俺、ミノタウロスのニア・アルバーンは現在絶賛失恋中だ。
失恋した相手は幼馴染で、この前まで同棲してた彼女が死んで死にそうになってた仕事仲間、クロア・アーバイン。その憔悴してる姿にアウラには悪いが、はっきり言ってチャンスだと思ってた。
落ち込んでるあいつを俺が優しく立ち直らせてやれば、ずっと俺を見てくれなかった(と、思ってた)アイツも俺を見てくれるはずだ。と、思い実行しようにも、アイツの家の前で足が止まってしまう。
俺がこの思いを伝えたら、あいつは俺をいままでの親友として接してくれなくなってしまうのではないか?こんなナリな上にこんな男勝りな性格の俺が、こんな乙女な気持ちを持ってると知ったら、気持ち悪がって俺と口を利いてくれなくなってしまうのではないか?
そう思うと、どんな獣と対峙したときも震えなかった俺の足ががくがくと震え、いつもそのまま自分の家に帰ってしまっていた。
だけど、ここ二週間くらいあいつの様子が変だ。
妙に幸せ−な顔をしてると思えば、わざとらしい悲痛な顔をする。あぁ、これはあいつの嘘がつけない癖がでてんなー、と思い、鎌をかけてみれば、出てきたのは死んだアウラの姿を借りたドッペルゲンガーの存在。
また先を越されたのか!と思うと、もうあいつとの関係が壊れてしまう、なんて怖さも考えることができず、勢いのままにアイツに告白してしまった。もちろん、その答えはノーだったが、あいつもアウラと出会うまでは俺の事が好きだったと暴露してきやがった。
結局、その恥ずかしさともうアイツはそのドッペルゲンガーに心を奪われているのだ、と気付いた空しさが、俺を三日ほど家にひきこもらせている。
本当は、ドッペルゲンガーの方が嫌になっていなくなるだろう、と期待してた部分もあった。だけど、次の日、普通に出てきたアイツの顔は妙にすっきりしていて、事情を聞いてみれば、アタックしてオーケーをもらったとかぬかしやがるし、話してる間にその件のドッペルゲンガーが来るし、そいつも妙にいい奴で、俺はあぁ、こいつならクロアを任せられるかもな、と思った。
だけど、だけど!
「うううううううううああああああああ!!!!」
ボスンボスボスッ
言葉にならない叫び声をあげながら、アラクネに作ってもらった枕をどすどすと叩く。あいつはこうなることを予想してたのか、むだに頑丈に作りやがった。余計なお世話だ!と思うが、その心遣いにいまは感謝しなきゃなんないだろう。
好きだった男が、自分を好きだった。それだけであれば、岩をニ、三個砕いただけで落ち着いて、アイツをベッドニ引き擦り込むことだってできただろう。
だけど、それが自分がしり込みしている間に別の女にとられた。昔、本当のアウラにとられた時も同じ苦悩をしたが、今回は、あいつが自分のことを好きだったと知ったからか、あの時よりもさらに心が痛かった。
痛くて、痛くて、発散しようと斧を振り回してみてもだめで、隣の村まで出向いてって岩を砕きまくってみたりしても、寝ても夢のなかにアイツがでてきて、紛らわせなかった。
俺はそのどんなことをしても癒せないこの痛みに堪えながら、ボスンボスンッと枕を殴り続けた。そのうちさすがに穴が開くかもしれないが、そんなこたぁどうだっていい。
途中、隣の村に住む妹分が家の前でなんか言ってたきがするが、それも無視して、俺は一心に枕を叩いて、つかれたら寝て、を繰り返していた。そんな時だった。
「ニアー?大丈夫?」
あいつの声がした。
† † †
ここ数日、ニアが畑に出てこない。
最後に会ったのは、ニアとアウラがばちばちと火花を散らしていた日だ。
心配になっていたが、いくらニアでも女性の家に男が訪ねるのはなんだか失礼かなーと思っていけていない。それ以前に、ニアが落ち込んでいる理由はおそらくこの事件でだし、その発端である自分が慰めに行っても余計怒るだけではないか、と思いながら、机の上につっぷしていると、影がさした。
「クロア君、どうしたの?」
「あぁ、アウラ」
どこか、地味な雰囲気を持った女の子が僕を不思議そうに覗き込んでいた。
地味とは言っても、人形のようなきめ細かい白い肌に、夜のような黒く長い背中を垂れる髪、黒曜石のような大きな瞳を持った彼女は雰囲気が地味なだけで、その容姿は美少女、といって差し支えないものだった。
いまは黒のワンピースに着替えているが、告白したときの黒い布を重ね合わせたような服を着ていると、まるで夜の精のようだ。
「いやさ、ニアが最近畑に出てこないから心配になってね・・・」
「へぇ、ニアさんが・・・」
「恐らく僕が原因なんだと思う
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