見つめ合うと素直にお喋りしちゃう

「……なるほどなぁ、それはご苦労さんやねぇ、ほれ、茶ぁ入ったで」
「あ、これはどうも……ああ、美味しい……生き返りますね」
 差し出された暖かいお茶の、
 ほのかな甘みを感じる安らぐような風味にほっと息をつく。

「ありがとうございます、私のような何処の者とも知れない旅人にこんなに親切にして頂いて……」
「ああ、そういう堅苦しいのはええのええの、困った時はお互い様や」
 ……なんだか不思議な人だ、誰かの世話になるつもりは無かったのに、
 大きく、吸い込まれそうな瞳をスっと細めて見つめられると、
 引き込まれるというか、それを見つめ返すことで頭がいっぱいになって、
 見とれているうちに話が進み、一泊の恩にあずかることになってしまったのだ。

「こんな山奥まで歩いてくるんはしんどかったやろ、疲れもとらな魔物の村も探せへんよって、ああ、秘密なんやっけ?」
「ええ、探っていることを魔物に気取られないよう、秘密裏に……秘密……に?」
 私は……この辺りに魔物の集落ができたという噂を、確かめるように密命を受けて、
 それで、旅人のふりをして……私は、なんでこんなことを喋って……?

「ふふ、気にしちゃあかんよ、ほれ、うちの目ぇ、見てみ?」
「え……あ……ああ……あ……」
 目を見る……目を見る……
 吸い込まれる……引き込まれる……

「うちにはなんも隠せない、気にせず何でも喋るんや、それが当たり前や、せやろ?」
 隠せない……何でも喋る……
 気にしない……当たり前……

「お兄さんかかりやすくてええなあ、ほれほれ、じ〜〜〜〜〜〜っと、な〜んも気にしない、な〜んも気にしない」
 気にしない……目……綺麗……
 気に……しない……吸い込まれる……
 ああ……もっと……もっと……



「へぇ〜、じゃあお兄さんが魔物の報告を上げたり、帰ってこおへんかったりすると、討伐隊とやらがこっちくるんやね」
「ええ、そうです、噂が何かの間違いであってくれればいいのですが」
「ふふ、その噂、まいた甲斐があるなぁ、ええ男が来れば村の皆も喜ぶわぁ」
 なんだか、言ってはいけないことを言っている気がするし、
 おかしなことも言われている気がするけれど、
 でもそんなことは気にせずに、何にも考えずに喋ればいいんだ。

「せやせや、茶ぁ飲みながら喋くってるだけや、なんも気にせんでええんやで」
「そう……ですね……何でもないことを話しているだけ……気にしなくていい……」
「ホンマ、お兄さんはええ子やねぇ、ほい、おまけや、じ〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
 あああああ……綺麗……綺麗……
 目……好き……



「ふぃ〜、いいお湯だ、まさかお風呂までいただけるとは」
 安宿に素泊まる日々に、時には野宿もしてきた体には、湯の心地が染み入りすぎる。
 しかし、薪で沸かすような風呂ではなく、魔道具を使った自動式とは、
 こんな山奥の家には贅沢すぎるような……あ、気にしない、気にしないんだった。
 余計なことは考えず、久しぶりのお風呂を楽しもう。

「お邪魔しちゃうで〜、お湯加減のほうはどうや?」
「え? ……な、な、な、いけない! いけません! 女性が男に裸体をさらすなんて「じ〜〜〜〜〜」……あ……あ……?」
「な〜んもいけんくないよ、さ、背中流したるからこっち来ぃ?」
 いけなく、ない、背中を流してもらう、だけ。
 促されるままに体を預けつつも、なぜだろう?
 とても嬉しくて、でもとても恥ずかしくて、
 そしてやっぱり、とてもいけないことをしているような……

「ねぇ、うちの目ぇの事より恥ずかしいのが気になるん? 真面目さんなんやねぇ」
 ……目? 気にするって何のことだろう?
 こんなにも、ずっと見つめていたくなるたくさんの素敵な……

「ほんなら、もっとかけたろかな、ほれほれ、頭ん中ふわんふわんになぁ〜れ」
「かけるって? ……ぁ……ふゎ……ぁ……ぁ……」
 心が惚ける、何もわからなくなる。
 頭の中に、気持ち良くなるという指示が与えられて、それに逆らえない。
 ああ、もうどうでもいい、ずっと見ていたい。
 何もかもが、瞳に吸い込まれていく。

「そのまま気持ち良〜くとろけててええよ、うちの体で、よ〜く洗ったるからなぁ」
 抱きつかれて、柔らかい女性の肌をヌルヌルと擦り付けられる感覚が心地いい。
 石鹸とはどこか違うこのヌルヌルはなんだろう、とか。
 今は、背中を預けているのにどうやって目を見つめているのだろう、とか。
 そんな疑問が脳裏をよぎっても、
 ふわふわとした不思議な気持ち良さにかき消されていく。

「ふふふ、お兄さんのマラん棒もご立派様になってきたでぇ、な〜で、な〜で、く〜ちゅ、く〜ちゅ、もっと大きゅうな〜あれ」
「あ……あ……ぁぁぁ…………」
 やわやわゆっくりと
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