「さてインザーギ君、この戦況をどう見る。」
「見たまんまだろ。戦況もクソもあったもんか。」
ここはグランベルテの首都ノルバニアから北東にある地…スィスネ高原。
王国の関所や砦が点在するこの地は王国軍が野戦訓練を行う地であり、
首都の最終防衛ラインでもある。
このような領内深くまで敵に侵攻されたことは一度もない。
だが、今度ばかりは勝手が違った。
魔界で増え続ける未婚の魔物娘達の集団大移動………
ただひたすら夫を求める魔物たちの群れはグランベルテを目指し、
領土の東からまるで津波のように町や村を呑みこんでいった。
当然王国も軍を動員したが、押し寄せるスタンピードの前に為す術もない。
群れは、出現の報告からわずか四日あまりで首都近郊まで接近。
この緊急事態に王国軍はついに前主力を投入したのだが…
戦闘開始直後、まず前衛歩兵がサキュバス達の魅了にかかって骨抜きにされて
あっというまに崩れてしまい、前衛がいなくなった弓兵や魔道士たちも
魔物娘達の突撃を止める力はなかった。
そして…攻撃の主力の王国騎士たちはここぞという時に
丘の上から一気に突撃して敵を粉砕する役目を担っているのだが、
ロクな抵抗もできずに蹂躙されていく味方を見て、
完全に攻撃の機を逸してしまっている。
もはやいまさら自分たちが突っ込んだ所で、相手に経験値をくれてやるだけだろう。
「おのれ魔物らめ!これ以上好き勝手にさせんぞ!王国騎士隊突撃!!」
『おーっ!!』
しかし王国騎士隊の隊長は果敢にも突撃命令を下した。
攻撃せずに退くなど、騎士として恥ずべきことだと思ったのだろう。
「おーし、こうなったら俺たちだけでも頑張らねぇとな!」
「こ…これが私の初めての実戦……大丈夫でしょうか?」
「大丈夫だよミリア。俺も可能な限り援護してあげるからさ。」
「は、はいっ!!」
「おっしゃ!いくぜ!」
インザーギ、ボーリュー、そして新入りのミリアを含む
王国騎士隊800騎は隊長を先頭に魔物の群れへ斬り込む。
丘を下った時の香速力は猛烈な突進力を生み、敵を蹴散らす……はずだった。
「見て!新手よ!」
「あれって王国騎士っていう人たちよね!」
「や〜ん、おいしそう♪もらっちゃえ〜!」
ワーワー
結論から言うと、王国騎士隊の突撃は完全に無為に終わった。
先頭集団がサキュバス達に斬りかかろうとしたその瞬間、
足元に発生した魔法陣から強い衝撃が発生し、騎士たちを馬ごと吹き飛ばした。
ダメージは殆どなかったものの、放り出された無防備な騎士たちは
たちまち魔物娘たちに取り囲まれ、その場で凌辱されることになる。
インザーギ達は直撃こそ免れたものの、完全に包囲されてしまい
もはや進むも退くもままならない状況に陥った。
「大変だ!隊長がやられた!」
「くそっ…こんな時にマイヤーやモルティエがいれば…!」
騎士隊でもずば抜けた実力だった二人がいなくなってしまったので、
戦力が大幅に落ちてしまっているのも問題だった。
「くっ……このままじゃ何もできずに全滅してしまう!
インザーギ君、今ならまだ遅くない。城に戻って伝えてくれるかな…。
スィスネ高原は突破され、我が軍は壊滅状態ですってね。」
「ば、バカヤロウ!俺一人だけで城に戻れってのか!?
冗談じゃねえ……お前はどうするんだ!?親友を見捨てろってのか!?」
「そんなの決まってるじゃないか。君の脱出を援護するために
俺が少しでも時間を稼いでおくよ。さあ、早く!」
「………わかった。俺が行ってきてやるよ。
俺だけ生き残るなんてこの上なくみっともねぇがよ。」
「すまない、たのんだよインザーギ君……また会う日まで!」
こうして、インザーギは大急ぎで王都に引き返していく。
早めに決断したため、ギリギリで追ってくる魔物を振り切ることに成功した。
「さて……ああ言ってかっこつけてはみたものの…むんっ!!
これ以上はどうにもならない…っと!そいやっ!!」
一方のボーリューは周りの騎士が次々と倒れていく中で、粘り強く交戦している。
しかしその奮闘も長くは続かないようだ。
疲労で徐々に息が上がり、額には汗を浮かべ、腕の動きが鈍くなる。
だが…
「せ、先輩!大変です!」
「ミリア、どうかしたのかい!?」
ミリアに呼ばれるまま振り向いたボーリュー。
「隙ありっ♪」
「なっ!?ええーーっ!?」
次の瞬間、よりによって味方のはずのミリアにいきなり抱きつかれ、
その場に思い切り落馬する。ミリアがかばってくれたからか
後頭部を打つことはなかったが、それよりもなぜ後輩が突然…
「うふふ…、先輩♪ちゅっ、ちゅ、ちゅ。ん……ちゅ、ちゅ、ちゅうう。」
「んむっ!?ん……んんんっ!?ぷはっ、な…いきなり何するんだよ!」
ボーリューを地面におさてつけた
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