――――――――――《Side Jung》――――――――――
僕たちは何のために生きている?目的は何だ?
―教会の司祭は云う。人間は神のために生きるのだと。
人間は神のために働き、神のために祈り、神のために全てを捧げる。
神は敬虔な人間に、恵みを与え、力を与え、知恵を与え、愛を与えるという。
―大昔の哲学者は云う。人間は知るために生きるのだと。
森羅万象、無限に広がる知識を探求し、世を余すことなく知った時、
人間は全知の向こうに、現世を超越した世界を見るという。
―霧の大陸の仁者は云う。人間は人間のために生きるのだと。
家を築いた祖先に感謝し、自分を生んだ父母を尊び、次代の子孫に後を託す。
友との友情を大切にし、愛した人を生涯愛し続ける。それが人の使命。
…なんてね。実は皆知ってるんだ。『答えなんてない』って。
これらはみんな、他人に納得してもらうための出まかせに過ぎない。
少なくとも、人間が生きる理由は、神の奴隷になるためじゃない。
全知の探究者になるためでも、他人への滅私奉公のためでもない。
―でもね、人は理由もなく生きていくことに耐えられるほどには強くない。
だから、そのために必要なんだ……それぞれが、それぞれに見つけた生きる理由っていうのが。
……必要なんだ、それは、僕にも。
――――――――――《Side Viorate》――――――――――
「そんな…小生ちゃん!それはいくらなんでもあんまりだよ!」
「あんまりとは心外だな。せっかく無償で元に戻してあげるっていうのに。」
「でも、ヴィオラちゃんにとってはどっちも酷よ……
せっかく…ユング君が元に戻るのに、ヴィオラちゃんのことも忘れるなんて!」
「あのね、小生はわざと記憶を消そうとしているのではない。これは副作用だ。
残念ながら小生は人間…君たち魔物のように何でも都合よくできるわけじゃない。」
私達の話に割って入ったノワちゃん。
普段あまり怒らない彼女だけど、今は珍しく本気で怒ってる。
……ノワちゃんはとても友達思いだ。
私のために必死になってインテグラに喰ってかかっている。
でも、私には分かっている。普通はそんな都合のいいことなんてあるわけない。
もう少し落ち着いて考えてみよう。
私だってユング君だって、一刻も早く現状を打破したい。
けど全てを白紙に戻せばこの先どうなるか見当がつかない。
最悪、ユング君は私のことを嫌うかもしれない。
リリムだからあり得ない……ちょっと前までの私ならそう考えたかもしれない。
今は違う…知ってしまったから。私は思っていた以上に無力だったんだって。
優秀なリリムが、愛する人の一人も救えないなんて……
他の姉妹にこんなことを話したら、きっと馬鹿にされるだろう。
…
ううん、ここで諦めるのは私らしくない。
ちょっと落ち着こう。今の私は落ち込みすぎてる。
いつもの私ならどんなことを考えただろうか?
う〜ん……要するに記憶だけそのままで体を戻すことはできない。
あれ?でも…まって、もしかしたら逆なら…
「ねえ小生さん。」
「おっと、決心したかい。」
「一つ聞きたいことがあるの、いいかしら?」
「質問かい?いいとも。」
「今から行う術で、例えば…腕だけとか足だけとかってできるの?」
「身体の一部だけ?まあ…ちょっと面倒だけど出来ないことはないよ。
でもこう言ってはなんだけど、脳だけってっていうのは無理だけどね。」
「そう、なら十分だわ。」
「ヴィオラちゃん、何かいい案があるの?」
「ええ…一発逆転の秘策があったわ。」
私はリリム。魔王の娘であり……史上最高峰のサキュバスだから
「じゃあ小生さん、ユング君の『おち○んちんだけ』元に戻してくれるかしら。」
「ちょ!ヴィオラちゃん!?何言ってるの!?」
「男性器だけ…だって?あっはっはっはははははははははは!!
なるほど、実に愉快なことを言うじゃないか。そうかそうか!
まったく…なんとも魔物らしいばかげた考えだ。君には負けたよ。」
「ふふふ、褒め言葉として受け取っておくわね。」
そう、一部だけ変えられるならそれだけでいいの。
ユング君と愛し合えるようになれば、私の力で何とかなる。
またモノ扱いするのかってユング君に怒られそうだけど、
少なくとも私はこの方法が最善だと信じてる。
私の意向を汲み取ってくれたインテグラは、早速術式の配置を変更しはじめる。
身体の周りに置いた青い液体の数を三分の一くらいまで減らし、
胸の上に置いてあった懐中時計をユング君の一物の上に置いた。
なんかとってもシュールな光景ね。
「でも、こんなことをしても最終的に元に戻る保証はないけど、それでもいいのかな?」
「大丈夫。後
[3]
次へ
ページ移動[1
2 3 4]
[7]
TOP [9]
目次[0]
投票 [*]
感想[#]
メール登録