ルート1

「う…寝てた…夢…?」

 風が木々を吹き抜ける音で目を覚ます。
 身体がだるく、しばらくボーっとしていたが、今までの事を思い出してきて目を見開く。

「クーツィア!?」

 そして己の腕の中の少女を抱き起し必死で声を掛ける。
 深く眠ってしまったかの様に目を閉じている彼女…クーツィアを見て、大量の涙が溢れかえる。

「あぁ…そんな…そんなぁ……う"…うぁぁああーーーー!!あ"ぁ"あ"ぁ"ぁ"ーー!!」

 ニクスはクーツィアを抱きしめて泣いた。辺りも気にせず子供のように大声で泣きじゃくった。

「…そんなに抱き締められて泣かれると流石に恥ずかしいよ…。」
「えっ!?えっ!?」

 突如目の前からそんな声がした。
 錯乱してニクスは必死に辺りを見渡すが、誰もいないのを見て半狂乱になる。腕の中の少女を守る様に、或(ある)いは宝でも護るかの様に強く抱き締めてあらゆる方向に首を動かした。

「ここだよ、全くどこを見てるのさ?」
「え…えぇ…?」

 右左と止めどなく動くニクスの頭を、腕の中の少女ががっちりと両手で頬を持って固定させた。
 ニクスは信じられないと言わんばかりに口を開けて放心する。

「なんて言えばいいのかな…。まずは…心配させてごめんね?」

 申し訳なさそうに且(か)つ、バツが悪そうに桃色の瞳を背けながら少女が謝った。
 しばらく二人の間で沈黙が流れる。

「クーツィア!!本当にクーツィア!!!」
「ちょ、ちょっとそんな泣きながら……本当に恥ずかしいよ…///」

 ニクスの絶望しきった瞳に光が戻り、絶対に離さないと更に強く抱き締めまた啜(すす)り泣きを始めた。
 クーツィアはそれに対してひどく恥ずかしそうに頬を紅潮させていたが、本気で嫌がっている様子はない。寧(むし)ろ慈愛と嬉々(きき)とした笑みを浮かべてニクスの黒い髪を撫でた。

「でも…嬉しいんだからいいけど、なんで死にそうだって言ってたのにその……元気なの??」
「それはぼくですらわからないんだ。いや…なんとなくでしかわからないから確信に変えたい。」

 そう言ってクーツィアは名残惜しげに抱擁(ほうよう)から抜けると、魔力を纏わせたかのように全身が俄(にわ)かに発光する。すると出血こそしていないが、全身に夥(おびただ)しく痛々しい生傷が露わになった。
 ニクスの顔が明らかに引き攣(つ)る。しかし唯引き攣るだけでなく、クーツィアを傷つけられたことに対する怒りも帯びていた。

「こんな身体だったの…?」
「痛々しいでしょ?だから魔法で隠してた。それじゃちょっと失礼…チュッ
#9829;」
「んん!?///」
「チュパッ…プッ…レロォレルッ
#9829;///」

 クーツィアはそう言うと徐(おもむろ)にニクスの唇を奪った。それだけではない。舌を器用に使って唇を抉(こ)じ開け、その中の舌を淫(みだ)らに絡め舐(ねぶ)った。
 二人に脳を焼き尽くさん限りの快感が走る。

「ん…ぐ…ぷはっぁ…」

 突然ディープキスを止められてニクスは切なげな声が漏れる。
 半ば不服そうにクーツィアを見つめるが、その身体の変化に今日一番の驚きを受ける。
 痛々しい斬り傷がみるみる薄くなっていっているのだ。

「うん、やっぱりそうだ。ぼくが助かったのは君のお陰だね。」
「えぇ!?俺っ!?」
「そう、君は知っているかどうか知らないけど…魔物は魔王が代替わりした際の魔力の影響で変化した。人に『愛』を求める存在に。」

 そう説明を始めながらニクスに抱き付き、優しく唇を合わせた。

「ん…
#9829;…そしてその魔物は好いた人間相手の精を受ける事によって、爆発的に力を身に着ける。それは中途半端に影響を受けたぼくたちドラゴンも例外ではない…チュッ
#9829;」

 再度唇を合わせ離す。ニクスはクーツィアの傷が治っていくのを確認する。
 クーツィアは口にできた銀色の糸を弄(もてあそ)びながら告げる。

「簡単に言うよ?ニクスがぼくを愛してくれて、ぼくがニクスを愛することが出来たから、ぼくはぼく一人で治せなかった傷を治すことが出来た…命を取り留めることが出来たんだ…!」

 にっこり笑いと、そして桃色の瞳に涙を浮かばせてニクスの両手を取った。

「ぼくの命を救ってくれてありがとう…ニクス!」

 そしてどちらからともなく今日何度目かの抱擁をした。

「あ…ニクスこれまた…///」

 そう言ってクーツィアは突き飛ばす様にニクスを離す。その目線の先は、ニクスの股間だ。

「あ、愛し合う事で傷が治ると言うなら、い…今すぐしようか!///」

 ニクスは顔を真っ赤にしながらも、恥のついでと言わんばかりに開き直ってクーツィアを押し倒した。

「い、今すぐ!?大丈夫だよ!!もう命の危険はないから、そんな
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