「ようこそいらっしゃいました!ここはドラゴニア観光案内所です!改めて紹介させて下さい!ワイバーンのパフィティです!」
快活に話す若葉色の鱗の金髪黄色目のワイバーン、パフィティは二人に向けて手を差し出して来た。
少々圧倒されつつも手を差し出せば、ブンブンと豪快な握手をされる。
「早速ガイドをお願いしたいのですが…えっと、二人で。」
「お二人様ですね!つかぬ事をお聞きいたしますが、お二人は番い…夫婦ですか?」
「えぇ、そうだよ。」
「やっぱり!ということは新婚旅行ですか
#8265;いいですね〜
#9825;私もつい先日ダーリンができて家で毎日…
#9825;っと、話が逸れてしまいました!お二人のような新婚さんには、ガイドが一日付き添い絶景スポットからお土産屋さん、女王様のお城やご宿泊の旅館などを一日掛けて案内する一日コースがおすすめですが、いかがでしょうか?」
「ん〜、それじゃあ一日コースで!」
「はーい!それではこちらの書類にサインをお願いします!…はい!では早速ガイドを…と思うのですが、お二人はドラゴンの…それもとても仲の良い夫婦と見立ててお願いがあるのですが…」
ここまで勢い良かったパフィティが、指先をちょんちょんしながらバツが悪そうな愛想笑いでお願いをしてくる。
「叶えられる範囲であれば…。」とニクスが申し出れば、パフィティはぱぁっと笑顔を輝かせた。
「ありがとうございます。おーい、フランネルちゃーん!」
「はい、なんですか先輩?」
パフィティが案内所の奥に向けて手招きしするとここへ、青みがかった黒い鱗の特徴的な、黒髪と蒼眼のドラゴンがやって来た。
「こちら、新米ガイドのフランネルちゃんです!実は今回が初仕事!お二人にこの子をお付けしたいのです。」
「わ、私がガイドを…
#8265;」
「ぼくはいいですよ。」
「うん、俺もフランネルさんで大丈夫ですよ。」
「ありがとうございます!それではフランネルちゃん、素敵なガイドよろしく♪お二人にも良いドラゴニアの旅を〜♪」
そう言って書類をフランネルに押し付けると、パフィティは足早に案内所の奥へと消えた。
「…任されてしまっては仕方ありません。改めてパフィティからご紹介預かりました、フランネルです。この度はドラゴニア観光案内所をご利用ありがとうございます。早速ですがこのドラゴニアを満喫できるようご案内致します。」
少々不服そうに切れ長の目を細めて書類を片付けると、艷やかな長い黒髪を揺らしガイドブックらしき本を開いて案内を始めた。
「ここが竜翼通りです。我らが女王陛下がいらっしゃる頂上の城へと続くメインストリートです。」
「おお…!」
「す、すごい…」
目の前に見えるのはなだらかで途轍もなく続く坂道。そして何より竜姿のワイバーンが五人同時に並走出来そうな程に道幅が余りにも広い。
その両脇から道の端の至る所に店が開かれており、この栄え多くの魔物と人が行きかう道がドラゴニアの一部に過ぎない事に二人は言葉を失う。
「この通りで揃わぬモノはないと言われておりますので、時間のある時にでもどうぞ。」
「え?」
本を片手に事務的に淡々と通りについて説明すると、フランネルは次の場所へと移動しようとした。
「待って!初仕事だったよね?緊張しなくていいよ。」
それを止めたのはクーツィアだった。
腕を掴まれて止められたフランネルは、バツが悪そうに顔を曇らせて俯く。
「…すみません。人間の男をガイドするのでしたら多少自身はありましたが、伴侶のある…それも旅行に来た同族となると…」
そう口籠るフランネルに、クーツィアがそっと手の甲に手を重ねた。
「最初から上手くできる人なんていないよ。どうしても堅苦しくなっちゃうっていうなら、ぼくたちのことを友達だと思って!」
「友…達…?」
「そう!自分が楽しい…友達と共有したいところへ案内してくれればいいよ!」
クーツィアに言われたフランネルは、青天の霹靂とばかりに大げさにたじろいて目を丸くする。
そして一つ咳払いすると口を開いた。
「…なら…、無理にかしこまる必要もない…のか?」
「自然が一番だよフランネルさん。さぁ、どこへ連れてってくれるの?」
「そ、そうだな!なら私お気に入りの場所に連れて行ってやる!こい
#8252;」
フランネルの硬い事務的な態度が一変、本を閉じて仕舞うと砕けた口調で案内を始めた。
表情も仏頂面でない高貴さを感じさせる笑顔から、接し易い雰囲気となる。
(それにしても友達…か。)
歩きながらニクスは、楽しげに話し始めた二竜を見つめてしみじみと思い耽る。
ニクスの目線の先には、クーツィアの尻尾が嬉しそうにブンブン揺れていた。
現在のクーツィアに友達がいない訳ではない
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