ルート2

「う…寝てた…夢…?」

 風が木々を吹き抜ける音で目を覚ます。
 身体がだるく、しばらくボーっとしていたが、今までの事を思い出してきて目を見開く。

「クーツィア!?」

 そして己の腕の中の少女を抱き起し必死で声を掛ける。
 深く眠ってしまったかの様に目を閉じている彼女…クーツィアを見て、大量の涙が溢れかえる。

「あぁ…そんな…そんなぁ……う"…うぁぁああーーーー!!あ"ぁ"あ"ぁ"ぁ"ーー!!」

 ニクスはクーツィアを抱きしめて泣いた。辺りも気にせず子供のように大声で泣きじゃくった。

「…そんなに抱き締められて泣かれると逝くに逝けないじゃないか…
#9829;」
「えっ!?えっ!?」

 突如目の前からそんな声がした。
 錯乱してニクスは必死に辺りを見渡すが、誰もいないのを見て半狂乱になる。腕の中の少女を守る様に、或(ある)いは宝でも護るかの様に強く抱き締めてあらゆる方向に首を動かした。

「ここだよ、全くどこを見てるのさ?」
「え…えぇ…?」

 右左と止めどなく動くニクスの頭を、腕の中の少女ががっちりと両手で頬を持って固定させた。
 ニクスは信じられないと言わんばかりに口を開けて放心する。

「なんて言えばいいのかな…。まずは…心配させてごめんね?」

 申し訳なさそうにだがしかし、嬉しそうに紫色の瞳をニクスに向けながら少女が謝った。
 しばらく二人の間で沈黙が流れる。

「クーツィア!!本当にクーツィア!!!」
「あん
#9829;そんなに泣きながら……少し恥ずかしいかな…///」

 ニクスの絶望しきった瞳に光が戻り、絶対に離さないと更に強く抱き締めまた啜(すす)り泣きを始めた。
 クーツィアはそれに対して恥ずかしそうに頬を紅潮させていたが、嫌がる様子もなく嬉々(きき)とした笑みを浮かべてニクスの黒い髪を撫でた。

「でも…嬉しいんだからいいけど、なんで死にそうだって言ってたのにその……元気なの??」
「ううん。残念ながらそうではないんだ。ほら…」

 そう言ってクーツィアは名残惜しげに抱擁(ほうよう)から抜けると、ニクスの手を取り己の左胸に押し当てた。そしてニクスは愕然とする。

「冷たい…心臓が…動いてない…」
「ドラゴンゾンビ…それが今のぼく…だと思う。」

 ニクスはクーツィアを見て気付いてしまった。美しく輝いていた桃色の瞳は、また違った美しさを放つ禍々しい紫色になっていることを。
 そして何より、出血こそしていないが全身に夥(おびただ)しく痛々しい生傷が露(あら)わになっている事を。
 ニクスの顔が明らかに引き攣(つ)る。しかも唯引き攣るだけでなく、クーツィアを傷つけられたことに対する怒りも帯びていた。
 それを感じ取りクーツィアは嬉しそうに微笑んではいるが、内心の翳(かげ)までは隠しきれていない。

「こんな身体だったの…?」
「痛々しいでしょ?今まで魔法で隠してたけどゾンビになったからかな?隠せなくなった。」
「それとさっきのドラゴンゾンビ『だと思う』って、何?」
「それ?それはね、普通ドラゴンゾンビは強烈な未練の果てに少なくても数年後に蘇るけど、ぼくはこうして蘇ってるでしょ?」

 そう言って全身の鱗を消してその場でくるりと回る。
 扇情的なむっちりした身体を彩る肌は、生気こそ感じさせないが綺麗な乳白色をしていた。ドラゴンゾンビの肌は通常、もっと不健康な緑掛かった青色をしている。

「確かに。」
「それで一つ仮説があって…確信に変えたいんだ。それじゃ失礼して…チュッ
#9829;」
「んん!?///」
「チュパッ…プッ…レロォレルッ
#9829;///」

 クーツィアはそう言うと徐(おもむろ)にニクスの唇を奪った。それだけではない。舌を器用に使って唇を抉(こ)じ開け、その中の舌を淫らに絡め舐(ねぶ)った。
 二人に脳を焼き尽くさん限りの快感が走る。

「ん…ぐ…ぷはっぁ…」

 突然ディープキスを止められてニクスは切なげな声が漏れる。
 半ば不服そうにクーツィアを見つめるが、その身体の変化に今日一番の驚きを受ける。
 痛々しい斬り傷がみるみる薄くなっていっているのだ。

「うん、やっぱりそうだ。ぼくがこんなに早く蘇ったのは君のお陰だね。」
「えぇ!?俺っ!?」
「そう、君は知っているかどうか知らないけど…魔物は魔王が代替わりした際の魔力の影響で変化した。人に『愛』を求める存在に。」

 そう説明を始めながらニクスに抱き付き、喰らいつく様にキスをした。

「ん…
#9829;…そしてその魔物は好いた人間相手の精を受ける事によって、爆発的に力を身に着ける。それは中途半端に影響を受けたぼくたちドラゴンも例外ではない…チュッ
#9829;」

 再度キスをして離す。ニクスはクーツィアの傷が治ってい
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