アウラが帰って数日たった、ある日の朝だった。
「ぁ、私、今日はちょっと用事で一日中町に出ないといけないから夕飯つくれないんだ・・・・」
仕事に行く前、アウラが作ってくれた朝食を食べていると突然アウラはそういった。
この何日か、村のみんなにばれないように彼女は本当に一歩も家の外に出なかった。どこか監禁してる雰囲気がでてて、ちょっと頭を悩ませていたのだが、彼女は嘘を信じさせるにはこのくらいのことはしなきゃ、と実に楽しそうにいったので好きにさせておいた。そういっていたのに突然出かけるとはどうしたのだろうか?
「ん?どこかいくの?」
「そろそろ村のみんなにばらしてもいいかなー?って思って。だから今日はその下準備」
「ふぅん?そっか、わかったよ。今日はテキトーに食べておく」
「うん、おねがいね」
アウラの不安そうな顔に僕は笑っていったが、その内心安心していた。
実をいうと村のみんなにずっと嘘をつきとおすと言うのは、かなり辛かったのだ。ようやくその負い目がなくなるな、とうれしくなってしまっていた。僕はその気分のまま、いつ食べてもうまい目玉焼きやトーストをひょいひょいっと食べると、すぐに席を立った。
「じゃぁ、もう仕事行くね?」
「うん、いってらっしゃい。今日はごめんね」
すまなそうに玄関で見送ってくれたアウラに苦笑しながら、もう慣れてしまった軽く肩を落としで背を丸めた姿勢になって僕はいつもの畑へと向かった。
昼休みにだらだらと空を見ながら田んぼの脇の草むらで寝ていると、ニアがよってきて僕の隣に座った。
「どうした?今日はいつもより元気じゃないか?いい事でもあったのか?」
「んー、まぁ、そうかな」
いい事といえばいいことだ。親友のニアたちに明日でもう嘘をつかなくていいし、明日皆の驚く顔が見れるのだから。そう期待を膨らませてふふんと鼻で笑っていると、ニアが本当にうれしそうな顔をしていった。
「ほんと、よかったよ。お前が立ち直って、そんなすかした笑いするようにもどって。アウラが死んでからのお前、まじで後追い自殺しそうな感じだったもんな。昔のゾンビとかのアンデッドみたいなかんじだったぜ?」
まぁ、いまのゾンビたちは、ある意味そこらの人間よりもせいきがみなぎってるけどな。生気でも精気でも、と若干下品なことを言いながらニアは笑った。
確かにそんな感じだったかもしれない。事故にあう前のアウラはもっと淡白な感じだったし、その姿がよっぽどひどかったのであんな甘えん坊になってしまったのかもしれないな。と僕が思っていると、ニアが半眼になって僕を見下ろしていた。
「な、なんだよ・・・?」
「いやぁ?すいぶんとにやけた顔してたもんだから?どうやらうれしいことって言うのは女みたいだねぇ。ぁー、いやだいやだ。血は争えないのかねぇ」
「い、いま親父は関係ないだろ」
領主として屋敷に何人もの魔物娘と侍らしているあのエロ親父のことを思い出して、げんなりとした。さっきまでアウラのことで頭がバラ色だったとすれば、いまは灰色だ。そのまま脳全体に行き渡って推理の腕でも上げてくれ。
「ま、領主様はいいとして。あんな憔悴してたのに、この二週間かそこらでよくそこまで持ち直したよなぁ。相手は、よっぽど上手いサキュバスとかなんかかねぇ?」
にやにやと、それでいてどこか寂しそうにニアは言った。多分弟分か手下が自立していくのが寂しいんだろうなぁ、と思ったが、俺はその笑いにハッとひねた笑いをした。
「まさか、僕はアウラ一筋だよ」
「・・・へぇ?じゃぁなんだい?死体でも掘り返してきて一人で死体と人形遊びかい?」
ずいぶんと悪趣味なことをニアは皮肉げに言ってきた。そのあまりの悪趣味さに僕は、たまらずガバッとおきあがり言い返してしまう。もしアウラが本当に死んでいて、あのまま帰ってこなかったら同じ事をしてしまったかもしれないから、余計無性に腹が立った。
「ふざけるなよ!僕をみんなでだまそうと思ってアウラが死んだってうそついてんだろっ!?ニアだってそうなんだろっ!?こっちはもう知ってんだよ!アウラ本人が帰ってきて言ってくれてね!」
怒りが突破口となり、みんなにだまされていた、というショックや悲しみがそのまま僕の口から溢れ出す。
それだけ、彼女らを信用していて、本当の家族以上に信頼していたのだ。
それなのに・・・。幾ら悪戯好きといっても言ってはいけないことといっていいことがあるだろう!?という怒りが込み上げた。だが、彼女をみると頭に生えた角さえ微動だにせず、ぽかんと口をあけてほうけていた。その反応に思わず僕はニアの顔の前で手を振ってしまう。
「に、ニア?どうした・・・?」
「お前・・・いまなんてっ
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