宝物は

 俺は今倉庫の中にいた。

 ここにはダンジョンから取ってきた(盗ってきた?)お宝達が眠っている。俺の場合、宝箱ごと持ってくるので売り払ったりしてもまだダンジョン数カ所分の宝箱がまだここに収められている。

 俺は親魔物領であるカーランス領の西の町に住んでいる。俺は昔から親父には内緒でその親父の後をつけて何度もダンジョンに忍び込んでいる。だから罠の解き方、魔物との戦い方はよく分かっている。そして俺は今ダンジョン攻略とギルドを生業にして財を成している。
 なので俺は結構いい生活をしている。

 俺は久しぶりに倉庫の整理でもしようと思ってここにいる。まだ中身を全て確認していない宝箱もまだまだあるので、それも幾つかついでに開けてしまおうと考えていた。
「あれ、この箱…」
 俺はミミック対策として、宝箱を開ける時は床や壁に向けて宝箱を開けている。そうすると、飛び出してきたミミックは壁や床に激突して俺を驚かすどころか、むしろ驚いてしまうのだ。
 もちろん魔物が嫌いなわけでもなく、ただ襲われないための用心というだけだ。怪我をさせれば手当てもして帰す。

 そうして安全?を確認した宝箱には全て目印を付けている。だが、今俺が凝視している箱にはパッと見て目印がない。
 念のために箱をクルクルと回してみたり、箱の下を覗いてみたりしたが目印はどこにもなかった。
「…これは…」
 ミミックだね、これは。こんな所に紛れ込んじゃって。俺はたまたま持っていた鍵を鍵穴に差し込んだ。
「きゃわっ!」
 そのとたん宝箱の中から勢いよく女の子が飛び出して…いや、放り出されてきた。
「やっぱり…」
「ぁ…ぁぁ…」
 俺の前に転がっている彼女は水色の髪の毛で、ミミックによく見るツインテールだ。透けた服にリボンの付いた露出の多い格好。
 ん?…よく見ると…めちゃくちゃ好みなんですけどっ。
「な、なんでぇ…?!」
 ばれたのが不思議みたい。ま、ごく簡単な理由ですけどね。
「俺って、持って帰ってきた宝箱には全部目印を付けてるんだよねぇ」
「そんなぁ…」
 彼女は女の子座りで項垂れている。
「まぁまぁ、お茶でも飲んでく?」
「…ふぇっ?…追い返したりとかしないんですか?」
「だって追い返す理由がないしぃ…」
 俺は彼女の前にひょいと屈んだ。
「それに、君タイプなんだよねぇ。ここってさ、ほら、親魔物領だしねぇ、追い返すなんて損でしょうよ?」
「え…その…あのぅ…」
 見るからにうろたえてるよねぇ。ま、当然ちゃ当然か。
「ま、家に入りなよ。俺は女の子を倉庫に放っておく趣味はないんだ」

 俺は彼女を家に入れた。彼女はきょろきょろしてるし、かなりの挙動不審。まぁ、しょうがないんだけどねぇ。
「はい、お茶でよかったかなぁ?」
「…あ、はい…ありがとうございます…」
 言葉遣いは丁寧だなぁ、ミミックって割と子供っぽい口調が多いんだけど。
「お、大きなお家ですね…」
「まぁね、俺の親父も冒険家だったし、俺も割とこういう仕事で稼いでるからね〜。結構いい暮らししてるんだよ」
「へぇ…」
「あ、君名前は?」
「ユラン…です」
「ユランね。俺はニコル、ニコル・フランツェ。よろしくね」
「あ…はい」
 ん〜、見れば見るほど俺好み♪ミミックって魔物は箱に入ってると結構厄介なんだけど、出しちゃえば普通の女の子みたいなんだよねぇ。
「…あのっ」
 ユランが思い切ったように俺に声を掛けた。
「なに?」
「あの、何を企んでるのっ?!」
 おっとぉ、さっきから難しい顔してると思ったらそういうことか。
「はい?…そうだねぇ、企んでるとするなら……」
「…ぅぅ…」
「この家に置いちゃおっかなぁ〜とか考えてるけど?」
「えぇっ?!」
 嫌がるっつーか、意外っていう感じ。
「ほら〜、俺ってこの家に一人な訳よ。で、家事とかも大変だし、掃除なんてやる気なくなっちゃうのね。それで、ものは相談なんだけど、この家にいて俺の手伝いをしてもらえないかな?」
「お手伝い…ですか?」
「そ、お手伝い。いやかな?」
「嫌じゃないです…けど…」
「じゃ、決まりね。君の部屋用意するから、ちょっと綺麗にしてくるね」

 使っていなかっただけに埃だらけだ。家具はなくて、12畳くらいの只っ広い部屋。俺は持ってきたモップと雑巾とバケツを床に置いて袖捲りをした。
「さてと…」
 俺はモップを水につけて搾って、部屋の隅の方からモップを掛けていった。すると部屋の入り口にユランが立っていた。
「手伝うこと…ない?」
 まるで初めて会う大人を見て恥ずかしがる子供のように、彼女は入り口から上半身を少しだけ出してこっちを見つめていた。
「そうだな…じゃあ、そこの雑巾で壁と窓枠を拭いて」
「…はい」
 彼女は嬉しそうに微笑みを浮かべた。ユランは以外と掃除が上手で、
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