パチ・・・パチパチ・・・
木が爆ぜる音で彼女は目を覚ました。目を覚まして最初に気づいたのは、手足の違和感。目を向けると、どちらも包帯ががっちりと巻かれている。
自分で巻いてはいない。自分は住家に戻ってからすぐに倒れ込んでいたはずだ。
ならば一体誰が?
「あ、起きた?」
その声に反応して咄嗟に身構える。が、傷が痛んで顔をしかめてしまう。
「ああ、そんな無理しないで。今は体力つけなきゃいけないんだから」
青年は心配そうな顔をしてこちらを見ている。その顔を見ていると・・・・・・無性に苛ついた。
「こんなものしかないけど、食べなよ」
青年は焚火であぶっていた干し肉を彼女へと差し出す。しかし。
パンッ!
「何が目的だ人間風情」
差し出した干し肉は彼女によって弾かれ、地に落とされた。
「あ・・・」と干し肉を見つめてから、青年は彼女に向き直る。
「その・・・、勝手に住家に入ったのは謝る。ごめん。吹雪で場所なんて選んでられなくて」
「理由はそれだけか?」
「あ・・・えと・・・、怪我してたし、ほっとくのも悪いかと思ってさ」
双方押し黙る。
広くはない洞窟内にパチパチと焚火の音だけが響く。
「ふん。こんなことして恩でも売ったつもりか」
刺のある口調で彼女は言う。
「誰だって死にたくないだろ?だから
「アタシは死にたいんだよ」
「え?」
死にたい?生きたいではなくて?
突然のことに青年は少し混乱する。
「そ、そんな軽々し
「『そんな軽々しく死にたいなんて言うな』とでも?アタシは誰からも必要とされてない!むしろ存在して欲しくないと思われてる!親も兄弟も友達もだ!アタシがこうなった途端にさ!人間のアンタなんかには絶対にわかんないだろうけどさ!誰からも不要なアタシなんて死んでるも同然なんだよ!」
彼女はそこで一度切り、息を整えてから再び口を開く。
「さっきだってアンタに助けられなければ、そのまま死ねたはずなんだ!アイツに殺されても良かったし、ここで衰弱死したってよかったんだ。どっちもアンタは余計なことをしたんだよ!」
まくし立てて疲れたのか、ハァハァと息を切らしている。目尻には少し涙が浮かんでいる。
「いいんじゃないか?そんなんでも」
「んだと?」
青年はぽつりと言う。
「誰から必要とされてるとか、どう思われてるかってのも重要だろうさ。だけど一番大事なのは自分の意思じゃないか?生きてれば苦しいことなんて数え切れないけど、楽しいことだって同じくらいあるよ。死んだらもう苦しまなくてすむだろうけど、楽しいことだってそれで終わりだよ」
「それはお前が人間だから言えるんだ。気がついたら魔物にされて、それだけで周りから見捨てられたアンタに分かるっての!?」
「全く分からないよ、魔物の考えなんて」
ガスッ!
青年の背中に圧迫感が生まれる。ワーウルフが青年の襟首を掴み、洞窟の壁へ押し付けているのだ。
彼女の顔は怒りに歪み、青年を一直線ににらみつけている。
その視線を青年はまっすぐ受け止めている。
「痛いな。放してくれ」
「そらみろ。アンタもアイツらと何も変わらない。アタシのことなんて分かっちゃくれない」
「ああ分からないよ。少なくともネガティブなことしか考えられない奴のことなんてさ」
膠着状態がしばらく続いてから、ワーウルフは青年を解放した。
「さっさと出てけ。吹雪はもう止んだだろ」
「そうさせてもらうよ」
青年は荷物を纏めると、彼女を一瞥もすることなく洞窟を後にした。
(ムカつく野郎だ。アタシと殆ど変わらないくせに、いっちょ前に説教たれやがって)
彼女は苛立っていた。
青年から言われた言葉が胸に突き刺さっていた。
『一番大事なのは自分の意思じゃないか?』
『ああ分からないよ。少なくともネガティブなことしか考えられない奴のことなんてさ』
「くそっ!思い出しただけでもイラつく!」
ガン!
苛立ちを紛らわすために壁を殴る。殴った拳から鈍い痛みが伝わるが、その痛みが彼女の苛立ちを少しだけ冷やしてくれた。
「なんだよ・・・。なんなんだよアイツは」
そのとき彼女の耳に何者かの足音が聞こえてきた。ギュッギュッという雪を踏む音はこちらにどんどん近づいてくる。
「おっ、坊ちゃんいましたぜ」
洞窟の入口に4人の人影が見えた。一人は上から下まで隠した巨漢。先程自分を襲った男だった。その他には卑しい笑みを浮かべる小柄な男。防寒具で着膨れしているのか、でっぷりと太って見える。そして全く表情を変えない男。病的なまでに肌が白、いや青白く無表情とあいまって死人のような印象を与える。小柄な男と同じ防寒具を着ているにもかかわらず、余り太って見えないことから、実際はかなり
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