数日前、俺の両親が死んだ。原因は流行病だった。
「あの子、他に身寄りがないんだそうよ」
「可哀想ね、これからどうするのかしら」
道ばたのおばさん達が俺の方を見て話してる。どうせ話すんなら聞こえないように話してくれればいいのに。
(ま、いいさ。俺は明日には出ていくんだから…)
俺は今買い物の帰りだ。買ってきたのは傷薬や、旅用のマント、それから保存魔法のかけられた食料。これだけ見れば分かるだろう、そう、俺は明日の朝この村を発つ。
俺は今日すでに売り払った自分の家に帰ると、身の回りの必要な物だけをまとめ、荷造りを済ませた。
この家は長く暮らしていたが、その割には小綺麗で壁にはヒビ一つ無かった。この村の村長にこの村を出る事を言うと、村長は残った家を彼が買い取り、移住してきた者にまた売るので、と昨日旅には十分な金額で買い取ってくれた。
旅に出る時というのは普通は名残惜しいものみたいだけど、俺にとってはそんなことはなかった。村の殆どの奴は俺を気味悪がっている。
俺の名前「ワイト」は両親が俺がまだお袋の腹の中にいる時から決めた名前だ。だが生まれてきた俺は、その名前に少し沿うような姿で生まれてきた。俺の髪の毛は「生まれながらの銀髪、生まれながらの紅い瞳」。
銀髪の髪の毛はこの世界ではいてもおかしくない髪の色だ、けれどもそれは遺伝ならの話。俺の両親は母親は黒髪、父親は赤みがかった茶色、常識では絶対に銀髪が生まれることはないのである。
そして赤い目はサキュバスやヴァンパイアの目の色。故に周りの友達からも影では忌み嫌われていた。ただ、両親と家族以外ではこの村の村長だけは俺のことを嫌わないでくれていた。
ある時、その村長がケンタウロスの博士を喚び、俺の身体を調べさせた。
−−−−−−−−−−
「この子がそうですじゃ」
幼い俺の前には金髪のケンタウロスが堂々と立っていた。彼女は俺を見つめるなり、少し驚いたように
「…確かに銀髪、赤目…普通とは思えないな。それに」
と言った。彼女にもすぐには原因が分からなくてもおかしくは無かった。
だがその後の言葉が思いもしないものだった。
「それに、なんです?」
「この子から『魔力』を感じる…」
「なんですと!?」
人間から魔力を感じる。本来あり得ないことだ。人間と魔物は同じようなエネルギーを持っている。人間の男が作り出すものを『精』、魔物が持つものが『魔力』とされ、互いに+−の存在だ。人間は本来+のエネルギー『精』しか持っていないはずである。
「だがこの子からは魔力だけでなく精、いや、失礼した。陽の魔力も感じる。このこの中には陽と陰の魔力が混在している」
村長も、黙って聞いていた俺の両親も驚きの色を隠せなかった。彼女は尚かつ、その量も半端ではないことを告げた。
彼女の推測では、何かが原因で母胎に魔王の魔力が流れ込み、身体に影響することなく胎児だった俺の身体に流れ込んだのではないかという。
俺は幼い頃から力が強く、それは魔力を無意識に使い筋力を強化した結果だという。
俺は旅に出ることの強みとしてそれを捉えた。人間として生まれ、魔力を携えたことには何ら悩んだことはない。
−−−−−−−−−−
俺はベッドに横になり、そのまま寝てしまった。
翌朝、目を覚ました俺は荷物を持って村を出た。当たりにはうっすらと霞がかかり、日はまだその光をわずかにしか地に届かせていなかった。
旅には特に目的はなかった、ただ、村を出て世界を回りたいと思っただけだった。だがその為には最初に向かわなければならない場所がある。そう思い、今はそこを目指すことにした。
次の日、森の近くを歩いていた。森まで手の届くほど近い道だ。魔物が出てきてもおかしくないな、と思っていた矢先だった。
森の中から何かが飛んできた。俺は荷物を放り投げ避けようとしたが、それは俺の右腕に絡み付いた。白い粘着性のある糸。
「あらあら、ちゃんと狙ったのにねぇ…よく反応したじゃないかっ!」
女の声、森の中から姿を現したのはアラクネだった。あいつに捕まると厄介なことぐらい俺にも分かっている。
「坊や、大人しくおし」
おいおい、全く。初っぱなの相手がこんな厄介な魔物とはねぇ…ま、観念なんてしないけど。
「嫌だって言ったら?」
「ぐるぐる巻きにしてやるよっ―」
アラクネはその八本の足で飛び上がると俺目掛けて…というより俺を逃げられなくするために俺の付近に糸を乱射した。
俺は思いきり前に飛んで、糸を回避した。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
私の目の前に活きのいい男がいる。まだ子供だけどそんなものは
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