エトナとシロ、二人が並んで正座。
その前にいるのは、ゲヌアの町長にして『一人軍隊』の異名を持つ、デューク。
「お前ら・・・確かに人払いしとくとは言ったけどよ・・・」
「・・・はい」
「・・・あぁ」
「こんなとこで半日もサカってんじゃねーよ!!!!!」
流石に、ヤりすぎた。
ここはあくまで、ゲヌアの司令室であり、宿屋でも何でもない。
日付はとうに変わり、今は既に昼下がりの頃。
二人が占拠するには、長すぎた。
「部屋はあるんだから帰ってからやれよ・・・色々臭うしよ・・・」
「・・・本当に、ごめんなさい」
「全部アタシが悪い。暴れすぎた」
「エトナさんは悪くないです! 元はと言えば僕がしっかりしてれば・・・」
「いやアタシが悪いんだっての! 分別ついてりゃこんなことにはなってねぇ!」
「違いますよ! 僕が悪いんです!」
「違ぇよ! アタシが悪いんだ!」
「僕が!」
「アタシが!」
「お前ら」
「・・・ごめんなさい」
「・・・ごめん」
どちらが悪いかという前に、こうなったことの謝罪。
それが何よりするべきだということに関して、二人の見解は一致した。
その日の夕方。
教団軍を追い返したゲヌアは、いつもに増して活気に溢れていた。
「オラ飲めや! 食えや! 歌えやー!
年に一度の大盤振る舞い、思いっきり味わえよお前らー!」
今回の戦争に参加した兵士や、街の人々を集め、デュークは大宴会を開いた。
勿論、エトナとシロも招かれている。
「一先ずケリがついた。まだこれからゴタゴタあるだろうけど、どうとでもなる。
色々あるけど、とりあえず賠償協定締結しねぇとな。金なんていらねぇけど、
教団の力落とす為に、出来るだけふんだくりたいとこだな」
「今回の感じを見ると、金貨2万枚は固いでしょう。交渉で3万枚にどれだけ近づくか、
といった所ではないでしょうか」
「交渉場の用心棒に、と思ったが、町長さんなら大丈夫か。
あれだけボコボコにしたんだし、流石にそれを忘れるほどは馬鹿じゃねーだろ」
「ん。ま、馬鹿さ加減で言えば、この俺のいるゲヌアに攻め込んできたって時点で大概だがな!」
破顔一笑。屋内なのでパンツ一丁。
一仕事終えた後のその姿は、いかにも楽しげであった。
そして、シロは思う。
「エトナさん」
「何だ?」
「・・・本当に、ありがとうございます。僕も、自分の気持ちにケリがつきました。
まだ全然足りませんけど・・・少しだけ、贖罪ができたのでしょうか」
「・・・シロ」
彼は、どこまでも誠実で、どこまでも馬鹿。
存在しない罪を償おうとし、この戦いでの功績を持ってしても、それは完璧ではないと言う。
エトナは、複雑な気持ちになっていた。
自分がずっと隣にいても、シロと色々な場所に赴き、色々なものを見せ、色々なことを経験させても、
未だシロの心の中には、罪の幻影が残っている。深くつけられた傷跡は、消せそうに無い。
「・・・なぁ、シロ」
「・・・はい」
「シロは悪くない。それは今まで何度も言ってきた。それでも足りないって言うならさ。
シロの背負ってるもの、半分アタシにくれよ」
「えっ?」
「不安・・・いや、嫌なんだろ? 全部捨てちまうのが。だけどさ、一人で抱え込むなよ。
アタシが側にいるんだからさ、苦しいこととか、辛いこととか、全部半分にしようぜ。
それとも、アタシじゃ頼りないか?」
「そんな訳・・・!」
ふわりと、包まれる。
幾度も身体を重ねることで、力を入れ過ぎず、柔らかく抱きしめる感覚を、エトナは覚えた。
「アタシは、シロの全部が好きなんだ。自分が悪いって思い込んじまうことが変えられないなら、
せめて、アタシに寄越して半分こにしてくれよ。それくらい、いいだろ?」
「・・・エトナ、さん・・・」
シロは、少し変わっている。それなら、かける言葉も変えるべきと考え、至った答え。
結果として、それは最も正解に近いと言えるものだった。
「・・・いいんですか?」
「遠慮するな。辛いことは半分にして、嬉しいことや楽しいことは2倍にする。
そういうことが出来るのが、恋人だろ?」
「・・・ごめんなさい」
「それは違うな。謝る必要なんてねぇんだから」
「・・・ありがとうございます」
「んー・・・ま、今の所はそれでいっか。
じゃ、そうと決めたら、この宴会楽しもうぜ!」
「・・・はい!」
初めて出会った頃よりは、幾分か心を溶かすことはできた。
それなら、後はそれを少しずつ、少しずつ、重ねていけばいい。
焦ることなく、少しずつ、シロの心を溶かしていけばいい。
改めて、エトナは思い直した。
そして、二人の会話に一区切りついたのを見て。
「何があったか知らねぇけどよ、辛気臭い顔すんな!
大丈夫だ。俺なんかお前の何倍も
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