「さぁ、フリートッ!貴様に妹が倒せるのか!?」
ローラの形をした人形は拳を振りかぶった。
「………違う、違う…ローラは、三年前に死んだっ!」
フリートは彼女の攻撃を受け止め蹴り飛ばした。彼女は後方転回で体勢を立て直し前方に跳躍して回転蹴りを繰り出す。
フリートは攻撃を見切り反撃しようとした、だがハーロックの罠は確実に効果を見せた。フリートは明らかに躊躇した、頭では分かっていても今目の前にいるのは紛うこと無いローラなんだ。
だがローラは躊躇うことなくフリートを殴り飛ばした。
「ぐあっ―」
フリートは殴り飛ばされ床に転げた。
「オ兄チャンッ…!」
今俺は分かった。彼女にはまだ意識がある。微かかもしれない、はっきりとかもしれない、だが彼女は意識を持っていた。だからこそあんな悲しそうな声で叫んだ。
奴は、ハーロックは実験は成功したと言った。だがその実験の目的は『人を魔導人形に変える』事ではなく『人の体を魔導人形に変える』ことじゃないのか?だから彼女の意志は残っている。だが体は意志に反して攻撃し続けるんだろう。
「オ兄チャン…倒シテ…」
だとしたら、まだ12歳の少女にとってこれ以上に酷なことがあるのだろうか…愛する兄を体が勝手に殺そうとする。兄は妹に攻撃をすることが出来ない。
ローラはフリートに殴りかかった。ブレードで間一髪でガードしたが、ピンチに変わりはなかった。
銃声が響いてローラの腕がブレードから反れ、フリートは危機から脱した。俺はローラとフリートの間に立ちふさがった。俺は右手に自分の上半身ほどの長さをもつ『バンデッド』を持って彼女に向けていた。
「…ジェスター…」
「彼女は俺が殺る…お前じゃあ、絶対に倒せない。それどころかお前がやられるだろ?」
俺はハーロックとフリートの気に飲まれて何も出来なかった。だからここじゃ黙ってるわけにゃいかねぇのよ…
「すまない…」
フリートは奥へ逃げていったハーロックを追って消えた。
「さて、と…ローラちゃん、意識はあるのかい?」
「ハイ…少シ薄レテルケド…」
「俺はジェスター、フリートの友達だ…。ごめんな、今から君を倒すよ」
「…オ願イ…シマス」
俺はとてもやるせない気持ちになった。だがもし彼女がそれを望み、それ以外に方法がないのだとするなら、俺は二人のために出来ることをしたいと思った。
普段は女遊びばっかの俺にも、ちゃんとやるときはやらなきゃな…
彼女は俺に向かって攻撃を仕掛けてきた。俺は左に跳んでかわし転がりながら彼女の腕に標準を定めて引き金を引いた。彼女は体の前で腕を交差し魔弾を防いだが、腕には銃弾の跡がはっきり残っている。それでも彼女の体は攻撃をやめない。
幸いなのは彼女が痛みを感じないということだった。それがあったからこそ俺は彼女と戦うことが出来る。
はっきり言って俺の魔力が底を突かない限り、『バンデッド』ももう一つの『イドラル』も弾切れになることはない。だが、俺はどうも魔力の扱いが下手らしい。だからマガジンに魔力を貯めて使っている。
俺のこの二つの銃は連射が命だったりする。つまり、マガジンにため込んだ魔力が尽きれば、この二丁はただのでかい魔導器具に変わりねぇ。
『バンデッド』の残りの魔力はあと10秒ぶっ通しでうち続けられる分だけ。『イドラル』は破壊力重視で精度は俺からすれば涙目だ。
(さぁ〜て、どうすっかな…動きも速いしガードも堅ぇ…)
彼女は俺に向かって走ってくるとかかと落としを決めようとして跳び上がって、左足を高く上げた。
(まずい…!)
俺は反射的に膝を折って膝から上を水平にして左腕で体を支え、照準は彼女の左足の関節へ。そして引き金を引いた。
二秒間で24発の魔弾が飛び出たはずだ。左足はもげ飛んで、俺は降りてきた彼女を蹴り飛ばした。
(まずは足一つ…!)
これならいけるかもしれない。そう思ったがそれはどうやら甘いみたいだ。彼女は片足で立ち上がり、俺がその足を狙って撃った魔弾を避けて左へ跳び、俺がその着地点へ銃を向けると今度は逆立ちのようになり、腕だけで跳び上がった。
(大体12発分無駄にしたか……足無くしたってのにあの動きありえねぇだろ…こうなりゃ…!)
俺は『イドラル』も取り出した。イドラルの持ち方は他のとは少し違っていて、グリップの後ろから銃自体を腕に固定するための部分があり、上下から前腕を挟み込む形になる。銃は腕と一体的な形になり、重たい銃身を動かし易くできる。
俺はバンデッドを彼女に向けて撃ちはなった彼女は天井をウンテイのように移動し、壁に跳ねて着地した。
(今だっ!)
俺はイドラルのグリップの親指の位置にあるレバーを押しながらトリガーを引いた。
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