第四話
性行中に突然襲ってきた頭痛と幻視から一週間が経ち、ハヤテはレストランにいた。
「…。」
あれから目を閉じればあの幻視と似たようなものが見え、刻一刻と景色が変わっていった。
しかも、夜になると頭痛が起こるようになり、まるで早く探しに行け。と言わんばかりだった。
そして、ハヤテは旅に出ることを決意した。
「店長。」
「ん?どうした?」
「あの、相談があるんですけど…」
ハヤテは旅に出る旨を伝えた。
「そんな急に言われてな…で、いつ出るつもりなんだ?」
「なるべく早く…できれば明後日くらいには。」
「それはえらく急だな…で、あの嬢ちゃんには伝えてあるのか?」
あの嬢ちゃん…ユーレンスのことだ。
「…いえ。」
彼は迷っていた。
まだ確信が持てないが、十中八九ユーレンスは魔物だろう。
魔物と一緒に旅をすれば大分楽になるだろう。
だが、他人にバレれば一転して賞金首になってしまう。
そこらを考えて慎重に決めなければ…。とハヤテは思っていた。
「よっしゃ、わかった。明日の夜、そうさな…八時くらいにここでパーティーを開こう。お前の門出の日だ。あ〜友達にも伝えてきなさい。」
「いえそんな…そこまで…」
「お前が出稼ぎに来てから店はだいぶ繁盛してるんだ。人手不足だった頃からお前はいるんだ。これくらいして当然さ。」
「…店長…。」
初めてこの店に来た時のことから今までのことまで鮮明に思い出し、ハヤテは泣きそうになった。
「よせやい、泣くのは後にとっておきな。」
「はい!」
「じゃあ最後の仕事、しっかりしてくれよ?」
「はいっ!」
そして彼は訓練所に行ってからいつも稽古をしてくれている人に伝えると、祝いの品として大体1メートルほどの長さの剣をもらった。
装飾は鍔のところに赤い宝石が一つと少ないが、実戦ではそれで十分だった。
「なんで僕に一言言わなかったのさ。」
珍しくフリッツは怒っていた。
当然であろう、友人から何にも告げられなかったのだから。
「別に忘れていたわけじゃないんだよ?ただ決意したのがつい最近で…。」
「君はいつもそうやって一人で決めて勝手に行く!僕だって力になれたかもしれないのに…。」
「その思いだけで十分さ。ありがとう。」
「…ところで彼女には言ってあるのかい?」
「…いや。」
「どうしてさ?」
フリッツはまだ疑いを持っていないのでそうとは言えず、ハヤテは当たり触りのない理由を上げた。
「…俺が出る旅は厳しいものだ。そんなところにか弱い女性一人連れて行けるはずがない。」
「…なるほど。」
「必ず迎えに行く…だから…彼女の事を頼めるか?」
「僕もそうしたいんだけどね…彼女知ってるよ。」
「…は?」
「おそらく君のお店の誰かが言ったんだろうね、それで彼女すごく怒っていたよ。」
それを聞いた途端ハヤテは頭を押さえた。
「はぁ…誰だよまったく…仕方ない、今日直接話すか…あ、あと明日の8時くらいからお店でパーティーするから…。」
「君の門出かい?喜んで行かせてもらうよ。それから…」
フリッツが首からネックレスを外してハヤテに渡した。
「これは…」
「僕からの門出だ、こんなものしか持ってなかったが…」
「いや、ありがとう。大切に使わせてもらうよ。」
「ああ。」
ハヤテはそこでフリッツと別れ、ユーレンスを探し始めた。
しかし、その日は結局、ハヤテがユーレンスに会うことはなかった。
翌日、いつも利用している道具屋や旅に出るための装備を一通り揃え、友人たちに別れの挨拶とパーティーへ招待する旨を伝えていたらいつの間にかパーティーが始まる時間になっていた。
急ぎ店に向かうともうすでに準備が出来上がっており、平凡な店にしてはとんでもない量だった。
「おお!主役のご登場か!ああ、ほらこっち来なさい。」
店長が手招きしてハヤテを壇上に上げた。
「ほら、主役なんだから。」
「は、はい…えっと…皆さん、今日は俺のためにここまで集まってくれてありがとうございます。この旅から帰ってくる頃には俺も一皮むけていると思います。」
そこらじゅうから口笛や拍手の音が上がった。
「では、乾杯!」
ハヤテがコップを持った手を高々と掲げ、本格的な宴が始まった。
数時間後、宴が終わり、ハヤテは帰路についていた。
ところが、家に着くと、なんと鍵が開いていた。
泥棒でも入られたかと思い、急ぎ自分の部屋に行くとそこには、
月に顔を向け、窓辺に佇むユーレンスの姿があった。
どこか遠くを見ている彼女は幻想的でハヤテは思わず止まってしまった。
「…ハヤテ。」
銀色に輝く髪をなびかせて、ユーレンスは惚けているハヤテに声をかけた。
「…ん?な、な
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