腹が減った。満足に飢えを満たすことが出来ない日々が続いている。
俺達は国から命を受けて開拓者としてこの土地の開墾をしている。
命を受けたと言っても、俺達はもう国の人間ではない。
俺たちの住んでいた国は、肥沃な大地を持つ他の地域に比べ土地が枯れており、毎年民の食料の確保さえままならないような状況であった。
加えて近年の日照り続きから飢饉が起きる寸前であり、民の不満も溜まる一方であった。
そこで国は、そのような状況を打開すべくある方策を打ち出した。
食料と金銭、道具や肥料、種籾等を渡す代わりに国を出て、首都から離れた荒れ果てた土地を開墾する。
開拓者としての命を受けた者達は荒野を耕し治水をし、村を作る。
そうして出来た村は開拓者達が自治権を有し租税を納める必要もなく、ただ国と食料の取引に応じてくれれば良い、という条件であった。
要は体のいい口減しだ。少量の食料と『手切れ金』を渡して、土台無理な村作り畑作りが成功すれば良し、失敗しても棄民として切り捨てれば良いだけだ。
だが俺は目の前にぶら下げられた当座の腹を満たせる食料に欲が眩んだこと、そして何より、このまま慢性的に飢えながら暮らすよりも、人生一発逆転の賭けに出る方が良いと考えた。
悪友共も同じ考えだった。俺達はそれに飛びつき、そして賭けに負けた。
大任を託されたと国のため、人々のために真っ先に志願した開拓者達のリーダーと、農耕や灌漑の有識者である研究者達の指示に従い耕せども耕せども、この土地は土壌が死んでいた。
治水をしようにも周囲にまともな水源はなく、山の木々は枯れ果てていて湿原は汚染されており毒の沼地のような状態と化していた。
最初に国から貰った食料はとうに食い尽くしており、何とか数少ない野生動物を狩って生活をしていたが、それでも最早この人数の飢えを凌ぐのは不可能だ。
後はもう、育てる筈の作物や種籾を食べるしかないが、それを行った時点で俺たちの開墾計画は終わりを迎える。
「どうする…このままでは飢え死にするだけだ…」
「こんな土地で村や畑を作るなんて無理だったんだよ」
「国に戻ろうぜ、そうすれば元の生活には…」
「馬鹿野郎、何のための口減らしだよ。兵士に追い返されるに決まってる」
「どこかに行こうにも、受け入れてくれる場所に辿り着くまで生きてられるわけないな」
「もう野盗や山賊でもやるしかねーだろ」
「あーせめて死ぬ前に女くらい抱きてぇよ
#12316;」
「アホかお前、こんな状況で出る言葉がそれかよ」
男達は口々に悲観的な言葉を口にしていた。空腹から来る諦観と、絶望。
それでも一部の者はどこかあっけからんとして笑っているのは、恐らく元から肉体労働に勤しんでいた分、頭よりも心でモノを考える者達であったから。分の悪すぎる賭けだと知って命を張る様な連中だったからだろう。
不思議と、自分達を棄民同然に捨てた国に対して恨み等は抱いていなかった。
貴族や上流階級が私服を肥やしていようものなら腹も立つが、そういう連中までもがこれまでギリギリの生活をしてきたのだ。
「あー腹減ったぁ
#12316;……ん?」
ある男がうわ言の様に空腹を口にし呆けた顔で空を見上げていると、突然空を見上げたまま、怪訝そうな顔で目を細めた。
「なあ、あれ……何だ?」
「何だありゃあ……鳥の群れか?」
遠くの空で、黒い何かが蠢いている。それは、遥か遠くに居るにも関わらず肉眼で目視できるほどに、あまりに巨大な怪物の様に見えた。
「鳥にしちゃデカ過ぎんだろ…ありゃ魔物か?」
「へっこんな枯れた土地にゃ魔物すら寄りつきも住みつきもしなかったけどな」
「生で拝んだ事はねぇが…何でも魔物ってのは今は、やたら色っぽい姉ちゃんみてえな姿なんだろ?」
「ありゃどう見てもそんなんじゃねぇだろ、化け物だ化け物」
「じゃあその話が嘘なんだろ。魔物が来たんだよ、本物の魔物が」
蠢いている巨大な怪物が段々と近づいてくるにつれて、その姿が少しずつ鮮明になっていく。
巨大な一塊の怪物に見えたそれは、一糸乱れぬ統率の取れた動きで飛行している無数の魔物の群れであった。
虫の様なシルエットをしており、塊として見えていた時に比べれば小さく感じてしまうものの、彼方と此方の距離からして明らかに単なる虫程度の大きさではない。
「はーっこちとら餓死するか否かって時に、泣きっ面に蜂かよ」
「いや…ありゃ蜂ってより、どっちかっつーと……」
目を凝らして、遠くの物体を見やる。多数の蠢くそれは、昆虫の様な羽と尾を備えた……
━━━━━━蝗だな
棄てられる者あれば、飢える者あり
空を覆う無数の巨大な蝗の群れ。嫌でも終末を思い
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