幸せふわふわピクニック

「いい天気だね〜」
「うん、いい天気だね〜」
 抜けるような青空、柔らかな日差し。
 今日はお姉ちゃんと、お気に入りの草原でピクニック。

「風が気持ちいい〜」
「うん、涼しいね〜」
 見渡す限りなにもない草原に吹く風は、
 草の葉をさあさあ鳴らしながら僕たちに吹き付ける。

「お日様ぽかぽか暖か〜い」
「ん〜、お日様も暖かいけど……」
 日差しが当たれば暖かい、風が吹けば涼しい。
 両方を楽しめる絶好のピクニック日和。
 でも、それよりも心地良いのは……

「けど〜? ど〜したの〜?」
「やっぱ、お姉ちゃんの方があったか〜い」 
 地面に敷き物を敷いて、そこで二人で座って、
 お姉ちゃんは後ろから僕をぎゅっと抱いていて、
 僕はお姉ちゃんに背中を預けている。
 
「んふふ〜、お姉ちゃんはあったかい〜?」
「うん、あったかくて、気持ちいい〜」
 ピクニックの時は、いつもこうして二人でぼ〜っとする。
 なにもしていなくても、お姉ちゃんと一緒にいるだけで幸せなんだ。

「可愛いこと言うんだから〜、この〜、ぎゅ〜」
「えへへ、もふもふ気持ちいい〜」
 お姉ちゃんはワーシープという羊さんの魔物で、体にはふかふかの毛が生えている。
 だから抱かれていると、それがふわふわ気持ち良くって、
 なんだか頭がぼ〜っとして、眠くなってきちゃうんだ。

「も〜、可愛い可愛い〜、なでなで〜」
「んにゅ〜……なでなでも〜、気持ちいい〜」
 頭をゆっくりと撫でられる。
 爪を軽く立てて髪を梳くように撫でてくれたり、
 そうして整った髪の流れに沿うように指を這わせたり、
 お姉ちゃんの手が頭を滑るたびに、何とも言えない心地良さが頭の中に流れてくる。

「お姉ちゃんね〜、こうしているだけで幸せ〜」
「うん……僕も〜……幸せ〜……」
 お姉ちゃんのふかふかの体をベッドにして、
 お姉ちゃんの柔らかなお胸を枕にして、
 やわやわふわふわに包まれながらずうっとぼ〜っとしている。
 とっても、幸せだ。

「な〜でな〜で……な〜でな〜で……」
「……ん…………ん…………」
 そうしていると、だんだんと眠くなってくる。
 お姉ちゃんの毛の、眠りの魔力だ。
 ゆっくりと、気持ち良く、トロリとした眠気が、
 僕の目蓋を次第に重くしていく……





「……な〜でな〜で……な〜でな〜で……」
「…………ん……ふわぁ……」
 不意に、あくびが出る。
 ああ、たぶん僕は寝ていたんだ。
 お姉ちゃんとくっついていると、ぼんやりして、
 いつ寝てしまったのか自分で分からなくなる。

「……あら〜、目、覚めた〜?」
「うん……おはよ、お姉ちゃん」
 寝ている間も、お姉ちゃんはずっと頭を撫でてくれていた。
 どのくらいそうしてくれていたのだろう、
 お腹がすいてきたから、たぶん今はお昼ごろかな。
 そんなことを考えたら、お腹がくぅ〜っと鳴ってしまった。

「あら〜、んふふ〜、ご飯にしましょうか〜?」
「む〜……うん、そうだね」
 お昼ご飯は嬉しいけれど、お腹の音を聞かれたのはちょっと恥ずかしい。
 けれど、持ってきたお弁当箱の包みを解いて、
 蓋を開けるころには、そんな恥ずかしさも忘れてしまう。

「さあ食べよ〜、いただきま〜す」
「いただきま〜す」
 今日のお昼は、レタスとチーズのサンドイッチだ。
 シャッキリとしたレタスに、チーズの塩味がとてもよく合う。

「美味しいね〜」
「うん、美味しい〜」
 二人でのんびりサンドイッチを食べる。
 お姉ちゃんの毛に包まれてぼんやりしている状態だと、
 なんとなく食べるペースも一緒になる。

「「あ〜む」」
 二人同時にサンドイッチにかぶりついて、
「「むぐむぐ」」
 同じペースでサンドイッチを味わって、
「「ごくん」」
 二人同時にそれを胃に送る。

「……食べるの、私に合わせなくてもいいんだよ〜?」
「ん〜? いいの、そうしたいだけだから」
 お姉ちゃんと一緒に食べるのも嬉しいから、
 急いで食べる必要なんてないんだ。
 サンドイッチは逃げないのだから。





「ぽかぽか〜……」
「ぬくぬく〜……」
 お昼ご飯を食べ終わった後も、
 お姉ちゃんと一緒にずっとぬくぬく日向ぼっこ。
 お姉ちゃんに抱かれながらお日様ぽかぽか。
 お姉ちゃんのふわふわが気持ち良くて、いつまでもこうして居たくなる。

「あったかくて〜……気持ちいい〜……」
「……うん……気持ちいい……」
 しばらくそうしていると、魔力の影響でまた頭がふんわりぼんやりしはじめる。
 たっぷりお昼寝をしたあとにお姉ちゃんの魔力を受けると、
 眠る直前のトロ〜っとした感じがずっと続いて、すっごく気持ちいい。

「……んふふ〜……」
「……ふにゅ〜……」
 ふわふわもこもこの体毛をすり
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