「この遺跡にも何にも無かったなあ、ええ、ロッコよぉ?」
「…………」
くたびれた様子の男が突き立てたスコップにあごを乗せながら、
地面に置かれた大きなバックパックに声をかける、返事は無い。
「そろそろお目当てさんを見つけるなり諦めるなりしてくれないと、お財布が軽くなっちまって仕方ないんですがねえ」
「……これは……やっぱり……」
バックパックの裏側から小さな声が漏れる。
そこには、少々ひねくれた目つきをしたちびっ娘が「おい、なんだとコラ」
……とても可愛らしい容姿をなされた美少女が小型の端末を操作しておられました。
「ちょっと聞いてるんですかねお嬢様! そろそろドロボウと間違われたくない一発逆転トレジャーハンターは諦めて、フォールアウトで堅実なスカベンジャー生活をですねって……おい、ロッコ?」
「やっぱりそうだよぅガディー、間違いないよぅ!」
やおら立ち上がり、ビシッとカッコいいポーズを決める少女。
なんだかんだで女性の美を誇る魔物娘の一種、
グレムリンである少女のポーズは中々に魅せられるものがあったが、
しかし悲しいかな、ちょっとばかりほど体がちっこかったため、
パックに隠れてしまい男からはグレムリンのケモ耳がちょこんと見えただけである。
ついでに、その胸は平坦であった。
ズキューン
「ビューティフォー……」
「お、おい、いきなり叫んだかと思えば、何もないところにビームを撃ったりしてどうしたんだ?」
「ビームは気にしなくていいよぅ、それより、あたしたちが探し求めるオートマトンちゃんがいつまでも見つからない理由が分かったんだよぅ!」
「な、なんだってー! ロッコ君、それは本当かい!?」
「エレメンタリー・マイ・ディア(初歩的なことだ、友よ)! 謎は全てとけた! 真実はいつも一つ! 次こそはオートマトンちゃんを思いっきり解析して、改造して、もうチキチキのアヒアヒにしちゃうという、あたしの夢を叶えるんだよぅ!」
「……ノってるところ悪いが、まずはその次の発掘費用を稼ぐところからだからな」
「……そこはガディーが、こんなこともあろうかと、なんて言いながら貯金とかへそくりとか、これでも売って足しにしろ的なアイテムとか出してくれたり」
「バカなこと言ってねぇで働け」
「……ブーブー」
「……周囲に男性の反応無し、レーダー範囲を通常モードに切り替えます」
今日もワタシ、リザーの白馬の王子さまは現れてくれませんでした。
でも、慌てることはありません。
なんといってもワタシはオートマトン、時間はいくらでもあるのですから。
いつの日かワタシを探しに来てくれた素敵な旦那様に精一杯のご奉仕をするのデス。
そう、ご奉仕しちゃうんデス。
朝のお早うございますから夜のお休みなさいまでご奉仕しちゃうんデス。
そうデス、お風呂でお背中流しちゃったり、お体をマッサージしてあげたり、
望まれるならベッドの中までお供して、ウフフ、ウフフフフフフフフフ……
おっといけない、少しCPUを冷却しましょう、ワタシはクールなオートマトン。
しかし、最近ワタシを探しに来る、あの二人組だけはいけない。
男性のほう、ガディー様については悪からず思うのですが、
あのロッコとかいうグレムリンと絡むと大変よろしくない。
あの二人についていった日には、きっとワタシも……
まあ、彼らの生体波長をレーダーが捉えれば、
すぐに別の遺跡にテレポートをしているので出会ってしまうことは無い……ッ!?
「イヤーッ!」「グワーッ!? な、何事デスか!?」
あ、危なかったデス。
突然に光線が飛んできてワタシの体をかすめていったのデス。
レーダーのかすかな揺らぎに気づけなければ直撃を受けていたところだったのデス。
「ドーモ、オートマトン=サン、ロッコです」
「ア、アイエエエ!? ロッコ!? ロッコナンデ!? うう……ド、ドーモ、ロッコ=サン、リザーデス」
あのひねくれ目、ケモミミ、平坦、間違いない!
くっ……レーダーに今もほとんど反応が無い。
どうやらステルスでも仕掛けてあるようデスね。
「リザーちゃんね、いつまでも見つからないと思ったらやっぱり逃げ回っていたんだね、前の遺跡でテレポートの残滓を見つけてもしやと思ったんだよぅ!」
むう、そこに気づくとは、ロッコの癖に生意気なのデス。
でも見つかったところでまた逃げるだけデス。
「緊急テレポート起動、座標軸の選定……」
「おっと、させないよぅ、壊れちゃえ!」
ッ!? エラー、座標軸を固定できません、エラー、拠点一覧を呼び出せません、エラー、空間安定装置に異常の形跡、エラーエラー、プログラムに予期せぬ障害がエラーエラーエラー、
「フフフ、テレポートなど
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