今期の格言
「戦いにおける勝者は歴史の中で衰退という終止符を打たねばならず、
若き息吹は敗者の中より培われる。私は…敗者になりたい。」
無知王アーデンヘイムX世(の言い訳より)
聖エロニア共和国首都『アルブム・ルーベン』
その中央に位置する荘厳な神殿で、指導者の大天使…白きエミリアが、
祭壇に向かって熱心に祈りをささげている。
主神の元で働くエンジェルの中で、若きエリートとして
幼いころから英才教育を施されてきた彼女は、まだベテラン天使のような
力はないものの、見識、教養、政治などに抜群の才能を見せている。
国民も彼女に全幅の信頼を置いていて、彼女の言うことは
すべて正しいと考えいるくらいだとか。
「主神様、どうか私たちを悪しき魔の手よりお守りください………。
善良なる民たちは、魔の存在を知りません。
彼らの平穏を守るためにも…私たちはこの剣で戦わなくてはなりません。
ああ…どうか、どうか……その御手で、お守りくださいませ…。」
果たしてこの祈りは、このゲームシステムのどこかにいるかもしれない
主神様に届くのだろうか………それとも……
「失礼します!」
そこに入ってきたのはエロニアに仕える将軍チイラ。
(注:彼女は今のところユニットではない。)
がっしりした青銅のよろいに身を包んでいる彼女は、
ガシャンという銅版と銅版がこすれあう音を立てながら、
跪き報告を述べる。
「天使様!も、申し上げます!アテラ攻略に派遣した部隊は全滅したようですっ!」
「そんな………また勝てなかったなんて…。」
「さらに悪いことに、ヴァルハリアのリチャード王が、
ダークエルフたちと講和してしまい、軍を引き上げたそうです。」
「ヴァルハリアが!?あの国には信義というものがないのですか!!
今は神の御子同士、手を取り合っていかねばならないというのに……。」
ダークエルフに宣戦したときには十分勝算はあった。
彼らの兵は少なく、ヴァルハリアと合わせれば戦力差は三倍。
アテラを攻略してその後首都を攻め落とせば終わるはずだったのだ。
ところが彼女たちは気づいていなかった。
自分たちの軍事的才能に大きな落ち度があることに。
元の世界の歴史では、間に落ちるその日まで
ほとんど戦ったことすらなかった国である。
その軍事的才能のなさがゲーム設定に反映されてしまっているらしかった。
「…私たちも一時講和をすべきでしょうか?」
「いえ、なりませぬ天使様!私たちは御神の膝元の兵、
そう簡単に魔に屈しては末代までの名折れ!
最後の一兵になるまで、刺し違える覚悟で臨むつもりです!」
「………わかりました。チイラ、戦はあなたにお任せします。」
「御意!」
エロニア共和国は、このとき判断を大きく間違えたといってもいいだろう。
今講和しておけばもしかしたら智鶴は申し出を受託した可能性もある。
だが、ここからさらに劣勢になってしまうと………。
同期、聖エロニア共和国第三都市コルメイア。
アテラの位置に建設する予定だった土地を先取されたため、
仕方なくそれなりの位置に立てられた都市。
まだ建設されてそれほど経っておらず、人口も少なければ
施設もまだほとんど立っていない。
よってユニットを生産しようにも時間がかかってしまう。
都市の防備はわずかに戦士が2体のみ。非常に手薄だ。
「攻撃開始!続けーー!」
『おーっ』
「やつらを通すな!われわれには天使様がついているぞ!」
ワーワー
ダークエルフ軍はフレイヤを先頭に攻撃を開始。
木の柵だけでできていた城壁とは名ばかりの囲いを、
森林生活で鍛えられたダークエルフたちには意味を成さず、
あっというまに市街地に突入、防衛軍と衝突した。
結局、何の損害もなく前線都市コルメイア占領。
次はさらに北にある第二都市クリアルを目指す。
クリアルを落とせば、あとは西の平原地帯に位置する
首都アルブム・ルーベン一直線だ。
数ターン後、ダークエルフ軍主力は第二都市クリアルに到達。
都市攻略の準備を始める。
「頑張ってるねフレイヤさん!」
「智鶴さん…!指導者直々にこんな所まで来ていいんですか?」
「大丈夫、ここからでも操作……もとい全体の指揮はできるよ。
さて、見たところクリアルも守備兵がほとんどいないようだけど、
一気に攻めちゃおうか?」
「いえ、今は都市周辺の農場や村を破壊する程度にとどめておきます。」
「何か考えがあるの?」
「ええ。」
クリアル周辺に到達したダークエルフ軍は都市を包囲しつつ、
周辺の地形改善を片っ端から破壊し始めている。
一応、敵の地形改善を破壊するとわずかながら資金が手に入るが、
今回はそんなはした金のために略奪し回っているわけ
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