「ふむ、マミーたちの配置はこれで良いだろう」
砂漠の偉大なる支配者「ファラオ」様の眠るこの遺跡を守るため、
そして、遺跡に住まう部下たちやその伴侶たちを守るために、
アヌビスである私は、今日も遺跡防衛のための計画を練っていた。
少々根を詰めていたせいか、ふとした拍子で溜息を吐き、
それで初めて体に疲労が溜まっているのを自覚できた。
「いかんいかん、自分の体調管理も出来ないようでは部下たちに示しが付かないな」
しかし、これも皆を守るため、この遺跡を預かる守護者として、
自分の命令に穴が無いようにしっかりとした予定計画を立てなければいけないのだ。
「ふぅ、よし、これで完璧だ」
我ながらなかなか満足のいく計画書に今度はやり遂げた溜息を漏らす。
皆がこの計画通りに働いてくれれば、何者もこの遺跡を侵すことは出来ないだろう。
きっと皆も、この計画の下、遺跡を守るために一丸となってくれるはずだ。
そう……きっと……
「くぉらぁぁぁぁぁスフィンクスゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!」
「きゃ〜〜〜、ばれたにゃ、逃げるにゃ、ごめんなさいにゃ〜」
今日も今日とて、見張りをほったらかしたスフィンクスに怒鳴り声を上げる。
「まったく、あいつと来たらいつもいつも」
スフィンクスも頼りになる時はなるのだが、
あのサボり癖だけは何とかならないものか。
まあ、あいつは置いといて、私の忠実な部下であるマミーたちならばこんな事は……
「アヌビス様〜警備場所について〜何とか希望の部署に就けないかと要望が来てます〜」
「うむむ、気にしてはいるんだが、近いうちに何とかすると伝えておいてくれ」
「巡回のシフトについてなんですが〜夜の時間に変えて下さるとありがたいのですが〜」
「むう、少し待て、変われるやつがいないか確認を取ってやろう」
「アヌビス様〜5番部屋のマミーちゃんが病欠だそうです〜」
「そうか、心配だな……その子はどんな具合なんだ?」
「それが〜、その〜、旦那とヤり過ぎて〜、腰痛だそうです〜」
「叩き起こしてこい!」
い、一丸となってくれるはずだ……きっと……多分……
……ちゃんと言う事を聞いてくれる部下が欲しいよう。
「アヌビス様〜」
「……今度はどうした」
「あ、あの、え〜っと、その〜」
おっといかん、自分の不機嫌を部下にぶつけてはいけないな。
「いや、すまん、なんでもないんだ、それで、どうしたんだ?」
「は、はい〜、遺跡の近くで行き倒れていた人を見つけたと報告がありました〜」
む、侵入者ならばたまに来るのだが、
行き倒れとは珍しい、とにかく放っては置けない。
「それはいかんな、遺跡に保護はしてあるな?案内してくれ」
「ふむ、この人か」
案内された先にはまだ少年期の名残も残す年頃に見える青年が、
全身を赤く火照らせぐったりと力無く横たわっていた。
「これは砂漠の熱にやられたな、しかし……」
ずいぶんとみずぼらしい格好をしている、
間違いなく砂漠を渡ろうとする装備ではない。
「ふむ、何かしらの訳有りだろうな……む?」
「……う……ううう……」
私の声が聞こえたのか、気を失っていた彼がうっすらと目を開く。
「大丈夫か、しっかりしろ?」
「……水……水を……」
よし、喋れる程度に意識があるならば何とかできるだろう。
「マミーよ、少し塩を混ぜた水と冷えた地下水で濡らした布、団扇も持ってきてやれ」
「はい〜、ただいま〜」
「後は涼しい地下室に彼を移して、一応治療の術が使える人を呼んでおいてくれ」
マミーたちに彼を介抱する為の指示を出す。
「ごめん……なさい……あの……僕……は……」
「……なに、気にするな、何も心配は要らないから、少し休むと良い」
申し訳なさそうにする彼の頭をそう言って撫でてやると、
彼は安心したのか、気持ち良さそうに目を細めてくれた。
幸いにも、発見が早かったのか彼の容態はそれほど深刻ではなく、
数日の療養ですぐに元気を取り戻してくれた。
「アヌビス様、お部屋のお掃除終わりました」
「よしよし、時間通りだな、ご苦労様」
彼には今、私の元でちょっとした雑用をしてもらっている。
容態が落ち着いたころに砂漠で行き倒れた理由を聞いたところ、
彼は奴隷商人から逃げ出して来た奴隷らしい。
人が人の売り買いをするなど、嘆かわしいばかりの話だが、
彼は売りに出される町に運ばれている途中、移送の商隊が魔物たちに襲われ、
その隙に逃げ出すことが出来たとのことだったので、
その奴隷商人たちも今頃は、
サソリ娘たちの尻にでも刺されてヒィヒィ言っていることだろう。
逃げ出せたは良いものの、やはり彼には行く所がないとのことだったので
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