「おっ、これ美味いな」
「片手だけで食べられるのも魅力ですね。食べ歩きに向いてます」
時刻は午後4時過ぎ、中央市場で食べ歩きをする事にした二人。
軽食中心に店を回る事3店目、ラップサンドに舌鼓を打つ。
「結構種類ありましたね。定番から変わり種まで」
「どれも気になるけど、流石に全部頼む訳にもいかないしな。・・・だから」
と言うと、エトナはシロの手を取り、持っていたラップサンドにかぶりついた。
「んぐんぐ・・・うん、野菜多めもイケる」
「ちょっ、エトナさん!?」
「ほらシロも。お互いの食えば、2倍楽しめるだろ?」
代わりに自分のラップサンドをシロの口元に持っていき、食べる事を促す。
少し戸惑っていたシロだったが、エトナに食べられた分の半分程度を口に入れた。
「ん・・・美味しいですね」
「なんだ、もっとがぶっといってもいいんだぞ?」
「十分ですよ。・・・色々と」
「え、どういう事だ?」
「何でもないです。エトナさん、お腹も膨れてきましたし、今度は別の店に行きましょうか」
「了解。シロの行きたいとこについてくから、どこにするかは任せる」
これが所謂間接キスであるという事を気にしていたのは、シロだけであった。
中央市場から伸びる道を歩くと、商店街に入る。
雑貨や洋服などの小売店は勿論、クリーニング店や鍛冶屋等、ありとあらゆる店が並ぶ。
また、両替・為替店もあり、買い物客を万全の態勢で迎えている。
そしてほぼ全ての店に、商会に所属している証となるバナーがある。
店の入り口に貼り付けたり、垂れ幕を下げたりと、方法に違いはあれど、皆一様に
自分の所属する商会を示している。
「流石商業都市。凄い数のお店ですね」
「人も多いしな。んじゃ、早速どっか行こうぜ。時間あんまり無いし」
「それじゃ・・・僕、洋服を買いたいんですけど、いいですか?」
「シロが行きたいとこに行くって言ったろ。それに、アタシも着替え欲しいし」
「分かりました。それじゃ洋服店に・・・あっ、あそこにありますね。行きましょう」
「どうだ、シロ?」
「うわぁ・・・! すごくカッコいいです、エトナさん!」
洋服店にて。
まずはそれぞれが気に入った服を選ぶ事にし、先に選び終えたエトナが試着した。
カジュアルなTシャツにホットパンツというシンプルな構成。
髪はシロが買った髪留めでポニーテールにしており、右手首にはお揃いで買ったミサンガ。
逞しいながらもすらりと伸びた手足も相まって、爽やかで健康的な美しさを演出している。
「動きやすそうなヤツから適当に選んだだけだぞ? そんないいか?」
「とても似合ってます! 素敵です!」
「・・・そっかー♪」
その場でくるりと一回転し、嬉しそうに笑う。
ふわりと髪が宙に舞い、心地よい風が肩を撫でる。
しかし、その後シロの表情が何故か固くなった。
「あれ、どうした?」
「エトナさん、その・・・」
その理由は。
「下着も・・・買って下さいね?」
エトナの普段の服装は、そもそも服と言うよりは下着に近い、革の腰巻きと胸当てのみ。
当然、試着の為にそれらは外されており、今身に着けているのは本当に服だけ。
そしてエトナの胸は、間違いなく大きいと言えるもの。
動けば勿論、Tシャツ前面の膨らみが大きく揺れる。
ある意味、全裸よりも扇情的。
その影響は、若干前屈みになったシロの様子を見れば明らかだった。
「色々と、その、保ちそうにないんで」
「別にシロにならいくら見られてもいいけど、んじゃ買っとくか」
「お願いしますね、本当・・・」
「こんな感じですが」
「おーっ! カッコいいじゃねーか!」
シロの選んだ服は、やや派手な柄のシャツと革ジャンに、深緑のズボン。
ミサンガを左手首につけ、ジェフから貰った指輪を人差し指に。
そして頭には小洒落た帽子という、普段とは全く違うスタイル。
しかし、どこか不良っぽい雰囲気がシロの整った顔立ちと思いの外マッチし、
その姿はまさに『都会派少年』となっていた。
「ちょっと冒険しすぎたかな、と思うんですが」
「いやいや全然アリ。うはー、可愛いかと思ったらカッコよくなるとはなー♪」
「ありがとうございます。それじゃ、この一式とエトナさんの服、買いましょうか」
シロの意外な魅力を新たに発見し、上機嫌なエトナと共に、シロは会計へと向かった。
会計を済ませ、店を出た後。
「シロ、この店で分かったことがあるから耳貸せ」
「はい、何ですか?」
「よく聞けよ。・・・アタシの胸は、トップ100センチのHカップだ」
「ひゃくっ・・・!?」
またしても、シロは前屈みになった。
一通り街を歩いた後。
二人は宿屋に戻り、買った物を整理し、ギルドから持ち帰ったパンフレットを広げた。
「全部とま
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