真夏の荒淫

 なだらかな田舎道をしばらく歩いたところにある山沿いの民家が、宮本一の自宅である。
 周囲には家屋が一軒もなく、田舎であることを考慮しても辺ぴな場所だ。
 彼の家は林業を営んでおり、いつかは家業を継ぐつもりらしい。

 夏の盛りなこともあり、陽射しがぎらぎらと私の肌を焼く。
 男であった頃ならば陽射しを気に留めることなどなかったのに、女とはこうも敏感なものか。
 未だ違和感には慣れておらず、一方で、この私の胎は狂おしく男を求めるほどに慣れてしまっている。
 すべてはあの日、あの女に出会ったから。

 ◆

 2年前、私が高校に入学した年の夏頃、暗い夜道を歩いていると、瞬きの間に、私の目の前に女が現れた。
 ただの女ではないことは明白だった。なぜなら、その女は角や尾が生えた異形の者だったからだ。
 そして、今でも目に焼き付いて離れないくらい扇情的な姿だった。

 私は目を離すことができず、女は蠱惑的な笑みを浮かべながら私に近づいてきた。
 そして一瞬の暗転の後、気づけば私はベッドのようなところで寝かされ、犯されていた。

 蕩けるような快楽の中で恐ろしさすら感じながらも、私は呻くことしかできなかった。
 恐ろしさは次第に、本当に体が溶けていくかのような多幸感へと変わり始め、私の意識は闇の中へと落ちていった。
 
 目が覚めたときには謎の女は影も形もなく、そこらじゅうに体液が飛び散り、なんともグロテスクな有り様だった。
 私は立ち上がろうとして、体を動かそうとした。すると、感じたのは肉体への違和だった。
 胸の辺りが重いような、下半身が軽いような、そんな違和感。
 事実、私の体には大きな乳房があり、ペニスは影も形もなく、変わりにあるのはヴァギナだった。

 部屋の隅にあった姿見で、私はすぐに自分の姿を確認した。
 柔和な印象を受ける顔立ち。肩ほどで切り揃えられた髪。豊満な乳房と尻は嫌でも目立つ。
 そして、彼女と同じ異形の証である角と尾が生えていた。
 人ではない、そして、いかにも魅惑的なエロスが漂う姿に、私は変貌していた。

 ◆

 宮本一は私の後輩であり、ボーイフレンドだ。
 歳に似合わぬ頑強な体つきをしていて、さながらガチムチと言ったところだろう。
 それでいながら、特に運動系部活動に所属する意思はないというのだから最初は驚いた。
 本人曰く、『体を鍛えることに興味があるのであって、スポーツそのものは好きではない』とのことらしい。 

 私が女になって間もない頃にふとしたきっかけで出会い、そこから交友を深め、気づいた時には懇ろな仲だった。
 家族にすら明かしていない私の本性は、彼とのセックスの中ですぐに知られてしまった。
 異形の存在を受け入れてなどくれるわけがないと悲嘆にくれかけていた私を、彼は受け入れてくれた。
 そこからは何の憂いもなく彼との交際を楽しんでいる。

 ◆

 引き戸を開け、家の中へと入り、彼の部屋の前まで着いた。
 ノックをしたが返答がなく、鍵が開いていたので中に入ると、彼はいなかった。
 どこにいるのか探した末、彼は床の間で寝ていた。
 恋人を自宅に招いておきながら惰眠を貪るとは、中々に暢気なものである。

 それにしても、彼から立ち上る男の匂いが凄まじい。
 夏の暑さは影にいてもそれほど変わらず、彼も寝汗をかいている。
 その汗や、彼の元々持つ体臭が混ざり合って、私の鼻腔を刺激する。
 あまりに甘美でエロチックなそれは、私を発情させるに十分で、思わず舌舐めずりするほどだ。
 他の女性がどうかは知らないが、私はいつもそうなってしまう。十中八九、私が異形の者であるせいだろうが。

 彼にそっと近づき、ズボンをゆっくりと下ろす。
 何の刺激も受けていないだらけ切った肉棒に舌を這わせ、時折、玉を軽く揉みほぐす。
 徐々に肉棒は硬くそそり立ち、男の頃の私であれば自信を失いそうなほどに長大になった。
 肉棒から香り立つ精の匂いは、私を軽く絶頂に至らしめるほどだ。

 「んふぅっ
hearts; じゅるるる……
hearts;」
 「うっ……平沢、先輩……?」

 思わず肉棒を頬張り、そのまま喉奥までくわえ込む。
 気持ちよくて、美味しくて、苦しくて、思わず我を忘れるほどに舐めしゃぶった。
 少し勢いがつきすぎたのか、彼が目を覚ましてしまった。

 「やあ、おはよう宮本君。ちょっと頂いているよ
hearts; んむっ
hearts;」
 「うあっ……それはいいんですけど、ちょっとここじゃあ……」

 どうやら彼はこの場での行為は望まないようだ。私としては早く彼の精を存分に堪能したいのだが、致し方あるまい。

 「では、君の部屋に行こうか」
 「あ、はい、わかりました」

 そう言って彼はズボンを履きなおして歩き
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