15歳 砂漠

 メリルの死からまた一年。未だに彼女の姉には会えずにいた。俺のいた地方は全て周り、次は砂漠を越える事にした。

 とにかくあっついのなんのって、もぉーたまったもんじゃねぇっすよ。ほんと。
 最悪なのが泣きっ面に蜂というか何というか。水が切れてきた。干涸らびる、ほんとに干涸らびる。水を探さないと。でもその前にどっかで休みたいし。

 この砂漠に入って早三日。魔物にも出会わなければ、水にも出会わない。昼は暑いし、夜は寒いし。なんなんだここっ!

 と、向こうの方に影を見つけた。やった。休めるっ!

 俺は小走りでその影のある場所まで行ってみた。が、近づくと消えてしまった。

(蜃気楼…か…)

 俺は半ば諦めつつもその場所に辿り着いた。すると今立っている場所から砂の山を下ったところに遺跡が見えた。

「はぁ…やった…」

 俺は砂の山を滑り降り、遺跡の入り口に立った。中からひんやりとした空気が流れてくる。俺はその中に入って身体を休めた。中の床にも砂がつもり、風に吹かれさらさらと動いている。

(…やっぱり喉が渇くな…)

 身体の火照りは無くなったが、喉の渇きは潤されない。俺はどうするべきか困っていた。

 ポチャン…

(…っ!)

 まるで癒しの鐘の音の様に聞こえた。水だ、水がある。

 俺は明かりを付けてがむしゃらに置くまで走ると、階段を下りて辿り着いた先には水がたまっていた。

「水だ…」

 俺は溜まっていた水を無我夢中で飲んだ。

「ぷはっ…はぁ…はぁ…助かった…」

 ガラッ―

 物音に振り向くと階段の上からマミーが押し寄せた。よく見れば辺りには水がしたたり落ちているような場所はない。つまり、俺はハマったんだ。

「やっべ…」

 俺は幾つかある通路の一つに逃げ込んだ。

 通路は人が一人余裕で通れるが、それほど幅が広いわけではなかった。後ろからマミーの声がする。ゆっくりだが追ってきてる。

 暫くすると分かれ道があった。左右中央に通路が続き、どの道を選ぶかで命運が決まる。しかし、ゆっくり選んでいる暇はなかった。
 後ろからはマミーが追ってきている。そして今見えた。俺の見間違いでなければ、中央と左の通路からマミーが迫ってきている。道は選ばれた。

 マミーには気絶させる技はさほど効かないだろう。戦うとなると数が多い分かなり不利だ。

 俺は広い部屋に辿り着いた。そこに通路は無く、行き止まりだった。マミーはもうすぐそこまで来ている。俺は何とか時間稼ぎしようと入り口付近で、マミーを迎え撃つことにした。

(マミーはたしか包帯を取ってしまえば無力化できたはずだ…)

 通路が狭く、前の何人かを動かなくしてしまえばしばらくは障害になってくれるはずだ。俺は明かりの松明を床に立て、カタールを抜き左手には砂を握りしめた。

 マミーが俺の間合いに入った。俺は近づいてきたマミーの包帯を切り裂き、その敏感な肌を露わにさせた。
 身体には傷は付いてないので、包帯だけを旨く切り裂けたようだ。その露わになった上半身、主に胸に砂を投げ掛けた。

「ひゃあんっ!」

 喘ぎ声を上げて彼女はそこに蹲った。ブルブルと震えている。作戦は成功のようだ。
 俺はもう数体に同じ事をした。予想通り動けないようだ。

 その間に部屋から抜けられる場所はないものかと探すことにした。部屋の広さ、奥行きは20メートル、横は30メートルで天井はかなり高い。

 俺は壁際を一周歩いてみることにした。亀裂はあるものの、どれも浅く表面的なものだと分かる。
 俺は考え込んでしまった。この部屋に出口が一つだとすれば、これは困ったことになる。
 俺の長い髪が風になびいた。

 …ん、ちょっと待てよ、何で風が吹いてるんだ? ここは遺跡の奥の方だ。外から風が入ってくるわけがない、第一大勢のマミーが入り口を塞いでいるのに。

 風の吹いてくる方向を確かめた。

(入り口からじゃない…)

 部屋に入って左側の壁、今俺が風を感じたところの近くだ。その内の亀裂の一つから吹いてくる。

(こいつは、よく見れば砂がつもって壁の亀裂を塞いでいるんじゃないか…)

 俺はその壁にカタールを突き立てた。三回突けば貫通する厚さの壁、その向こうから風が吹いてくる。俺は急いで俺が通れるように高めの場所に穴をあけた。
 振り向くと動けずにいたマミーが立ち上がり、俺に少し怒った様にふくれた顔を向けた。

 入ってくる入ってくる、可愛い顔したこわーい姉ちゃんたちがぞろぞろ。

 俺は明かりを穴の中に投げ入れ、壁を駆け上がって穴に手を掛けてその向こうに降り立った。

 壁の向こうは人が通れるほどの通路がある。奥に進むと左右に道が分かれていた。火が右へ揺れる。俺は左の道へ進んだ。

 その先もまた分かれ道が続き、
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