第十話
「来ましたよ〜?」
表では雑貨屋を営んでいるようで、店舗には康介とネーベルが整理をしていた。
朝が早いこともあってかあまり客はいないようだった。
「あ、待ってましたよ〜。奥にどうぞ」
「はい」
ネーベルに導かれ、ユーレンスは中に入っていった。
「それで、渡したいものとは?」
「…その前に一つ聞きたいんですけど、貴女はハヤテさんが人を殺してしまうような呪いをかけられてるって知ってましたか?」
「…薄々は…」
俯きながらユーレンスは頷いた。
「そうですか、ならこれをハヤテさんに渡してください」
そういってネーベルは何の装飾もない指輪を渡した。
「…これは…」
「それは呪いの効果を抑えるものです。このままだと、彼は人を…」
「…もう殺してます…何人も」
「…ごめんなさい…」
「…いえ…ありがとうございます」
なんともいえないような重い雰囲気になってしまったが、何を思ったか、ネーベルが慌しく家の奥に引っ込んですぐに戻ってきた。
その手には二振りの刃渡り三十センチほどの刀があった。
「これをどうぞ」
「でも…」
「これから先、戦う機会は増えていくはずです。自衛のためにも持っていた方がいいと思ったので…」
「…ありがとうございます」
「これくらいは当然です。それより今日は面倒なのが来てるから注意してください」
「面倒なの?」
「はい、ここは元々親魔物系の町なのですが、数年前から教団が騎士を派遣して取り締まることが多くなってきたんです。貴女のような人型は大丈夫だと思うのですが…」
「面倒なのは確かね…わかりました。ありがとうございます」
「気をつけて」
雑貨屋を出て、さあ帰ろうとした時、ユーレンスは声をかけられた。
「ユーレンス!?ユーレンス・アンバーシュタッドか!?」
聞き覚えのある声だったので彼女が振り返ると、そこには全身鎧を纏ったフリッツの姿があった。
「フリッツ!どうしてここに?」
「偶々任務でね。それよりハヤテは?彼は一緒じゃないのかい?」
「今はね。宿で休んでいるはずよ」
「そうか、それよりどうだい?一杯…」
ガスッ!とヘルメットが殴られる音がして女性が現れた。
こちらは軽装で、短く切られた金髪で、左側の前髪の一部を結って飾りにしていた。
「任務に戻ってください」
「つつ…同郷の人にあったんだ、見逃してくれてもいいじゃないか?」
「任務中です、それ以外ならどこで女を漁ってようが気にしません」
「はぁ…ユーレンス、この辺りで魔物を見かけなかったかい?」
「…いいえ、見てないわ」
一瞬詰まった表情をしたが、すぐに表情を戻し、何事もなかったように言った。
「そうか…足を止めてすまなかった」
「いえ…それより任務って?」
一般人であるユーレンスが質問するのは構わないのか、同行していた女騎士はフリッツが話すのを咎めなかった。
「ああ、僕はようやく騎士になれたんだ」
「まあ!おめでとう」
「当然のことさ、それで初めて任務に赴いたのだけれど、その任務っていいうのが国外に出て魔物を捕まえるってものなんだ」
「…そう…」
何も言えないユーレンスはもはやフリッツに悟られぬよう暗い表情を作る以外に仕様ががなかった。
「…ごめんなさいね、任務の邪魔をして」
「いや、僕達が外に出ているなら疑問に思うのも当然さ」
「じゃあ、私はこれで…」
「イヤー!お母さん!」
ユーレンスが居心地が悪くなり立ち去ろうとすると、建物の陰からワーウルフの親子がフルプレートメイルをつけた騎士に連れて行かれるのを見つけた。
「!?」
「ああ、君は見ないほうがいいね。実体がどうあれいい気はしない」
「…」
フリッツの言動を聞いてギリ、と歯軋りしたかと思うとユーレンスは両足に力を込めて親子二人を助けんと走り出そうとして━━
━━後ろから追いかけてきた康介から睡眠魔法を受け眠らされた。
「いや〜すいませんネ。さっき店に来たときに体調が悪そうだったもので追ってきたら案の定でしたヨ。彼女は俺が責任を持って宿で休ませるので、安心してくださイ。デハ!」
嵐のように現れ同じようにユーレンスを担いで走り去っていく康介の姿に唖然としながらも、フリッツ達は任務のために各自持ち場に戻っていった。
………
「よいしょっと…ホムラ?ちょっと用事いいか?」
「なんじゃ?また配達か?」
「いや、ほら町に来てるだろ?騎士団とかいう狂信者の集まり」
「ああ、それが?」
「ワーウルフの親子が捕まってるのを見た、助けるのに同行して欲しい」
「うむ、主の命令でなくても引き受けよう。で、強襲するのか?」
「いや、闇夜に奇襲する。騎士団の方には怪我人は出してもいい
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