共に行く者

 太陽はまだ東の空にあった。しかし、四人は既に行動を開始していた。
 追撃部隊のために彼らはコースを大きく迂回し、一度はその岩柱地帯を抜けた。
 だが既に騎馬隊が自分たちを追跡していることが分かった今、わざわざ動きにくい山岳部のルートを行くことはないと、ベリオン含め、以下三人も賛同の末、高低差の多い山岳部を避け迂回したルートのまま岩柱地帯沿いを平坦な所まで進み、元の川沿いの道へ戻ることにした。

 足場が不安定ではなくなったため、ペースが速くなった。元々岩柱地帯を進むことは敵の目を出来るだけ避けて通れるという『一時凌ぎ』に過ぎず、既に騎馬隊がその岩柱地帯に潜伏していることが発覚した今、当初の利は『いつどこから奇襲を掛けてくるか分からない』という不利に変わったのである。

「ねぇ、ミリィ。このまま行っても間に合うの〜?」
「ん?…ああ、そうだな…シアとリアには明日ヒルデ川中流で落ち合うことになっているから、明日中に着ければ問題ないはずだ」
「だが、出来るだけ急がないといけない。あの二人がいくらブラックハーピーだからといって、ずっと飛んでいられる訳じゃない。
 もし俺たちが遅すぎれば、いくら明日中だからと言っても彼女たちの見つける危険が高まる」
「ああ。あの二人を危険に晒すわけには行かないぜ」
「三人とも、もう少しペースを上げよう」

 四人はそこから小走り状態で進んでいった。道が平坦なので進みやすい。
 十分ぐらい進んで一分休憩を挟みまた十分走る、このペースで約一時間進んだ。
「みんな、まだいけるか?」
「うん、余裕〜♪」
「俺もだ」
「私も問題ない」
「よし、行くぞ」
 ジャンとメグは先に走り出した。「ベリオン…」ベリオンも走り出そうとした時、ミリアリアが呼び止めた。
「なんだ?」
「…気付いているか?」
 ミリアリアは後ろを示すように目を動かした。
「ああ、結構前からだな。今のところは襲ってくる気配はない、ここで俺たちから戦闘を仕掛けて時間を食う必要もないだろう」
「…確かにそうだな」
 二人はそう言ってジャンとメグの後を追った。そして、その後ろから軽装備の騎士らしき者達が数名そのあと追った。

 日はいつの間にか頭上に昇り、未だに山岳部の岩肌が自分たちの右側にそびえ連なっている。
 だがもう一時間もすれば、ヒルデ川沿いの道に入ることが出来そうだった。気がかりなのは追ってきている連中のことだったが、まだ襲ってくる気配はない。
「…奴らどういうつもりなのだろう…?」
「襲ってくる気配なしか…アジトまで尾行する気か、それとも機会を見計らっているのか…」
「向こうは私とベルが気付いていることに勘付いているのか?」
「さぁな、だがどちらにしても気を張らなければな」
 と話ながら走っていると、やがて岩肌の傾斜が緩くなってきた。
「よし…今からこの坂を登って、川沿いの道へ移る。あとは当初の通りだ」
「分かった」
 ジャンとメグが坂を上り始めた。
「ベル、奴らは…?」
「いや、動く気配はないな…」
 奴らは一体何を考えているのか、二人には分からなかった。
(奴らは本当にアジトまで付けてくる気か?…それとも、機会を待っているのか?だとしたらいつがその『機会』なんだ…?)
 ベリオンは頭の中で考錯していた。どのタイミングでこちらから攻撃していいものか、そして相手は何者なのか。
 高い高い坂の上。息を切らせて登った上から見えたのは、昨日まで歩いていた山岳地帯と、そのほぼ中央を流れる川だった。ただその川の流れるところが高いため、川までの坂の高さは登ってきた方の三分の一程度だった。

 坂を下り、川沿いの道を行く一行だったが、やはりベリオンとミリアリアは後ろから付けてくる五人が気になっていた。
 ここまで三時間近く付けてきているのだから、その正確な人数が分かってもおかしくはなかった。
 ヒルダ川は、バギドナ岩柱地帯の約十キロ地点から始まり、その谷となったほぼ中央を流れ、岩柱地帯の二百キロ地点で西へとカーブしていた。
 今一行がいるのは199キロ地点、つまり、もう少しすれば川が曲がって四人は西に曲がることになるのだ。
 その先は草原地帯が広がり、街や村がいくつも点在していた。川はその草原地帯を北上し、やがて海へと流れ込んでいる。
「もうちょっとで草原地帯か…」
「そだね〜、明日のお昼までにはシア達と会えるね」
 ジャンとメグは待ちに待ったように言った。二人は全く奴らに気付いていない。
「…ああ、そうだな」
「ほら、見えてきたぞ」
 川が向こうの方で左に曲がっていくのが見える。
「…ベル、奴らはまだ…?」
「ああ、だが仕掛けてくるならこの辺りだ…気を付けろ」
「どうしたんだよ、二人ともー!早く来ないと置いてくぞぉ」
「ああ、わかった」
 ベルは何だかあ
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