第5期:筆記は剣より強し


今期の格言

戦争の90%までは後世の人々があきれるような原因で起こった。
残りの10%は当時の人々でさえあきれるような原因で起こった。

 ヤン・ウェンリー









リチャード・ライオンハートからのメッセージ
「鎧を固め、剣を研いでおくように!
熱く楽しいバトルが始まるのだからな!」


白きエミリアの宣戦布告に便乗したライオンハートからの宣戦布告は、
いつもよりさらにいい笑顔と共に、簡潔な言葉で智鶴たちに届いた。


「そんなむちゃくちゃな!いきなり二国と戦争なんて……!
もしかしてライオンハートはエルフと休戦したのかな!?」
「……外交画面を見るとヴァルハリアと翠緑はまだ戦争してるわ。」
「ということはあっちも進んで二正面作戦してるってことなのね…
何考えてるのかしら?無茶するわね。」
「ん〜…、どうやらライオンハートは聖エロニア共和国の
参戦要請を受諾したらしいね。しかも結構格安の条件で。」
『………………』

智鶴の言うとおり、リチャード・ライオンハートは白きエミリアから
希少資源をいくつか受け取っただけで参戦要請に応じたらしい。
両国間は非常に仲がいいとはいえ、一つ戦線を抱えているのも関わらず
もう一方にも戦争を仕掛けるとは………驚異の脳筋AIのようだ。

攻撃・宗教志向、シド星の狂犬の遺志を受け継ぎし
『獅子心王』の名は伊達ではない。


「ねぇザリーチェさん、なんとかどちらかと講和出来ないかな?」
智鶴としては何としても二国同時相手は避けたい。
「暫くは無理ね……。相手はきっと数ターンの間交渉に応じないでしょうし、
交渉できてもまだ私達には最大の交渉材料の技術取引が出来ない……。」
「あーーーもうっ!これはイジメか何かなの!?
みんなでちーちゃんいじめて楽しいの!?」
「…ルーツィエだけには言われたくないと思うわよきっと。」


とにかく今は何としてでも都市を守り抜かなければならない。
幸い、敵の進路はほぼ新都市のアテラに限定されているから、
戦力の集中が出来る。

ただし、ここを突破されたら瞬く間に全てが終わってしまうということだ。


「ちーちゃん………」
「んっ」

不安でいっぱいの智鶴をルーツィエが正面から優しく包み込む。
毎夜毎夜智鶴の理性を消し飛ばす攻撃的な二つの丘が、
今はまるで母親のそれのように心地よかった。


「大丈夫、きっとちーちゃんなら勝てるから。」
「うん……」




次のターン……



早くも聖エロニア共和国のユニットスタックがアテラの右上のマスにやってきた。
(注:スタックとは一つのマスにユニットが複数いる状態のこと。)
内訳は剣士2体と戦士7体の計9ユニットだ。

「おや?思ったより少ないんじゃない?戦力的にほぼ互角だし。
これなら防御してても勝てそうだけど………そうだ、フレイヤさん。」
「どうかしましたか智鶴さん?」
「作戦変更だ。野戦で相手を倒そうと思う。」
「なんと!勝算はあるんですか?」
「大丈夫…無茶はしない。確かに籠城の方が確実だけど、
撃って出た方が都市の人たちに被害が及ばなくて済むからね。」
「なるほど、確かに!了解した、こちらから攻撃して敵の出鼻をくじいてやります!」


敵の戦力が少数だと判断した智鶴は、野戦で敵を撃破することに決めた。
一応建前としては都市の安全確保のためだが、

『ゲーム的』に言えばこちらから攻撃した方が経験値が多く手に入るからというのが理由だった。
経験値は稼げるときに積極的に稼いでおこう。後で役に立つ。もちろん死なない程度にね。


「続けーーーっ!!」
『おーっ!』

ワーワー


戦闘中……


「やりました智鶴さん!初戦は私達の完全勝利です!」
「やったぁ!すごいよみんな!」

結果、ダークエルフ達がエロニア軍を撃退した。
丘の上という地理に加えて、英雄フレイヤの活躍と先日ゴブリンとの戦闘で経験を積んだ
ダークハンターたちが主力の剣士を倒し、残った戦士たちも弓兵のカモでしかなかった。
エロニア第一波は実にあっけなく終わった。


「グッジョブちーちゃん!」
「うん、意外と何とかなるものだね。ところでさ、ヴァルハリアの軍は来てないの?」
「それがどうやらあの二人、軍の連携を全然してなかったみたいなの。
ユニットを動かすタイミングがてんでバラバラ。
ちょっとでも滅亡の心配をしたのが馬鹿馬鹿しいくらいよ。」
「ははは………」

なにはともあれ、相手の連携に隙があったおかげで
予想していたよりも苦戦することはなさそうだった。


一旦戦争から離れて、同ターンに第3都市を首都から東にある海岸沿いに建設。
新都市は『レパント』と名付けられ、ダークエルフ初の港町となる。
今はまだ大きな発展は見込めないが、いずれは有数の軍港になる
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