ユミには友達がいなかった。
真っ黒な髪と真っ黒い瞳…小さい頃はそれだけでも十分にいじめられる原因に成り得た。仲間外れにされて影口を叩かれた。石を投げられて血が出た。
ユミは大きくなっても友達がいなかった。
ジパング人は魔物の仲間だと。そんな噂が流れても止める術は無い。反魔物領において、ジパング人は少しグレーな立ち位置だった。その事もユミが孤立するのに拍車をかけた。魔女狩りなるもので断頭台に立たされそうになった事すらあった。
でもユミにはそんなこと関係無かった。
彼女の生きる目的は只一つ。
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「おらぁ!死ね死ね死ね死ね死ね!」
バシャバシャ
一人の少女がスライムに向かって鬼の形相で斬りかかっていた。少女が振るう剣は抵抗無くスライムを貫通し、分離したスライムはすぐさま元に戻ってしまう。それでも構わずに剣を振り続ける少女だったが、後から巨大な男に抱え上げられてしまった。
「何回教えたら覚えんだ馬鹿が! スライムには魔法を使うんだよ!」
「るっせーな!離せよクソジジイ!殺してやる!こーろーしーてーやーるー!」
男に羽交い締めにされてもなお、少女は魔物に向かって目から赤い光線を発しながらじたばたともがいた。
「ヴィルク、やれ」
男の命令に反応した少年が懐から紙切れを取り出して投げつけると、紙から火球が発生し、スライムに命中した。スライムはその体積を大幅に損失し、慌てて逃げ出した。
男は抱えた少女を地面に下ろした。
「ったく、お前のその病気はいつになったら治るんだ?そんなんじゃ命がいくつあっても足りねぇぞ?」
「魔物は、殺す!全部殺す」
「あーあー、わかったから、取り合えず見た瞬間狂って突っ込むのやめろ」
「…」
「ユミ…」
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ユミは魔物が嫌いだ。異常な程に。
小さい頃からずっと、魔物を殺す事だけを考え、ただひたすらに剣を振ってきた。それでも……
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「司教様、あのジパング人の事ですが」
「あー、やっぱダメだったー?」
「…はい、特にこれといった魔術の才も発現しておらず」
「あー、そっかそっか。…まぁいいや、こっちの計画も順調だし、ジパングの監視は終わりって事で」
「排除しますか?」
「それはちょっと無理かなぁ…、あの二つ名付きがねぇ」
「アロイス殿の時間の都合を付けるくらいは簡単ですが?」
「いやぁ、あの人もグレーだからねぇ…」
老人のような顔をした男は立ち上がって窓の外を眺めた。
「なにされるかわかんないよ、はは」
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