ワーワー
「あっははは、それっ♪」
「や、やめてくれーーーっ!」
「逃がさないわよ、あなたはこれから一生
あたしの夫として精を出してもらうんだからねっ!」
メデューサに襲われた騎士が、その場に倒された後
身体を硬直させられ、全身に巻きつかれる。
「ぐっ、俺の負けだ……さっさと殺せ!」
「ほほう、なかなか強かったなお前。私がここまで昂ったのは初めてだ。
そして負けてもその気迫、気にいった!」
「何を……っ!」
善戦したが破られたベテランの剣士は、
戦ったサラマンダーに見初められ、迫られる。
「いやぁ……た、たすけて………」
「ふふふ、あなた結構可愛い顔してるじゃない♪」
柱まで追い込まれた新入りの女性騎士は、
ローパーの触手に取りつかれ、今まさに卵管を挿入されそうになった……が、
「私の〜卵を〜……うっ!?」
「………?」
その寸前にローパーの背中に斧が突き刺さる。
「お前らの好きには……させん!!」
ローパーはたまらずその場で一旦液状になり逃げ去った。
巨大な斧を振っていたのは燃えるような赤毛にルビーのような瞳、
鬼のような形相で戦っていたクルトマイヤーだった。
彼はその比類なき強さで襲いくる魔物たちを薙ぎ払っていく。
今の彼なら、ドラゴンさえも葬れそうな勢いだ。
「人間はまだ、負けてはいない!」
『おーっ!!』
現在、グランベルテ王宮では王国最後の戦力が魔物の群れと戦闘を繰り広げている。
既に城下町は魔物たちの手に落ち、あたりはすっかり魔界と化した。
逃げまどう民、兵士、貴族。対抗する手立て無き者たちは、
次々と魔物と魔界の魔力に捕らわれ、女は魔物と化し、男は捕獲される。
魔界と化した地は植物が禍々しく生え変わり、空は暗黒色に染まっていく。
その光景は正気を保っていた者たちを絶望にいざなうのに十分であった。
人間の誇りをかけた最後の抵抗。
王宮の玉座の間にて人と魔物が乱戦を繰り広げる。
元々能力で劣る人間たちだったが、さらに数の上でも圧倒的不利であり
戦っても戦っても一向に減ることのない魔物の群れに、
さすがの勇敢な騎士たちも疲労困憊を極めてきていた。
その中で、自ら中心に立って阿修羅のごとく奮闘するクルトマイヤーは
周りの兵士たちを少なからず勇気づける。
所で諸君は覚えているだろうか?
なぜクルトマイヤーはこれほどまでの強者となりえたのか。
そう、彼は幼いころ恋した一人の少女のために、
他の全てをかなぐり捨てて努力した結果なのだ。
もし彼が幼いころ偶然クリスティーネと出会っていなければ、
書に名を記されること無き一介の騎士で終わったのかもしれない。
恋のために生き恋に翻弄された最強の騎士、それがクルトマイヤーだった。
そして、彼は今まさに愛する者のために自らを犠牲にすることで、
その人生の最期を飾ろうとしている。
「あら?あなた………」
「どうしたそこのサキュバス、俺とやる気か?」
突然一人のサキュバスがクルトマイヤーに話しかけてきた。
「ねえ…あなたは一体どんな理由で戦ってるの?」
「何?勿論お前らから国と民を守るために決まってるだろう!」
「ううん、違うの、そういうことじゃない。あなた、恋人がいるでしょう?」
「恋人……ああ、いるとも。世界で一番愛する人がな。
もっとも、その恋人はお前らが来る前にここから脱出させた。
俺は彼女が無事に逃げられるように、命を張ってるんだ!」
「その恋人………魔物じゃないかしら?」
「は!?」
そのあり得ない言葉にクルトマイヤーは一瞬驚くも、
隙をついて攻撃してきたオーガの一撃を躱し、反撃する。
「馬鹿言うな。俺の恋人は正真正銘の人間だ!それも王族の!」
「そうなの?だってあなたの身体から魔物の香りがするもの。」
「ふん、きっとさっきから戦ってる魔物どもの返り血の匂いだろう。」
「違うわ……その香りは、魔物と交わったときの匂い…。
きっとあなたの恋人さんは人間の姿をした魔物よ。」
「……………ふん、何を言うかと思えば馬鹿馬鹿しい。」
クリスティーネが魔物…それはあり得ない話だ。
例え化けていたとしたらどこかに違和感を感じるだろうし、
王宮内で生活することなんてできやしないのだ。
しかし……もしそれが本当だとしたら?
「ねえ、今からでも遅くないわ。私達の仲間にならない?
きっとあなたの恋人はあなたが戦うことを望んでいないわ。」
「黙れ!それ以上減らず口を聞くと貴様の脳天をこの斧で…!」
と、クルトマイヤーが逆上してサキュバスに斧を振り下ろそうとしたその時……
ポンポンッ
「っ!誰だ……と思ったらモルティエ?何でお前がここに?」
一切気配がなくて気がつかなかったが、
どこかに行っていたモルティエが彼の右肩を叩いた。
「どうした
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