「随分と遠くへやって来たな。私も頑張れば出来るではないか。ぐふふ…この調子でどんどん歩けば痩せれるかも。…そうすれば皆私を…ぐふふ…。」
と、気持ち悪い笑い方をして、不細工な男はズンズン歩いていた。
彼の名前は、ゲズ・デ=クゥズ。四兄妹の三番目で、それなりに名のある貴族の出である。
そんなゲズは今旅をしている。理由は二人の兄と、更に使用人からのいじめが原因だった。
兄妹の中で唯一容姿に恵まれなければ太っているのが原因の一つであり、いじめのことを両親に言っても、「心を鍛えなさい」と言われただけであった為に怒り、家出したのだった。
(父上共め…すぐに根を上げて戻ってくるだろうという顔を…思い出しただけでも腹立たしい!!)
そんなこんな反発心から三ヶ月も旅を続けていた。
ゲズは怒気を孕みながら山道を歩いていると、先の長そうな森の中まで来ていた。
「もしやこれか?『魔花の森』って。」
最後に寄った村の者たちが忠告してきた言葉が頭を横切る。「『魔花の森』には決して入るな、喰われるぞ。」と。
「ふん、構うものか。私を食せるものならば、食してみよ。」
森に向かってそう吐き捨てると、森の中に入って行くのだった。
「あ〜、森キチ〜!」
汗を拭い弱音を吐きつつもロングソードの血を荒布で拭いて仕舞う。そして絶命した2mはある大猪を縄で縛った。
「まさか先生から教わった獣肉の扱い方が役立つとは、人生分からんな…それにしても、先生はいい女だったよなぁ〜。顔も整っていて乳もデカかったもんなぁ…ぐふっ!///」
手頃な木に猪を吊るしながら、ゲズは自身に剣の手解きや生きる術を教えた女性を思い出して、気持ち悪い笑みを浮かべた。
「ふん、何が魔花の森だ。出たのはクソデカい猪だけではないか。…ん?」
猪を吊るし終えて汗を綺麗な綿布で拭いていると、何処からか芳醇な甘い香りが、風と共に流れてきた。
(…何だ?もしやこの匂いの先に食すことの出来る果実でもあるのか?)
そう思った瞬間、足が止まらない。ゲズはとりあえず剣を引き抜き辺りを警戒しながら匂いを辿る。そしてしばらく歩いて目の前から声が聞こえた為、慌てて止まると木の陰に隠れた。
「ん…ふ…あぁ
#9829;」
(この声は…お、女…か??)
ゲズは木の陰から木の陰へと移動し、声の方へと近づく。そして目を凝らしてみると、丁度蔭っていた月が現れて辺りを淡く照らした。
ゲズの目の前に、オレンジ色の大きな百合の様な花が照らし出された。
その花弁の中の女性二人も。
「ふふ…相変わらず可愛い声だ…オレ、もっといじめたくなっちゃうよ…
#9829;」
「あぁん…
#9829;そんな触り方じゃダメ…もっと大胆にして…お願い
#9829;」
月明かりに馴染む透き通るような金色にも似たオレンジ色の髪をした、極上の女たちだった。しかしすぐに異変に気付く。女の肌の色は、柔らかな若葉色をしていたのだ。
「あっ
#9829;あぁっ
#9829;気持ちいいよぉメユ
#9829;メユの…メユのあそこにも…
#9829;///」
「んんっ
#9829;シユの指…相変わらず気持ちいい
#9829;」
「「あぁ、イクッ
#9829;
#9829;」」
二人は股に指を入れ抱き合ったままブルリと左右対称に身を震わせた。朧気な月に晒されたその姿は、一種の芸術の様にも見えた。
二人は向かい合って見つめ合うと、不思議な唄を交互に唄い始めた。
「今宵の月は、まだ蔭る。」
「今宵も彼の者に出会い敵わず。」
「あたしたちに春は来るのでしょうか?」
「オレたちに春はあるのでしょうか?」
「このまま慰め合うのでしょうか?」
「このまま絡め合うだけなのでしょうか?」
「叶うのならば、熱が欲しい…」
「叶うのならば、愛が欲しい…」
「「この身を熟す、者が欲しい。」」
二人が手を重ねて綺麗にハモると唄は止み、蟲の音のみが聞こえる夜に満ちた。
「…あら?お客さん?」
「あぁ、お客人の様だね。」
「なにぃっ!?」
ゲズが目を離せないでいると、女たちが不意に隠れているはずのこちらを向いて来たので驚愕した。
「何故私がいる事に気付いた!?」
「えぇ!?何故ってぇ?
#9829;」
「ふっ…何故と言われても、そうも大胆にオレたちの前に現れたら気付くさ。」
「えっ…なっ!!?」
女たちはさぞ可笑しそうに笑い、ゲズは戦慄する。木の陰から伺っていたはずなのに、木から大きく外れて花の数メートル前にまで己が、無意識に近づいていた事に。
「ふふ♪気付かない程にあたしたちを求めちゃうなんて、お兄さん可愛い
#9829;あたしシユ!ねぇ、あなたお名前は?///」
「あ、どうもゲズです。…って違うわっ!!貴様ら
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