「これをこうして……また一箱あがりっと」
出来立ての宝箱の前で満足そうにうなずく彼は、
ここ最近評判を上げてきた家具職人さんだ。
しかし、家具と言っても彼の作業場で作られている物は様々なデザインの宝箱ばかり。
実は彼の評判が上がってきたのも、彼の住んでいる国が新しく宝箱を発注し、
彼もそのお仕事の一部を引き受けて宝箱を作りお城に納めたところ、
彼の作った宝箱が頑丈で壊れにくく、デザインも良いと気に入られたからなのでした。
その評判が広がったのかお仕事がたくさん回ってくるようになったのは良いのですが、
入る仕事は揃いも揃って宝箱の製作ばかりになってしまっていたのでした。
「良し良し、我ながら良い出来だ」
もっとも、物を収納するという役目を持つ宝箱も家具の一種ではありますし、
彼も、皆が大切な物をしまう宝箱を作るという仕事に何も不満は無かったので、
今ではすっかり箱職人として腕を振るう日々を送っているのでした。
「ありゃ、おかしいな、また箱の位置が変わっているような?」
近頃彼は自分の作業場で感じる違和感に悩んでいました。
どうも作業場の中にある箱の位置が、
自分のいない間に変わっているような気がするのです。
最初は気のせいかと考えていたのですが、
はっきり置いたと記憶していた箱が動いていたり、
ここに置くはずが無いと思えるような高い棚の上に箱が置いてあったり、
酷い時にはご飯を食べに作業場を出て、
帰ると既に箱の位置が変わっていた事もありました。
「うーん、これは一回調べた方が良いかもしれない」
さすがにこれはおかしいと考えた彼は、
自分がいない間の作業場を探ることにしたのでした。
一日のお仕事を終えた彼は、いつもなら酒屋にお酒を飲みに行くのが日課なのですが、
今日は作業場の様子をうかがうために、酒屋に行く途中で引き返してきました。
音を立てないようこっそり作業場に戻ってくると、
なにやら中から話し声が聞こえてきます。
「やっぱりあの人の作る箱は素敵だな〜」
「本当に……彼は……良い物を作る……」
「おい、あんまりあちこち動かすなよ、最近怪しまれてるみたいだしさ」
声の様子から、どうやら女の子が三人、何か話をしているのだと分かりました。
「近所の子が俺の作業場を遊び場にでもしていたのかな」
やれやれと、原因が分かってほっとした彼ですが、
このまま刃物や鈍器がある危険な作業場で、子供を遊ばせるわけには行きません。
「おーい、ここで遊んでちゃいけないぞー」
そう声をかけながら作業場の中に入ったのですが、
作業場の中には誰も見当たりません。
どういうことだろうと辺りを良く見てみると、
宝箱の一つからなにやら布がはみ出ています。
「なるほど、宝箱の中に隠れたな?」
その微笑ましさに思わず笑みを浮かべますが、同時に少し違和感も感じます。
「はて、こんな箱を作っただろうか?」
どうにも見覚えの無い箱に少し考え込んだ彼でしたが、
たくさんの箱を作っていればそういうこともあるかと気にしないことにしてしまいました。
「ほら、隠れてないで出てきな……さ……い?」
「わ……見つかっちゃった」
箱の中にいたのは髪をツインテールにしたとても可愛い女の子でした。
それだけならば彼も言葉を詰まらせることはしないのですが、
その女の子は薄く肌が透けて見える布地にリボンを巻いたような服を着ていて、
それが裸にリボンを巻いただけのような、とても扇情的な格好に見えてしまったのです。
「こ、こうなっちゃったら仕方がないよね、うん」
彼が見とれてしまっている間に、女の子は何かを決意したかのように頷きます。
「えっと、君は何で……」
ようやく気を取り直して、彼は質問をしようとしますが、
その質問を言い終わる前に、女の子が両手を上げて叫びます。
「えーと、わ、我が瞳、我が息吹、汝の心を捕まえ操らん……チャーム!」
女の子がそう叫んだ瞬間、彼の体を紫色の光が包み込み始め、
なんだか目の前の女の子がとても魅力的に見えてドキドキと胸が高鳴ってきてしまいます。
「な……んだ……これ……」
自分を包む光と感情に疑問を感じてはいるのですが、
女の子から目を放すことが出来ません。
そのリボンのような服は、彼に解かれるのを待ち望んでいるかのようにひらひらと舞い、
大部分を露出させている肌はきめ細かく、最高のさわり心地だと主張しているように見え、
可愛らしい顔立ちにはめ込まれた瞳は、彼の全てを吸い込んでしまいそうに深く輝いて……
「いきなりごめんね、でもあたし、お兄さんのことが好きなの……」
宝箱から出てきた女の子はそう言いながら彼
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