分かってんのか?だったら、少しでも役に立ちやがれ屑」
ワーウルフの顔に唾が吐き掛けられる。彼女は拭うこともできずに放心する。怒るでもなく、嘆くでもなく。
「死にたけりゃ娼館で使い終わったら死なせてくれるぜ。まあ、クスリやなんやらで原形なんて留めてなくなるだろうけどな」
これから自分はただの道具として扱われ、そして使い捨てられる。
死ぬ前にまた長い間苦しまなければならないのだ。何故?自分が何をしたというのだ?何故これほどまで苦しみ続けなければならないのだ?
「・・・やだ・・・いやだよ・・・」
彼女の目から涙がこぼれ落ちる。
これ以上苦しみたくないから死にたかったのに。死ぬためにまだ苦しめというのか。
「そうだろ。本当は死にたくもないだろ」
自らの頭上から(見えないが)聞こえる生意気な声。
「よっと!」
鉄格子の上から何か蹴られる音がしたあと、彼らの後ろに青年が降り立つ。
突然の闖入者に男達がどよめく。鉄格子は乱暴に降ろされ、男達が武器を構える。
(あいつは・・・さっきの生意気な奴)
「なんだテメェは!」
「ただの通りすがりだよ」
小柄な男が自らの武器であるショートソードで青年に切り掛かる。
青年は両手に短刀を持っていて、向かってくる男を見据える。
そして、一歩後ろに「下がった」。
「ってあれ?何処行きやがった?」
小柄な男が再度青年を視認しようとすると、青年の姿は全く見当たらなくなっていた。
「上か!?」
咄嗟に頭上を見上げたが、太陽に目が眩んだだけで青年は影も形もなかった。
「うぐぅっ!」
混乱している間に男の両脇腹に強い衝撃が叩き込まれる。腹のものを全て吐き出してしましそうな衝撃を食らって、そのまま倒れ伏す。
青年が短刀の柄で両脇腹を強打したのだった。いきなり姿を消し、同じようにいきなり姿を現した青年は、今度は男達に目を向ける。
「いきなり襲い掛かってくるのは酷いんじゃないですか?僕はちょっと話をしにきただけです」
「な、なんだ」
「あ、すいません。あなたじゃなくてそこのワーウルフに話があるんです」
青年の剣幕に押され雇い主の男が答えるが、あっさりと流される。
青年と争うことは大きなマイナスだと考え、雇い主の男は雇った二人を引き止めている。
「どう?まだ死にたいと思ってる?」
青年は彼女に問い掛ける。彼女はといえば、涙と鼻水に濡れて酷いことになっている。
「この人達と一緒に行けば、そのうち死ねる。だけどまだたくさん苦しむことになる。君はそれでいい?それでいいなら僕はもう君を助けない。でも、望むなら僕は君を助けてあげられる」
「・・・ア・・・ぐす・・・アタシは・・・」
「君は死にたいわけじゃない。苦しみたくないだけのはずだ」
「・・・・・・助けて」
搾り出すような一言。それだけで十分だった。
「了解だ」
そして青年が男達に向かって走り出す。巨漢、細身の男ともに構えた。しかし。
「あうっ!」
青年は一気に男達を通り過ぎる。すると、彼らの中の細身の男が、いつの間にか倒れ伏していた。
「な、なんなんだお前は!?」
「だからただの通りすがりですってば」
男達に向き直り答える。清々しいほどのすっきりとした返答だった。
そしてまた青年が走り出す。そして男達をまた通り過ぎ
ガイン!
なかった。
「おっさん、やっぱ強いんですね」
「まあな」
巨漢の男は大剣で青年の短刀を受け止めてい
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