馬車、闘技場の控え室に続き、三度。
何かに憑りつかれているかのように、邪魔が入る。
「何だマジでこれどんだけ邪魔入れば気が済むんだアレか呪われてんのか
出てこいよ誰だよアタシら呪ってんのンなもんぶっ潰してやるから来いよ
呪いなんてまどろっこしいことやってないで語ろうぜ拳でなぁいいだろ
痛みを感じる間もなく・・・」
「えっと、何が起きたのかなー・・・」
ダークサイドに堕ちたエトナを尻目に、とりあえず状況確認をするシロ。
音の鳴った方向は街の入口方面から、鳴った音はとてつもなく大きい。ヒントはそれだけ。
これでは何が起こったのか、全く分からない。
「うーん・・・まずエトナさんをどうにかしないと」
流れるように呪詛を呟き続けるエトナ。
彼女を平素の状態に戻す為に取った、シロの行動は。
「・・・む、むにー」
「・・・ん、あんあひほ(ん、何だシロ)」
「いやちょっと、城門の方を確認しようかと」
お馴染み、ほっぺた引っ張り。
自分がエトナにするのは初めてだが、どうやら上手くいったようだ。
「そういや、方向はそっちだったな」
「(あ、ちゃんと聞こえてはいたんだ)えぇ、そういうことなので、見に行きましょう」
「おう」
手を繋ぎ、街の入口へと向かう。
謎の爆発音・・・その正体を予想しつつ、二人並んで、歩を進めた。
城門が見えてきた辺り。
一目して、音の正体が分かった。
「・・・あれ!」
「は!? 嘘だろ!?」
その存在を覚えていれば、遠くからでも分かった。
城門前に転がっていた、金色の物体。
それは紛れも無く、ゲヌア名物『完全勝利のゲヌア砲』の一部だった。
無茶苦茶に巨大な砲塔の中程から先が落ち、地面に叩きつけられれば、当然爆音が轟く。
住宅地に落ちなかったのが不幸中の幸いか。
「内部で腐食が起きていたんですかね? いや、でも整備点検を怠らなければ・・・」
「これ折ろうってなったら爆薬ブチ込むくらいしかねーぞ? 何でまた・・・ん?」
城門前広場、折れたゲヌア砲の周辺で、何かもめ事が起きている。
筋骨隆々の大男と、フードを被った誰か。
フードを被っている方は表情が見えず、種族や性別すら分からないが、
その相手である大男を知っていれば、自ずと答えは見えてくる。
「あれ、町長じゃねーか?」
ギルドの前で言い争いをしていた人物と同じ。大男の方は、恐らくゲヌアの町長。
となれば、対する相手はほぼ確実に教団関係者となる。
「・・・シロ、アタシの後ろに。そこの木の陰なら、ギリギリ聞こえる」
「はい、分かりました」
オーガの五感は、非常に研ぎ澄まされている。
多少距離が離れていても、話し声を正確に聞き取ることぐらい、造作でもない。
こっそり、かつ素早く、太い街路樹の裏に移動する。
一呼吸入れて聞き耳を立てれば、この様な会話が聞こえてきた。
「ふざけんなよお前ら! まず土下座しろってんだボケ!」
「何を言っているのですか。私たちは頭の悪いあなたが治める不幸な街の人々の為、
こうしてわざわざ警告をして差し上げたのです。感謝されこそすれ、謝る義理はございません」
「それを世では煎餅布団とか気分爽快って言うんだよ! んだったら今ここでやるかオラ!?」
「(宣戦布告と器物損壊?)お待ちください。ですから前から申し上げているように・・・」
「うるせぇよ! お前らの戯言は聞き飽きたわ! 今まで散々抜かしてくれたけどな、
とうとうよりにもよってアレぶち壊してくれたな! いくらしたと思ってるんだ!」
「あの見栄えだけの砲に使われている金の嘆きの声が聞こえないのですか?
我々教団の為に使われれば、金も喜び・・・」
「金に感情もへったくれもあるか! あったとしてお前らに使われたら自刃するわ!」
「おかしなことを仰いますね。まぁいいでしょう。これが最後通牒です。
後日、軍を率いて参ります。その時に調書にサインして頂けなければ、実力行使に出ますので」
(・・・・・・・・・・)
何がどうあったのかは分かった。
何でこんなことをしたのか訳が分からないが、分かった。
「・・・シロ」
「はい」
「アタシ、シロみたいにこういうの分析するの苦手だから、短くまとめるな」
「はい、分かりました。どんな感じですか?」
「大砲壊したのは教団。相変わらず頭イカれてる。・・・そして」
今まで、数々の街の闇を打ち砕いてきた。
シロとエトナの手によって救われた街は少なくない。
今回敵対するのは、教団軍。
間違いなく、今までのどの敵よりも強大。生半可な気持ちで、勝てる相手では無い。
だが、そんなことは関係ない。
むしろ、自分と直接の関わりがあった相手であるなら、尚更だ。
「どっちを選んでも、アタシはシロについていく。
シロの望みを
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