T if:堕ちた剣【slave sword】




ズビシィッ!!

『!?』

シャナは、こともあろうか手近にいた近衛兵を斬り殺した!

「命令に従わない者は、斬る!!」
「ひいいぃぃっ!?」


赤い月に照らされたシャナの怒りの形相は、まさに『鬼』と呼ぶにふさわしかった。
恐怖が魅了を上回った近衛兵たちは、必死にサキュバス達に向かってゆく。


「くっ…なんて強引な!!」
「あなた、それでも人間なの!?」

「黙れ淫魔どもが!我々を襲ったこと、後悔するのだな!」


シャナ自身の強さも尋常ではなかった。
目の前にいたサキュバスを切り裂くと同時に、飛んできた攻撃魔法を回避。
そのまま二匹目のサキュバスにも重傷を負わせた。
他の近衛兵たちも恐怖に駆られて積極的に攻撃し、サキュバス達を戸惑わせた。
このまま押し切れる。そう確信したシャナ。


だが、この時もう一匹…魔物が現れた。

それも、戦局を一気に覆す強力な魔物が。



「止まりなさい。これ以上、同胞たちを傷つけさせません。」

見た目はサキュバスだった。漆黒の服に身を包み、白銀の髪と赤い瞳が特徴的だ。
しかし、放たれる魔力と存在感は周囲のサキュバスとは比べ物にならないくらい強い。
直視するだけで、すべての思考が吹き飛んでしまうような……



カラン   カコン



近衛兵たちは再びその場で足を止める。それどころか、持っていた武器をも手放した。
シャナが作った恐怖など、もう頭の片隅にも残っていなかった。

「…………………(ゴクリ)」

そのシャナですら督戦することを忘れ、その場に崩れ落ちる。
体中が火照り、下半身に意識が集中していく。

(な……なんだこの淫魔は…、他の奴らとは……段違いのプレッシャー…)

わずかながら思考できる力は残っているものの、
身体の神経は脳とのつながりを断ち切られているに等しかった。





カチャリ…

「…っ!!」

カチカチ…ガチガチ…


(って!俺は何をしているっ!!なぜ俺は鎧を脱ごうとしているんだ!!)

身体と分離していた意識は、金属音と共に元に戻った。
どうやら、無意識に肩当てを外していたようで、今まさに胸甲に手を掛けようとしていた。
シャナの鎧は留め方が複雑だったので何とか外す前に意識が戻ったようだ。


「まずい…まだ頭の中が、霞がかってる。なんとかして………身体を…」


思い付いた方法はただ一つ。
自身に強い刺激を与えて、意識を無理やり回復することだ。

わずかに動く手で傍らに落ちている剣を拾い……









「お止しなさい。自分で自分を傷つけるなんて…許されないことですよ。」


脇腹につきたてようとした剣は、強力な淫魔によって止められた。

動かない。

長年鍛え上げた理性が、いともあっさりと屈したのだ。



「貴様……!」
「あらあら。そんなに怖い顔をしなくてもいいでしょう?
大丈夫…私はあなたに危害を加えたりはしないから。安心して…ね。」

ちゅっ…

シャナの唇に彼女の唇が重なる。


「ぅ…!?」
「ちゅっ…んむっ、…今まで、苦しかったでしょう?
どれだけ尽くしても、どれだけ想っても、報われないなんて…そんなの間違ってるわ。
まずは…あなたの心を捕らえているその枷を、外してあげないとね。」


サキュバスがその場で妖しげに手招きすると、
シャナの周囲に一人また一人と、お付きの侍女たちが集まってくる。

「待て……、侍女たちを集めて何をさせる気だ?」
「ふふふ、勘違いしてもらっては困るわ。彼女たちは自分たちから集まってきたの。
これから………あなたに奉仕するためにね♪」
「奉仕…?」
「さ、みんな。後は任せたわ。」
『承知いたしました。』


サキュバスがその場から身を引くと、代わりに侍女たちが一斉にシャナに襲いかかった。


「衛士長様…これから私たちが、精一杯ご奉仕して差し上げます。」
「い…いや、それよりも体を押さえつけるのをやめてほしいんだが…」
「だめですよシャナ様。まずは重い鎧を脱いでしまいましょうね。」
「では私が下の方の甲冑を。」
「後ろはお任せ下さい。」
「やめろ!敵の目の前で鎧を外すなど…!」

集まった12人の侍女は慣れた手つきと連携で効率よく鎧の留め金を外していき、
あっという間にシャナを覆っていた装甲を剥ぎ取っていく。
さらに鎧だけにとどまらず、その下の軍服にも手を伸ばし
前のボタンやベルトを外していく。


数分と経たずに裸に剥かれたシャナは、
その場に手足を侍女に押さえつけられ身動きが取れない。

いや、普段の彼なら普通の侍女が四肢を押さえつけたくらいであれば
思い切り振りほどくことが出来ただろう。
しかしながら…サキュバスに骨抜きにされた身体は動かず、
彼の脳も振りほどけという命令を四肢に発しようとしない。
[3]次へ
ページ移動[1 2 3 4]
[7]TOP [9]目次
[0]投票 [*]感想[#]メール登録
まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33